※カカイル短編2※

□大切なもの
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十九歳の暗部カカシは
とある暗殺任務で某国へ独りで赴いた

しかし敵も然る者。 相当の手練れを警護に付けており、多勢に無勢と言った感じでは有ったが
友から譲り受けた左目を駆使しながら、なんとか任務をこなした。
そうして 若さ故か、休む間もなく里の近くまで戻った。

『…くそっ。チャクラ切れギリギリって感じだな。』

ふらつく足に おのれの体力の限界を感じ、道端の木の根元に腰を下ろす。

『はぁ…はぁ…。少し休んだら…なんとかなるかな。』

折しも頭上からは雪が舞い降りてきた

『冷えてきてるとは思ったが…。』

本来ならば夕刻にはまだ早い時間なので、明るく日が射していても可笑しくはない時間帯なのだが
重く空を覆い尽くした雪雲が、辺りを薄暗くしていた。
それが余計に寒さを呼び、カカシの体力をも急激に奪うようでもあった。

『……父さん。』

足を投げ出し、木の幹に背中を凭(モタ)れて座るカカシは
重い雪雲を見上げながら、今は亡き父を思い出していた。

 カカシ。お前は友達が少ないようだし、感情もあまり表に出すような子では無いけれど…
 忍びになっても友情や愛情は大切にしないといけないぞ。
 大切なものが有るからこそ、人は強くなれる。


『大切なもの…か。』

なぜ今更そんな事を思い出すのか

『…このまま死んでしまってもいいかもしれない。』

今の自分には大切なものなど「里」くらいだし…

たが死にはしないだろう。
そこまでチャクラが切れているわけでも体力が落ちているわけでも無い事は自分で分かる。

寒さは、残り僅かなチャクラで体温調節しながら何とか凌げるし
少し休めば家に戻る体力ぐらいは回復するだろう。

『近くに穴蔵でも有れば一番良かったのにな…。』

はぁ…と、息を吐き出し下を向く。 が、直ぐにキッと鋭い目でこの開けた山道の先を見る。
誰か…来る気配がするのだ。

『敵では無いようだな?』

まだ姿は見えて来ないが、里の方向からテクテクと歩いて来ている気配から
もしかして里の一般人かもしれない、と思った。

『隠れる場所は木の上くらいしかないが…』

そう考えつつ頭に押し上げていた面を、スッと片手で顔に戻した。

『…ま、いいか。このまま様子を見よう。』

誰も好き好んで暗部に声をかける者など居ないだろうし
ましてや近寄ろうなどとは思うまい。

『なるべく関わりたくない相手だろうしな。』

クスッと面の下で笑い、見えてきた人影に目をやった。


此方へ歩いてきているのは、どうやら中忍以上の階級の木の葉の忍者。
額当てに忍者ベストを、お手本通りに きちんと身に付けており
小さめの背嚢を背負い、首にはマフラーを巻いていた。

『…俺より若い男だ。中忍になりたてって感じだな。』

徐々に近づく木の葉の男を、カカシは黙って見つめ続けた。

『鼻に横傷…。』

黒髪の若い男は、暢気そうに雪雲を見上げ
落ちてくる雪を手のひらで受け止めたりしていた。

『…なにあれ。まだ人を殺めた事が有りませんって感じ。』

カカシが黙って見ていると、その男は全くカカシに気付いていないようで
少し鼻歌混じりに歩いてきた。

「 ふんふんふふ〜ん……!!!」

その若い男は近くに来て漸くカカシの存在に気付いたらしく
その驚きようは、逆にカカシを驚かせた。

目は これでもかっ!てほどに丸く大きく見開かれ
両手を高く斜め上に突き上げ、片足も上げて一瞬固まったからだ。

「 ぶーーーっ!! 」

可笑しすぎて思わず吹き出し、カカシは腹を抑えて「くっくっくっ…。」と笑い出した。

「死ぬ。腹痛い。…てか、あんな驚きかたする奴ってホントに居るんだ。」

どひゃー!!って感じだった。まるで漫画の一場面の様。

「 …あの… 」
「 !! 」

ハッと気付けば、鼻傷の男が おずおずと近くまで来ていた。

「 暗部の方…。失礼ですが、お怪我でも?」
「…何?」
「いえ、随分とお疲れの様に見受けられますし…第一寒くないですか?」
「 …… 」

なんだろう、この男。
暗部に気安く話しかけてくるなんて。

「あの…良ければこれ…。」

男は自分の首からマフラーを外し 「どうぞ」 と差し出してきた。

「 要らないよ。」
「 …俺はホラッ。手拭いが有るんで!」

これをこうして‥と、白い手拭いを首に巻いてみせた。

 
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