*過去拍手文2*

□クリスマスイブ(前編)
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「二十四日は任務を入れるなだと?」


カカシは火影の前で頬を染めながらコクコクと頷いた。

「ふん、頬なんぞ染めおって。気にくわないねぇ、如何にもって顔つきが腹立たしいよカカシ!」
「俺の人生初の大イベントなんです。」

休みでなければ辛すぎて任務にも支障を来しそうなほどシュンとしたカカシを見て
綱手は大きく溜め息を吐き

「お前に任務を回さないようにするからサッサと出ていきな!辛気臭い!」

犬を払う様にシッシッと手の甲を見せた。

「ありがとうございます!」
「ただ… て、おいっ!」

綱手から聞きたかった返事を受けるやいなや
カカシは目の前から消えていた。


「時と場合によってはって、分かってんだろなアイツ。」
「大丈夫ですよ綱手様。うふふ、イルカ先生と過ごすのでしょうか?」
「だろうな。アイツら付き合い始めてるんだろう?」
「だと思いますが大っぴらにはしていないようです。」
「ふうん?まあいいけどな。」




やった! 先生との初めてのクリスマス!

『むふふ“美味しい展開”とかになるのかなぁ?』

カカシは昨日 暗部のロッカールームで後輩達が話しているのを耳にした。

「クリスマスに結ばれるって多いみたいだよ?」
「彼女がさぁ、家に招待してくれて二人でクリスマスパーティーして…」
「その後は帰らずお泊まり…て、美味しい展開だよなぁ!」
「プレゼントは わ・た・し てなもんでさぁ!」


その時カカシはクナイの手入れをしていたのだが
その会話に耳を傾けていたので刃先を磨いていたはずが
気がつけば自分の親指まで磨いていた。

『彼女が家に招待してくれて?二人でクリスマスパーティー?』

カカシの鼻息が荒くなる。 何故なら先日

「イブの夜は御馳走作って待ってますんで!」

と、忙しそうに沢山の教材を持って
小走りで前からやって来た彼に、すれ違い様に言われたからだ。


最初は ただ単に彼と二人で過ごせる事を嬉しく思っていただけだったが
このロッカールームでの後輩達の話を聞いて
クリスマスとは特別な日なのだと知った。
しかも恋人同士には格別素敵な日になるらしいと


なので
そんな後輩達の話が頭にこびり付いているカカシは
火影に休みをくれるよう直談判しに行ったのだった。


『先生からのお誘い!クリスマスイブの夜ってのが肝心!』


もしかしたら もしかするかも!


『もう一週間も無い。プレゼントどうしよう。体もゴッシゴシ磨いとこv』

そうして鼻唄まじりに廊下を歩いていると、顔馴染みの後輩に出会った

「あれ?先輩、もうお帰りですか?」
「テンゾウ、いいところに来たな。クリスマスプレゼントって、どんな物がいいの?家?土地?山?」
「は?何を言ってるんですか、クリスマスプレゼントにそんな物あげませんよ。」
「じゃあ何!」
「あまり高価過ぎる物を差し上げても… って、先輩どなたかいらっしゃるんですか?」
「いない!いないけど参考までにっ!」

いや、この様子なら絶対いるなとは思うが

「そうですねぇ…どんな方か、にもよると思いますが…」

チラリとカカシを見る

「どん…どんなって… 例えば天使みたいな人!優しくて、おこりん坊で可愛くて案外“漢”で…」

『 …ワケわかんないですけど…誰だそれ。』

「わりと節約家で…って、聞いてんの?」
「あ、はい。…けっこう具体的なんで…つい。」
「 ! 例えばって言ってんでしょ!」

耳まで赤くして、何が“例えば”なのか

「そうですね、そんな方には高価な物は逆効果かもですよ。」
「逆効果?」
「何かこう…可愛らしい花束とか。」
「 花束… 」

何かの本で見たことが有る。
男性が恋人の女性に跪(ヒザマヅ)いて花束を捧げているのを

『先生 男だけどいいのか!?いいよね!?』

「ありがとテンゾウ、参考になったよ。」
「彼女さん喜ぶといいですね。」
「うんっ! ハッ!違っ!うるさいテンゾウ!じゃあね!」


ぽふん と情けない小さな煙を上げて消えたカカシは戸外に移動し
イブの晩は山中花店へ行って、酒屋で良い酒を買って…と
シミュレーションしながら自宅へ帰ったのだった。






そして    十二月二十四日


家を出たカカシは白い息を吐きながら
花屋と酒屋を目指して歩いた。


 
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