※カカイル短編2※

□額当て
1ページ/3ページ



イルカはカカシに よく飲みに誘われる。

最初こそ緊張もしていたが、カカシの性格と会話の楽しさに
いつからか親友と言っても良いくらいの親しみを持ち
気が付けば それ以上の気持ちをも抱くようになっていた。

『この気持ちは一生口に出して言えない。墓まで持って行くんだ。』

そう心に決め、自分のカカシへの恋心を
何処か箪笥の奥にでも仕舞い込むような気持ちでいた。


そんな ある日
同僚から面白い話を聞いた。

「彼女に内緒で額当てを交換して、それをひと月以上身に付けていると一生添い遂げられるらしいよ。」

最近 流行っているらしい。

「でも流行っているなら、交換したつもりが向こうも知らない内に交換していて‥て事に成りかねないか?」
「あ〜…そうか。それじゃ自分の手元に自分のが戻ってるって事も有りえるか。」

ワハハと笑いあい、それはそれで結果オーライな事じゃないかと言うことになった。

イルカは その後も その話が頭から離れず

放課後 職員室で一人、小テストの採点をしながらも
カカシが身に付けていた物を自分が…と考えたりして
それだけで顔を赤くしていた。

「顔 赤いですねぇ?熱でも有る?」
「 !! カカシさん!!」


いつの間にやら横からカカシが覗き込んでいたので驚いた

「ちょっと考え事をしていただけです!」

と 誤魔化したが、カカシが からかう様に

「顔が赤くなる考え事って なぁに?イルカ先生のエッチ。」

と 聞いてきた。
イルカは余計に赤くなる顔を、今さら隠すわけにも行かず言い返す

「いーじゃないですか。俺だって男ですよ。」

そう言うと「ふ〜ん…」とニヤニヤしながら、カカシは近づけていた顔を離した

「ま、いいですけどね。ところで今日は これから約束でも?」

カカシが こう切り出す時は飲みに誘う時だ。
勿論イルカは嬉しくて胸の鼓動が跳ね上がる。

「いえっ!!この採点終わらせたら帰るつもりでした。」

言ってから内心『態度があからさまだったかな。』と反省する
これでは「待ってました!」と言っているようではないか。
多分自分は、嬉しそうな顔で声を弾ませて言ったに違いない。

そんな事で何かを悟られ、気持ち悪がられては困る

「あ…あはは…」
「良かった。じゃあ飲みに行きませんか?」
「あ…はいっ。お供します!」



二人は いつもの居酒屋に行く。
割と大きな居酒屋で、ガヤガヤと賑やかなのだがカカシに言わせると

「かえって此方の会話も聞かれにくいからいいですよね。」


らしいのだ。
勿論 忍者なので 本気を出せば店内の端から端までの会話など聞いて取れる。

「さて…今日は任務報酬も頂きましたので俺の奢りって事で。」

好きな物を好きなだけ頼んで下さいと、お品書きをイルカの前に差し出した。
そうは言っても大概カカシの奢りになるのだが。

「じゃあ…秋刀魚の塩焼きと…あ!茄子の煮浸しでも貰おうかな。それと焼き鳥。」

カカシがキョトンとして此方を見ていた気もするが
別に今の自分に不備は無いと思うので気にもとめずにいた。

そして酒も大分入った頃

「ちょっとトイレ行ってくるね。」

とカカシが席を外した。

「あ〜可笑しい。カカシさんたら…くくく…。」

今まで話していた笑い話の余韻に浸っていたイルカが、ふと漬け物に箸を伸ばした時

「 …… 」

壁側に並べて置いた、二人の額当てに目が行った。


内緒で交換して、ひと月以上身に付けていると…

『一生添い遂げられる…』

ボーっと二つ並んだ額当てを見つめる

「…ふ。 馬鹿な。」

あれは“恋人”同士の話。
ましてや自分達は男同士だし、カカシは女にモテるし…

ついっと手を伸ばし指先でツンツンとカカシの額当てをつついてみる

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ