※カカイル短編2※

□好きな人は誰?
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その日 イルカは久しぶりに同僚三人と飲みに出た

いろいろ忙しかったのと、空いた夜が有っても他の人と飲みに出ていたりしたから
本当に何ヶ月ぶりかの同僚達との飲み会だった。

そう、最近のイルカは元教え子の上司である「はたけカカシ」と飲みに出る事が多かったのだ。

同僚にも誘われ、飲みにも行きたかったのだが
何を気に入られたのかカカシが頻繁にイルカを誘ってくるので
上忍の誘いを断る訳にも後回しにするわけにも行かず
ここ数ヶ月の飲み会、外食は、ずっとカカシと二人という状態が続いていた。


イルカ達が来たのは、小さくて御世辞にも綺麗とは言えない居酒屋

「イルカ初めてだろ?この店。」
「ああ。」
『こぢんまりとした店だけど、俺は落ち着いて好きだなぁ…。』

四人はテーブル席に座り、まずは「久しぶりにイルカと飲める事」に乾杯をした。

「最近のイルカはカカシさんに取られっぱなしだからなぁ。」
「あはは。何が気に入ったんだか一緒に飲んでいると楽しいって言ってくれて。」

最初はイルカも上忍との付き合いだからと、行ってはいたが
今ではイルカ自身もカカシと飲むのが楽しくて仕方なくなっている。

それもそのはず いつの間にやらイルカはカカシの事を…


「で、イルカは!?好きな子いる?」
「!え!?」

一瞬 心の中を見られたのかと驚いたが
どうやら話の流れが恋愛話になっていたらしい。

「好きな子くらいいるんだろ?」
「イルカ案外鈍いからなぁ。」

わははと笑われ つい

「好きな人くらい居るさっ。」

と ムウッとしながら返答した。

「え!?マジで!?」
「イルカに好きな子がっ!?」
「教えろよっ!!」
「いや…その…。」

好きな“子”って言われても
教えろって言われても

『カカシさんだなんて言えるわけないよ〜。』
「こりゃスクープだ。イルカに好きな子がねぇ。」

同僚達はニヤニヤしながらイルカに話を聞きたがる

「どこの誰だよ。」
「同業?」

皆の視線を受けながら
こりゃ適当に話をして、はぐらかすしかないと決めたイルカは

「同じ忍びだけれど教職員ではないよ。でも誰か…は、まだ内緒って事で許してくれよ。うまくいったら紹介するよ。」

と、決して うまくいく筈もない この恋に
チクリと胸を痛めつつ返答した。

「どんな子だ?」
「可愛い系?綺麗系?」
「いや、イルカなら癒し系じゃないか?割とポッチャリタイプの…」
「アハハハ…イイ線いってるな。まあ、そんな感じだ。」


うん。 確かに異性ならばポッチャリ系の可愛い子がタイプだった。

でも違うんだな。 今 俺が好きな人は
背が高くて 細身で綺麗系な顔で 声も耳を擽るような良い声で…

イルカは頭の中にカカシの姿を思い描くだけで胸がときめいた。

「あ、カカシさんだぞ イルカ。」
「うん。 カカ… え!?」

またまた心を覗かれでもしたかと驚いたが
それ以上に驚いたのが、店に入ってきたカカシの姿だった。

「 カ‥カカシさん!?」

イルカは思わず椅子を鳴らして立ち上がった

「あれ?イルカ先生も此処で?」

そう言うカカシの後から、里に戻って来ている自来也と、五代目こと綱手姫も入ってきた。

「なんだイルカ達も来ていたのか。ふん、丁度良かったな。支払いは自来也に回しとけ。」
「え!?なんでわしがっ!?可愛い女の子達ならまだしも、わしは男に奢る気なぞ…」
「 ああっ!? 」

ギロリと睨む綱手に、さすがの自来也もギクリッと青ざめ
わははと頭を掻きながら「たまには後輩達に御馳走でもするかの?」と笑って誤魔化していた。

「自来也様 御馳走様です!」

イルカ達 中忍教師四人が頭を下げたあと、カカシ達三人はカウンター奥へと進んでいった。


「うへぇ。まさかの自来也様と綱手様だな。」
「プラス はたけ上忍って、凄すぎる。」
「なんでこんな居酒屋へ?」
「すっかりイルカの恋バナが褪(アセ)せちゃったな。」

いや、それでいい。みんな忘れてくれとイルカは願った。

誰も気付いてはいないと言えど 本人を目の前に、これ以上語る勇気は無い。

『舌がもつれちゃうよ。きっと。』

ところが…だ。
あの物凄い忍者三人が入店して、まだ三十分も経たぬ内に

「ねえ、一緒に飲んでいい?」

と、徳利と猪口を持ってカカシが近づいて来たのである。

「おわっ!はたけ上忍!!」
「どうぞどうぞ!!」

イルカ以外の男達は、カウンターから椅子をひとつ拝借したり、テーブルの上を綺麗にしたりと
何やらガタガタと忙(セワ)しなく動き出していたが、そんななか イルカだけは冷静で

「カカシさんや綱手様が来るような店だとは思いませんでした。」

と、困ったような笑顔でカカシに話しかけていた。

「俺は初めてなんですが、自来也様が昔から知っている店らしくて。」

カカシも「ふふふ」と笑い返し、運ばれる椅子に「イルカ先生の向かい側がいいな。」と注文を付けていた。

漸く皆が席に着くと、イルカ以外の男達はカカシの武勇伝が聞きたくてウズウズしだした。

 
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