※カカイル短編2※

□中忍忘年会 前編
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大きな戦争もなく
里も平穏なまま日々が過ぎると
何処かしら心に余裕ができ
年末には忘年会を楽しむ忍者達も少なくはない。

「じゃあ、あとで第二書庫でな。イルカ。」
「おぅ。すぐ行く。」

イルカは中忍忘年会の余興で、火の国のアイドルグループの歌と踊りを
仲間と共に五人で披露する事になっている。

『振り付けもバッチリ覚えたし。あとは皆と息が合えば言うこと無しだ!』

足早に職員室へ戻り自分のロッカーへと向かう
ロッカーの中には、すずめ先生が五人の為に作ってくれた衣装(ここにはイルカの分)が入っている。

「さてと…」

ロッカーの前に来て扉を開けようとした その時

「 !! 」

イルカの目の前、ロッカーの扉を押さえる手が…

「まだ帰れないの?」

真横にカカシが立っていた

「カカシさん。俺、今日は少し遅くなるって言ったじゃないですか。」
「え〜?あれ本当の事だったの?」

当たり前ですっ と、迷惑顔をして

「急いでいるんで先に帰っていてください。」
「忘年会の余興の練習でしょ?ナンとか言うグループの…えっと…」

そうなのだ。カカシにはアイドルグループの歌マネをすると言ってあるのだ。

「“火の国クラブ48”です。さ、そこどけて下さい。」


カカシは扉を開けやすいよう、体を少しずらした。

「…あの。先に帰っていいですよ?」
「なんで。ここに居ちゃ駄目ですか。」
「いえ あの‥。」

このロッカーの扉を開けると、衣装がぶら下がっている。
とてもじゃないが カカシには見せる事は出来ない。

着ればヘソが出るような衣装だ。
少し動けば股上さえ見えそうな丈のスカートでもある。

『こんなの見られたら怒られる!てか、面倒くさい事になりそうでヤダッ!』

「あのですねぇ カカシさん。 いくら上忍様と言えど、宴会前には色々と知られちゃいけない小道具が…。」

キョン とした目のカカシだったが

「なるほど。極秘ですか?恋人の俺にも明かせない程の?」
「はいっ。今回は優勝したチームに賞品も出るんです。」

これは本当だった。

「俺は これから練習しなければなりません。少しだけ遅い夕飯になるかもですが…」
「うん。先生が帰ってくるまで待ってる。」
「ありがとうカカシさん。あまり遅くならないようにしますね。」

イルカはキョロリと室内を見て、誰も居ないのを確認すると
カカシに そっと口づけをした。

「じゃあ、イルカ先生頑張ってね。俺は陰ながら“教員チーム”応援します。」
「はいっ。」


イルカはカカシが窓から外へと出て、下に降り立ち(ここは二階)
じゃあねと目を弓形に、片手を上げて去っていく姿を確認すると

急いでロッカーに戻り、そうっと扉を開いた。

「 ……。 」

念の為、衣装を出す前に後ろを振り向き神経を集中して誰も居ない事を確認する。

『…誰も…居ないな。』

ロッカーから赤い衣装をササッと出し
ササッと丸めて胸に抱くと、急いで仲間の待つ第二書庫へと向かった。



「うみのイルカだ。」
「合い言葉を言え。“見えそうで見えない”」
「“アンコさんの乳首”」
「よし。入れ。」

誰が考えた合い言葉なんだか…
ブツブツ言いながら室内へ入ると、仲間の一人が即座に扉に術式をかける。

ライバルチームに覗かれても、他の中忍に覗かれても困る
ライバルチームは此方の様子次第では、より一層と芸に磨きをかけるかもしれないし
ただ単に余興を楽しみにしている人なら、当日に見るインパクトに欠けてしまうからだ。

「よし。衣装に着替えろ。あれ?イルカ、下着は?」
「え?これから取り替える。」
「バカだな、家から付けてくれば荷物にならんだろうが。」

 え  みんな家から履いてきてんの?Tバック…。


そうなのだ。 ミニスカートの下は受け狙いで全員赤いTバック着用にしたのだ。

『冗談じゃない。家でこんな破廉恥な下着付けたら…恐ろしくて考えたくもない。』

眠たいから止めてって言っても 腰を降り続ける
あのバカ上忍の餌食になる事 間違いなしだ。

そして我々教員チーム五人は、初めて衣装合わせをして お互いの姿を見た。

「 ……… 」 「「どわあぁぁーーーっっ!!」」

一瞬の沈黙の後、皆一斉に吹き出して腹を抱えて笑い出した。

「イケる!!これなら受ける!!」
「尻、ぷりっぷりに振って歌えばスゲエ受けそう!!」

大笑いしたはいいが、冷静になって見ると怖いものが有るな…とイルカは思った。

教師と言えど、仮にも忍者。 皆 日々鍛錬している猛者達だ。
ノースリーブからは筋肉質な二の腕、なかにはスカートから毛の濃い脚を出している男もいる。

「いや〜…改めて見ると、スゲエな。」

リーダー格の男も思ったらしく、口に出して言った

「イルカは毛ェ薄くて脚綺麗だなぁ。」

向かいに立つ男が言うなり、イルカは「ハッ!」としてキョロキョロしだした。

「え?なにイルカ?」
「あ、いや…ははは。誰か聞いてやしないかと…はは…。」

 
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