※カカイル短編2※

□中忍忘年会 後編
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イルカのロッカー内には余興に使う衣装が入っている
そして今朝は誰よりも早く出勤して、衣装と一緒に赤いTバックをハンガーに干すようにかけて並べた

『カカシさんが早出で良かった。』

カカシが早朝に家を出た後、即座に洗濯機を回し
脱水が終了するなり急いで他の洗濯物を干し
ビニール袋に下着を入れて鞄に忍ばせて来たのだ。

『とにかく中忍忘年会で優勝せねば。』

優勝者には賞金の他、なんと あの「ラーメン一楽」のラーメン無料券が一年分付いてくるのだ。

『これは俺にとって死活問題とも言えよう…。』

一楽でいつでも只で食べられるのだ。

『いや、正確に言えば五人で分けるのだから…。』

まあ細かい計算は後でよい。

神様 恥を忍んでのTバックです。
どうか優勝出来ますように。

ふふっと笑い、静かにロッカーの扉を閉めた。





そして  師走

中忍忘年会の日がやってきた。
あれからカカシは何ひとつ忘年会の事を聞いてこなかったので
最初から取り立てて言うほど興味も無かったのだと思われる。

今朝だって

「頑張ってね。友達に録画忘れないよう言ってね。楽しみにしてるから。」

と、見送ってくれた。


『カカシさん すみません。夕食ひとりで食べさせるうえに…なんだか騙してるようで…』

手にした袋には、あの赤い衣装に赤い下着

イルカは急いで会場となる集会所へと走り出した。


『…行ったか。』

イルカが去った後、電柱の陰からカカシが姿を表した

『悪いけど、家で大人しく待っているような俺じゃあないよ。』

スッと姿を消したかと思ったら、屋根に移動し
下に見えるイルカを追いかけた



中忍忘年会 一次会場 集会所

此処で余興は行われる。余興の後は二次会場にて宴会だ。


「おいおい、俺達の出番最後だぞ。着替えは二つ前のグループ出場時でいいよな?」
「だな。この衣装はギリギリまで見せられんな。」

イルカも頷き、衣装をギュッと抱きしめた。

今はステージの有る集会室隣の大部屋で、他のチームと一緒に待機していた

『…あそこのチーム、手作りの面で暗部に似せた衣装を着てる…』

イルカの家には本物の暗部装束と面が有る。
もちろんカカシの物だが。

お互いの二の腕に刺青を描きだした似非(えせ)暗部達の横には
何やら戦隊ヒーローの格好をした男達

『あれは生徒達にも人気のヒーローだ。“俺、参上!!”って感じか?』

赤い面の男が、シャキーン!てな感じでポーズを決めている。

一番人目を引いているのは花魁の格好をした くの一トリオだ

「ヤバい。マジでヤバいぞ、あの三人組。」

イルカの横で同僚が唸った

「あれは…一番の敵だ。俺らの色香をもってしてもヤバいかもしれん。」

いや、俺らの何処に色香が?
突っ込むよりも呆れて物も言えなかったイルカだったが
一番のライバルとなるのは間違いないと見た

『くそぉ…。審査する奴らが色香に惑わされるか、真の“余興とは何たる物か”を考えるか…だな。』


そこへ余興の進行係の一人が部屋に入るなり「お静かに!」と声をあげた。

「そろそろ客席には人が集まって来ています!」

多少の音は漏れるから、なるべく静粛にとの事だ

そんなんじゃ練習も出来ねー!と文句も上がったが
俺達は完璧だから、ぶっつけ本番でもOK!と言う強者も少なくはなかった

「では、あと三十分程で始めますんで。」

ザワザワと静かにざわめく控え室から出た進行係の男が
部屋の扉を閉め、振り向いた途端に赤い瞳と目が合った

「ごめーんね。余興終わるまで寝ててね。」


中忍忘年会一次会場に忍び込んだカカシは
気を失った男の片腕を掴み煙と共に消え、集会所隣の備蓄倉庫内へ移ると

「さて…落ち着け俺。」

そう言いながら 集会所の方向へ顔を向ける

「イルカ先生の姿を見ても憤怒せぬよう‥気を静めておくんだ。」

胸に手を当て自分に言い聞かせる

ほぼ毎日練習に励み、今日の晴れ舞台に全力を注ぐ彼の姿が
どんなに(他の者の)目を覆いたくなるような格好でも

『決して姿を現してはならない。決して会場内に混乱を来してはいけない。』

決して彼を責めてはいけない

そうでなければ、彼を悲しませる結果になる

『中忍の中忍による中忍の為の…』

彼らだけの気ままな宴会だ。水をさしてはいけない。

余興を決して邪魔しないと心に誓い
ボムッと煙をたてて、目の前で気絶している中忍に変化した。




余興が始まりを告げると、次々と舞台の上では色々な宴会芸が披露された

忍術は一切使わぬ見事な手品から始まり
今は花魁三人組が妖艶な舞とスポットライトで、場内の男共を腰砕けにしていた。

「おいおい、すげーらしいぞ花魁組!」
「見に行くか!?」

すでに控え室から殆どの男が居なくなっている。

 
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