*過去拍手文*

□南瓜と柚子湯
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仕事も終わり 夕暮れから夜へと移り変わる頃
イルカはアカデミーを後にした足で 商店街へと歩き出していた。

今日は冬至
毎年 南瓜と少しの小豆を買って、甘く煮て食べている。

『小豆は有るけど南瓜と柚子は買わなきゃな。』

柚子は風呂の湯に浮かせて柚子湯にするのだ。

けれども

『カカシさんが居れば良かったのに。』

少しションボリとしてしまう

今 カカシは里外任務で留守なのだ。
帰る予定は明後日あたり…

『今年はカカシさんと一緒だから、砂糖控えめに作ろうと思ったのに…。』

けれども一人だが、南瓜は食べるし柚子湯も入る


そうしてイルカが八百屋に着いたのは、夕飯の買い物客など とっくに居ない時間であった為
ゆっくり陳列された野菜を見渡せた。

「へいっ、らっしゃい。」
「あ、この半分になった南瓜ください。それと…」

キョロキョロと店先に並ぶ種類豊富な野菜達を見渡したが…

「あの…柚子は有りませんか?」
「柚子!あ〜…お客さん、ちょっと前に最後の一個が売れちまったよ〜。」
「そうですか…まあ仕方有りませんね。今日は皆さん柚子湯にするだろうし。」

すみませんねぇ と謝る店主に「いえいえ。」と笑顔で返し

イルカは南瓜だけを袋に入れてもらい買い物を済ませた。

『柚子湯は無しか。まあとにかく、風邪引かないよう気をつけなきゃだな。』

本当は カカシが居れば少し離れた場所にある八百屋まで足を延ばしても良かったのだが

『柚子湯…カカシさんに入って貰いたかったな。』

冬至だからと言って柚子湯に入るだなんて
カカシは一度もした事が無かったと言っていた。

「 ! 寒いと思ったら…雪だ。」

細かい雪がゆっくりと空から降ってきた。

『急いで帰ろう。風呂も直ぐに湯を張って沸かさなきゃ。』

小雪がちらつくなか、イルカは小走りに先へと急ぐ

「 ! え…? 」

アパートまで もう少しと言うところで、イルカの足が止まった

アパートの階段下に、見慣れた姿が有ったから

「カ…カカシさん!?」

急いで彼に駆け寄る

「うふふ。ただ〜いまv先生。」
「どうしたんですか?早くないですか?」

驚きつつも嬉しさが顔を緩ませた

「うん。思ったより早く済んでね。急いで帰りました。」

階段上がる前に先生の気配がしたから…と、そっとイルカの手を取った

「寒いから部屋入りましょうカカシさん。あ、南瓜煮ますね。」


甘さ控えめにします と、カカシの手をひくように階段を上り始めたが

「先生、柚子湯は一緒に入りましょうね?」

そのカカシの言葉に足を止めてしまった

「 先生?」
「あの…柚子は最後の一個が、売れて無くなったばかりだったようで…。」

南瓜だけです。 イルカが少し頂垂れて見せると

「最後の一個って これの事かな。」

カカシが腰のポーチから柚子をひとつ取り出して見せた

「カカシさん!?カカシさんだったんですか!?」
「どうもそのようです。俺が買うときは最後の一個だって言ってましたし。」

するとイルカがクスッと笑った

「 先生? 」
「 良かった。カカシさんに柚子湯に入って貰える。…良かった。」

イルカは南瓜を手に、カカシは柚子を手に
「これで風邪も寄りつきませんねぇ。」と
顔を寄せ合い手をつなぎ

身も心も

暖かな冬至になった事に幸せを感じていた






 

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