※カカイル短編2※

□蜜柑
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カカシ率いる第七班
本日の任務は酒屋の配達の手伝いだった

「助かりました。うちの父さんギックリ腰になっちゃってねぇ。師走だってのにさ。」

すると依頼主の奥さんが「これ、皆さんに。」と子供達とカカシの手に
蜜柑が沢山入った袋を手渡してくれた。

「親戚から箱ごと送られて来たんだけど、食べきれないから。」
「わあ!ありがとうございます!」

サクラが凄く嬉しそうに礼を言うと
サスケもペコリと御辞儀をし、ナルトも「おばさん、ありがとうだってばよ!」と笑顔で返した。

「すみませんねぇ、こんなに沢山…。ありがとうございます。」

カカシも内心『やった!』と喜ぶ。
家に帰れば蜜柑好きの愛しい人が待ってるからだ。
きっと炬燵に入って丸くなっているはず。


任務報告書も無事出し終え、蜜柑を抱えて四人は家路につく

『蜜柑か…この前“冬と言えば炬燵で蜜柑ですよね”って言ってたよね。あの人。』

二人で初めて迎える冬には、楽しい事が沢山待っていそうだ。

「…カカシ先生、何ニヤついてるんですかー?」

そう言うサクラも何を想像したのだか、ニヤニヤしながら隣でカカシを見上げていた。


「なんでもないよ。只で食料が手に入ったな〜って思っただけ。」
「えー?なにそれ。先生、沢山報酬貰ってるんでしょー?」

私達と違って上忍だし…と、サクラが拗ねると

「そうだってばよ!!寒いのに配達回って体が冷えたってばよ!ラーメンくらい奢ってくれよカカシ先生!!」

ここぞとばかりにナルトまで口を挟んできた。

「あ、俺こう見えても忙しいの。じゃあね、お疲れさん。」
「あ、先生!!」

カカシは煙りと共に姿を消した。


文字通り、子供達を煙に巻いてきたカカシは
イルカの待つアパート前へと姿を現した。

『蜜柑見たら喜ぶぞ〜。うふふ。』

アパートの階段を音も無く上がりはじめ、ふと思い出す

その昔 蜜柑の皮を剥いて綺麗に白い筋を取った一粒を

「はい、カカシ。アーンして?」

と、目の前に差し出してきた女が居た。

『あん時は正直退いたね。』

どうして他人がベタベタと触った物を口に入れなければいけないのか?と

ましてや相手も忍びだったから余計に疑心暗鬼になる

その時は「今は食べたくない。」と言って誤魔化したが

『不思議だね。て、言うか当たり前だが‥イルカ先生からなら喜んで食べられるな。』


イルカがカカシに食べさせようと、一生懸命剥いた蜜柑の粒。
指ごと しゃぶりつきたいくらいだ。

終始ニヤニヤしながら玄関の扉を開け
「ただいま戻りました。」と靴を脱ぐ

「カカシさん。お疲れ様です。寒かったでしょう?」

可愛い恋人が玄関まで迎えに出てくると

「ただいま。イルカ先生。」

イルカの首に そっと手をあてがい“ただいまのキス”をする

「カカシさん、炬燵で暖まっていてください。お茶の用意しますね。」
「は〜い。」
「あれ?これは?」
「あ、これ頂き物です。蜜柑ですよ。」

紙袋を渡すと、中を覗いたイルカは嬉しそうに

「わあ!今日買ってこようか迷ったんですよね。美味しそうな蜜柑だ!」

パアッと顔を輝かせた

『良かった〜。やっぱり喜んでもらえた。』

カカシも御満悦で炬燵に入ってからもウフウフと嬉しそうにしていた



夕飯も済み、二人でテレビを見ていると

「カカシさん、お風呂先にどうぞ。」

もぐもぐと蜜柑を食べながら、イルカが声をかけてきた

「うん?うん。もう少し、この番組終わってからにします。」

「ほーですか?」イルカは口に蜜柑を入れながら応える

「 ……… 」


カカシは待っていた。

イルカが皮を剥き剥きして「カカシさん、あ〜ん。」としてくれるのを

『聞けば、恋人同士や好きな相手には大抵やる事らしいし。』

淡い期待がドキドキと胸を鳴らす

カカシは顎を炬燵の天板に乗せ、蜜柑を食べながらテレビに夢中のイルカを見続けた

「あははは!バカだなぁ、こいつら…て‥」

イルカは漸くカカシの視線に気づいたらしく
「どうしました?」と聞いてきた

「だって先生…。さっきから自分ばっかり蜜柑食べて…」

カカシがクスンと眉を下げると、イルカは目の前のゴロゴロと無造作に置いた蜜柑を見た

「あ、気付きませんで…。て言うか、カカシさんも手を伸ばして食べていいんですよ?」

いや そーじゃなくて

「せんせーが…」
「はい?」
「…先生が皮むいてくれたら嬉しいんだけど…。」

もじもじと言い、チラリとイルカを見たが
彼は 「 は? 」 て顔をしてる

え?あれ?俺なんか間違った事言った?
俺達恋人同士だよね?甘えていいんだよね?

「 俺が皮剥くんですか?」
「 う…は、はい。そうして頂けたら嬉しいな…と…。」

ドキドキする。 敵の奇襲がいつ来るかって時よりドキドキする

「まあいいですけど…」

俺が剥いてもカカシさんが剥いても味に変わりはないですよ?

そう言いながら、蜜柑の皮を剥き始めた

 
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