≡ 連載もの・2 ≡

□雨は静かに降る5
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俺とカカシさんは無事 水の国へ渡り
この港から また少し、大名家の有る町まで走らねばならなかった。

「あちらには 式を飛ばしています。今日の夕刻前には着きます、と。」
「はい。では急ぎましょうか。」
「大丈夫。少しゆっくり行っても間に合うと思うから。‥それとも早く行きたいですか?」
「いえ、そんな…。」

戸惑う俺に、ニコッと優しく微笑みかけ カカシさんは歩き出した。

「 ……。 」

その彼のあとを なんとも複雑な思いで 俺は付いて行く。


気のせいか 水の国に入ってから カカシさんの口数が少ない

いや、俺もだ。

スタスタと何の迷いもなく、大名屋敷を目指して歩くカカシさんの後ろで
叱られた子供の様に足元を見ながらトボトボと歩く俺

此処まで来たら もう逃げられないよな…
なんて 可笑しな事を考えてしまう自分が居る

いや まだ間に合うかも
分不相応な婚姻話なので…とか何とか言って…

「 !! 」

カカシさんの足が止まったので驚いた。
一瞬 俺の考えている事がバレたのかと思った。

今更 何をうじうじと… そう呆れて足が止まったのかと。

「先生、ほら。あの森の向こうに火の見櫓(やぐら)が見えるでしょう?もう少しです。」
「え?あ…ほんとだ。」


いつの間にか小高い丘の上にいて、目の前に広がる森の向こうに火の見櫓が見えた。

「この森を迂回すれば町への入り口が見えてきます。…先生がこれから生活する町ですよ。」
「 う… はい。」

“これから生活する町”なんて カカシさんの口からは言われたくない言葉だった。
カカシさんと離れてしまうのだと、ハッキリ目の前に突き付けられた気分だ。

「 どうしました?気分でも悪くなりましたか?大丈夫?」

眉をしかめて唇をギュッと結んだ俺を見て、カカシさんは本気で心配してくれた。

「…なんだか…寂しいです。」
「もうホームシック?ナルトに会いたくなったかな?」

フフッと笑われ

「さあ、お待ちかねでしょうから急ぎますよ。」

と、歩くよう促され 仕方無く歩を進める。

小一時間も歩かない内に、森が開けて町の外れに出て来た。
行き交う人々が木の葉の忍服を着た俺達をチラチラと見て行く。

カカシさんも時折 俺を心配そうに見ているのが分かっていた。

俺は心許なさが顔に出ていたんだと思う

「イルカ先生、ほら。」
「 ? 」

カカシさんが指差す方向を見ると、ラーメン屋の暖簾が見えた。
木の葉の一楽に似た感じの店だった。


「先生の好きそうな店ですよ。味は どうか分かりませんが。」

俺の気持ちを そんな事で奮い起こそうとしてくれたのか
カカシさんはニッコリ笑って言ってくれた。

「 ……。 」

逆効果だ。俺は余計に眉を寄せる事となり、慌てたカカシさんが

「 さ、行きますよ。あ!あそこの水の国名物“霧饅頭”でも食べながら行きますか?」

ハハハと笑って提案してくれたが

「…要りません。」 と断った。
今は そんな物食べる気にもならない。

カカシさんは どれだけ俺が食いしん坊だと思っているんだろう
ちょっと元気がないと、いつでも腹をすかせていると思うらしいのだ。

とにかく 大名屋敷へと肩を並べて再び歩き出した。







屋敷に着くと、すぐに

「お待ちしておりました。どうぞ此方へ」

と、二十畳程の部屋へ案内された。

部屋から見える中庭には、綺麗に剪定された松や名も知らぬ低木が植えられ
池には鯉も泳いでいるようだった。

「 ……。 」

ふと思う

なんで俺 こんな屋敷にいるんだろう
俺は天涯孤独な身で、木の葉の忍者アカデミーの教師で
休みの日にはパンツ一丁で部屋をウロウロする事だってある男なのに。

…なんで簡単に五代目に「わかりました。お受けします。」なんて言っちゃったんだろう。

 
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