≡ 連載もの・2 ≡

□雨は静かに降る10
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「カカシさん、考えるって…何か妙案でも?」

ツユさんと庭師のシュウさんは相思相愛だが
身分の差から一緒になることは出来ないと、端から結ばれることは諦めているようだ。

聞けば二人は幼なじみのようなもので
シュウさんは子供の頃から庭師の父の手伝いで屋敷の庭へ通っていたそうだ。

「いいですねぇ。それで二人惹かれあったんですね?」

と、ウットリして俺が聞くと

「とんでもない、お互い興味なんて全く有りませんでした。」

と、二人でノロケ(そうとしか聞こえない)ていた。

と、それよりも

「カカシさん?」
「え?妙案なんて有りませんよ。俺も こういうの苦手で。」

えー?と、ガッカリする三人に

「え?なに?」

と、眉をしかめるカカシさんは

「まずは昼めし食いに行かなきゃマズいでしょ?あとで二人は離れに来てください。」

そう言い 早く行かないと、と 俺とツユさんを急かした。

「シュウ、あとで離れ屋で!」

ツユさんが心許ない顔で彼に声をかけて行く。

彼女の切ない顔が、如何に彼を恋い慕っているかを物語り
有る意味ふられた俺なのだが、彼女が幸せになってくれれば…と切に思った。





昼食の席では庭に面した襖が開け放たれ
昨夜の嵐の後の 澄んだ空気が部屋に入りこんでくる

「…よく手入れされた庭ですね。」

カカシさんがニッコリと言うと

「そうじゃろ、そうじゃろ。」

と、庭を誉められ嬉しくて堪らないと言う顔で大名が応えた

すると いつもは口数少ないカカシさんが、目を弓のように しならせて 庭を誉め続ける

「よほど腕のいい庭師なのですね?見事な松の枝振りだ。」
「ほう?わかるかの?さすが高名な忍者じゃ。」

大名は目を大きく見開きカカシさんの方へ身を乗り出した

「我が屋敷の庭師は天下一品じゃ。父親の代から使えておって幼き頃より腕を磨いてきた者ぞ。」
「若い庭師を見かけましたが…あの方ですね?」

俺とツユさんは、時々目を合わせてドキドキしながら二人の会話を聞いていた。

「あの男は なかなか良い男ぞ。黙々と庭を美しゅうしてくれる。」
「若いのに大したものです。働き者なのは良い事です。」
「ま、真面目で実直そうな方ですよねっ!!」

思わず加勢した俺だったが、張り切って言い過ぎたのか

「イルカ殿は庭より庭師の方に興味がおありのようですね?」

と、奥方様に笑われた。


……てか
それで目の前のツユさんと、隣のカカシさんが下を向いて肩を揺らして笑っているのが気にくわない。
ちぇっ

「火の国の大名屋敷も素晴らしい庭なのだろうのう?」
「いえいえ…存じておりますが…負けますね。こちらの庭師の方を連れて帰りたいくらいです。」

カカシさんは綺麗な顔で綺麗に微笑み

「イルカ先生と交換…しましょうか?」

と 言い出した。

「ならぬぞ、木の葉の忍びよ。この庭を保つには、あの庭師でなければならぬのじゃ。」

大名の その言葉に 光明が見えたのは俺だけか?

「お主が水の国に来てくれるなら二つ返事で渡すのだが…。」

ホッホッホと、高笑いをしながら「それは無理じゃろうて。」と大名自身で答えを出していた。

当たり前だ。カカシさんは木の葉が誇る、里一番の忍者だぞ。俺なんかと訳が違う。


訳が違う…人と…俺は夕べ…

「?先生どうしました?顔が真っ赤ですよ?」
「あ、いや、あの‥べつに。」

そんな囁くような声で話しかけないで欲しい
それでなくても夕べの事を思い出してドキドキしてるのに。

「明後日の式が楽しみですわねぇ。」

奥方様がホホホと笑い皆を見渡したが、ツユさんの顔色だけが良くないのが俺にも分かった。

 
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