捧げもの

□友情の底に隠れる何か
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【友情の底に隠れる何か】


今日も里は平和だ。

空は青空。 大門の外の森からはカッコウの声。

「コテツ…アクビすんなよ。どこで誰が見ているか分からないんだぞ。」

俺の横には良き相棒にして口うるさい神月イズモ。

「だってよ〜、あと二時間も大門の受付に座ってなきゃいけないと思うと…ふわぁ〜あ‥」
「弛んでるぞ馬鹿コテツ。」
「馬鹿って何だよ、馬鹿って……お?」

何やら人が集まってきた。

「そろそろカカシさんの隊が帰ってくるな。」

イズモが俺の横で そう言った。

そうか。予定通りの帰還だな。さすがカカシさんだ。

多分それぞれの家族に、帰還予定時刻でも送られてきたのだろう。
続々と里人が大門前にやってきた。

「父ちゃん帰ってくる?」
「もう少しで帰ってくるよ。」

そんな微笑ましい光景を見ていたら
隣でイズモの奴が他里の忍びが来訪した時に渡す通行証の束を立て
トントンと机に叩きつけて揃えると、ひとつ溜め息を吐きながら小言を言いやがった。

「コーテーツ。顔がニヤニヤしてるぞ。締まりのない顔すんな。」
「 あ?ニヤニヤじゃねーし。“微笑んでる”だけだし。」
「お前はさぁ……お?イルカだ。」

イズモの視線を追うと、確かにイルカの姿が有った。

「カカシさんを迎えに来たんだな。」
「妬けるねぇ。やるなぁイルカも。」

うちの里は他の里に比べると、こと恋愛に関しては男女の拘りがない。
しかしイルカがカカシさんと付き合っていると分かった時はビックリした。
どちらかと言うと イルカは女の子と結婚して、子供を持つ父親になるタイプだと思っていたから。
聞いた話では、カカシさんの方がイルカに御執心だとか…
エリート上忍の好みって よく分かんないや、と思わなくもないが
まあイルカは確かにいい奴だし、誰からも好かれる奴でもあるからな。

『カカシさんとイルカかぁ…』

カカシさんの帰りを待つイルカの姿を見てから、次になんとなく隣のイズモを見る。

俺が見ている事に気付いたイズモは「なんだよ。」と不愉快そうに顔を歪めやがった。
だから俺もムッとした顔を見せ「なんでもねーよっ。」と言ってやる。

「なんだよお前、気持ち悪い奴だなぁ。」

イズモは不貞腐れたような俺に そう言ったが…

実は あながちハズレてもいないのだ。

自分で言うのも何だけど最近の俺は少し変だ。

モテるイズモが、ここ二年近く彼女も作らず自由にしているせいか
それとも その自由な時間に俺と過ごす事が増えてきたせいか

俺はイズモを見ているとドキドキする事が有る

ガキの頃から ずっと一緒で
お互いの過去の悪い事も良かった事も
初体験の女の事もフられた女の数も(これは俺に限るが)

ガイさんじゃないけれど、熱き青春時代は二人で馬鹿ばっかやってたのに

それなのに

月日の流れと言うか、大人になったと言うか…
イズモには色気さえ感じる事が有るんだよなぁ…

『イズモに色気を感じる事態、変だって事だよなぁ?』

彼女居ない歴が三年は過ぎようとしている俺だからかな。
居ない歴っても、付き合って半年でフられたあとの居ない歴三年だしな。

『欲求不満になってんのかな俺。だから身近にいるイズモにトキメいちゃってんのかな。』

こいつ 顔だけは割と綺麗だし、黙って見ている分には その辺の女よりも…

「 ……何さっきから見てんだよコテツ。気持ちわりぃなぁ。」

眉間にシワ寄せてる顔にもゾクッと来ている俺は完璧に変だな。うん。

取りあえず言い返しておく

「イズモ最近彼女つくんねぇなあ‥とか思ってさ。心配してやってんのさ。」

俺も手元の書類の束を立てて、トントンと机で均(ナラ)してみる。

「 …お互い様だよ。ばーか。」

ちぇっ。そりゃそうだよな。

「 !コテツ、帰って来たようだぞ。」

つい俺達も椅子から立ち上がる

「父ちゃん!!」
「あんたっ!お帰り!」

大門の外からカカシさんが率いる大隊の忍び達が笑顔で入ってくる。
疲れきった顔も見せずに晴れやかな顔で戻って来ているので
死者は出なかったものと見て取れる。

「お〜…カカシさんが来たぞ〜。」

脇目もふらずにイルカの元へと進んだカカシさんは
イルカに近寄ると、何か一言二言話したかと思ったら
キュウッと自分の腕の中にイルカを抱き入れた。

「 …いいなぁイルカ。愛されてるなぁ…。」

そんな俺の言葉にイズモが反応した

「彼女でも欲しくなったか?それとも彼氏?」
「 は? 」
「“羨ましいオーラ”がダダ漏れだっつうの。」
「 むぅ… 」

クスクス笑いやがって

「そういうイズモだって二年近く彼女も居ねぇじゃん。早く作れよ。」
「 …余計な御世話だよ。 」

フッと苦笑いしながら、再び椅子に腰掛け
溜め息を吐いて手元の書類を何の気なしに見るイズモは
何も考えていないように見えるが、絶対何か秘め事が有ると俺は見た。

なんだよ今の苦笑い。なんだよ その…溜め息。

 
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