お宝部屋

□「本舗日和」とめきち様より
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 ■幸せな日々■



「カカシさん知ってますか?今日で俺たち付き合いだしてから丸2年たつんですよ?」
「勿論覚えてますよ。・・・早いもんですね。」
「夜はお祝いしましょ?カカシさんは何が食べたいですか?」
「んーそうですね。やっぱりいつもみたく・・・。」

「「秋刀魚と茄子の味噌汁で」」

声を揃えて言った後二人で額をつき合わせて笑いあう。

「じゃあ季節はずれになっちゃいますがそうしましょうね。カカシさん、この前アカデミ ーで土鍋でのご飯の炊き方教わったんですよ?折角だから試してみたいんですがそうすると手が離せないんです。申し訳ないんですが俺の代わりに買いに行って来て貰えますか? 」
「りょーかいです。何を買ってきますか?」
「魚屋さんで冷凍ものになっちゃいますが秋刀魚と八百屋で茄子を頼みます。お願いしても良いですか?」
「後は良いですか?」
「そうですね、スダチは季節はずれだから無いと思うんですよ?秋刀魚はカカシさんが美味しそうだと思うものを選んできてくださいね。」
「じゃあ早速行って来ますね。」

そう言いながら支給のベストの手を通す。
着なくても大丈夫なのは分かっているが人生をほぼ忍として生きてきた習性だろう。
口布を引き上げ額宛を斜めにつける。

買い物をしながらふと思う。
いつの間にか俺は先生に、ぬるま湯のような平和な日々にじわじわと侵食されている気がする。
以前の俺ならこんな気楽に休日を過ごすだなんて、頼まれてふらりとお使いに行くだなんて考えもしなかった・・・。
平和ボケとも言われかねないが俺はこんな風に先生に侵食されてしまって良いんだろうか ?
そんな事を考えながら買い物を続ける・・・。

「あ、カカシ先生。今日はイルカ先生は?」
「んー、今日は俺がお使いなんですよ?」
「そっか、じゃあこれ二つもっていってもらえるかしら?御代?いらないわよ。この前お二人にちょっと手伝って貰ったときの御礼よ?折角の季節モノだから食べてちょうだいな ?」
そう言いながら薄いピンクの桜餅を二つ包んだものを手渡される。
帰宅途中らしい子供達に『写輪眼だー!!今日はイルカ先生は一緒じゃないの?』と声を かけられ『イルカ先生はうちだーよ?明日アカデミーで会えるでショ?』と答える。
魚屋で秋刀魚を買おうとすると『これ売れ残りなんだけどおまけしとくから。二人とも好きでしょ?いつもご贔屓に。』と言いながら丸々と太った鰯を一緒に入れてもらう
鰯か・・・先生は今度は蒲焼にするかな?つみれは面倒なんですよ?なんて言いながら鍋にするために二人で魚屋の店先でどれにするかって散々悩んだのを魚屋の親父さんは覚えていたんだろうか?
そんな風にあちこちで声をかけられ、それに答えながら買い物を終えて商店街を抜け帰ろうとする。

ふと振り返ると商店街は暖かい幸せそうなオレンジ色の夕焼けに包まれていた。

その時ふと気付いた・・・。

ああ、俺は先生に侵食されているんじゃない。
先生はいつの間にかこんなにも俺の居場所を広げてくれていた。
2年前の、先生と知り合う前の俺の居場所は任務先と自宅とせいぜい上忍待機所位だった ・・・
それなのにいつの間にか俺の居場所は先生と一緒に居たこの2年の間にこんなにも広がっていたんだ・・・。

前はただ『里を守るためだけ』に戦っていた・・・。

でも今はただぼんやりとした『里を守るため』という名目で戦うんじゃない。

『先生を、そして先生が広げてくれたこの俺の居場所を守るため』に戦うんだ・・・。

そう考えたら何だか鼻の奥がツンとしてきた。
小走りで家へと帰り勢いよくドアを開けると先生が驚いて玄関まで迎えに来た。
「どうしたんですかカカシさん?なんか泣きそうな顔して?」
「イルカ先生・・・。」
「なんですか?」
ちょっと首をかしげて不思議そうに俺の顔を見ている。

「・・・イルカ先生は俺といて幸せですか?」

付き合いだした当初から聞きたくても聞けなかった、聞いてみたかったけど怖くて聞けなかったことをついに聞いてしまう。
俺があなたを捕まえなければ、きっとあなたは今頃は普通の生活を送っていただろう。
ひょっとしたら結婚して子供だって居たかもしれないのに・・・。
俺があなたを追いかけて捕まえて手放さないから・・・。
あなたの事をどうしても手放せないから・・・。
あなたは俺と居る今の生活に満足しているんだろうか?

きょとんとした顔で俺を見た後、先生はふんわりと笑って俺に向かって両手を差し伸べてきた。
するすると誘われるように先生の腕の中に包まれると子供をあやすようにポンポンと背中を優しくあやされる。
「カカシさん、帰ってくるなり一体どうしたんですか?あなたと一緒のこの2年間俺がどれだけ幸せだったのか知らないんですか?」
そう言うとそっと肩を押して少し間を空けると今度は両手で俺の頬を包み込んで目をじっと合わせる。
「普段の態度からわかってもらえると思ってましたが・・・。やっぱりちゃんと言葉にしなくちゃダメですね?」
そう言うと口布をスッと下げて珍しく先生から軽くチュッとキスされた後耳まで真っ赤になりながら言葉を続ける。

「俺はあなたと一緒に過ごしたこの2年間毎日が幸せで、幸せすぎて・・・。『これは夢なんじゃないだろうか?いつ醒めてしまうんだろうか?』と不安になったことなら何回も あります。でもカカシ先生と一緒に居て幸せじゃないと思ったことは1度もありません。 」

そう言うと真っ赤な顔のままもう一度軽くキスしてくる。
「2周年だからですよ!!今日だけ特別ですからね?!」
そう言いながら俺の手を取ると軽く引っ張る。

「ほら、こんなところに立ち尽くしてないで入りましょう?ご飯上手に炊けたんですよ? 味見してみてくださいな?」
「じゃあ先生が『あーん』てしてくれますか?それなら味見します。」
「カカシさんが甘えてくるのなんて珍しいですね?そんな事位いつでもしますよ?」
先生は笑いながら言ってくれるけど『あなたにとってのそんな事』が俺にとってどんなに貴重で大事な事かをあなたは知らないんだ。
幸せすぎてぎゅーっと胸の辺りが締め付けられるような幸福感に包まれる。
笑いながら俺の顔を覗き込む先生の顔を見て俺も思わず笑い出す。

二人で夕焼けのオレンジ色から柔らかなラベンダー色へと変わってきた部屋の中へと笑いながら入っていく。

そして二人がお互いにお互いを望む限りこんなささやかだけど幸せな日々は静かに続いていく・・・。



※とめきちさん!!素敵なお話ありがとうございました!!m(。≧Д≦。)m ワォーン


 

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