*過去拍手文2*

□六代目の憂鬱A
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二週間もイルカ先生をマトモに見ていない!

そう嘆いた六代目火影こと僕の先輩は
有ろう事か僕にイルカさんの様子を見てきてくれと言いつけた。
ただしそれは彼が風呂に入る直前までで良いらしい。
僕だってそこから先は見たいとも思わない。

僕は早速アカデミーでの仕事を終えて帰り道を歩くイルカさんの後を付けた。

「ラーメンは昨日一楽で食べたばかりだしなぁ…。」

ショルダーバッグを肩から斜めがけにしたイルカさんは
歩きながら今夜の夕食を何にしようか考えているようだった。

『ラーメンは昨日一楽で食べた…か。』

それも報告書に書いておこう

「何か買って帰るか。」

誰にともなく宣言した彼の足は木の葉商店街へと向かっているようだ。
この商店街へは先輩も一緒に買い物へ来るようで…

「先生と手を繋いで商店街を歩きたいのにさぁ、彼ったら恥ずかしがっちゃって…」

などと、聞きたくもないノロケ話をよく聞かせられている。


「あらー、イルカ先生!今日は鰺がお勧めよ!買ってかない?」
「鰺かぁ…どうしようかな。」

どうやら魚を買うらしい。
しかし店のおばさんに勧められた鰺には視線をチラリと寄越しただけで
彼は他の物を物色しているようだ。

「先生も早くお嫁さん貰いなさいな。ほら、時々一緒に来る銀髪のお友達は彼女くらい居るんでしょ?」

おばさん その方は今の火影様ですよ。六代目火影になったのですよ。
ちなみに“彼女”は目の前におりますよ。

「え?あ〜… ははっ。どうなんでしょうか?」
「あら、だってマスクはしていてもイイ男風でしょ?おばさん解るのよ!」

キャハハハハ!!と笑いながらイルカさんの背中をバンバン叩くおばさんは
それでも最後に「ね?鰺どう?」と勧めていた。

「ははは…。」

しかし僕は見逃さない。
彼は他の魚が気になっていたようだ。
彼がチラリと視線を送ったのは銀色に輝く秋刀魚。
秋刀魚と言えば先輩の好物てはないか。

「えーと…そうだなぁ、じゃあ…」
「あいよ!毎度ありがとうねぇ!鰺もこれが最後だったのよ!助かるわぁ!」
「え?あ…ははっ。おばさんには敵わないや!」

う〜ん 今イルカさんは秋刀魚を貰おうとしていたのでは?
さすがの“イルカ先生”も魚屋のおばちゃんには敵わなかったか…。

しかし秋刀魚を選ぼうとするなんて、やはり先輩が恋しいのか
それともただ食べたかっただけなのか…

イルカさんは鰺の入った袋を手に、また商店街の先へと進んでいった。
ん?あれは総菜屋さんだな。

「あら、いらっしゃいイルカ先生。今日は早いのね。」
「ええ、受付は今日は非番で…。」

…総菜屋の奥さん…(左薬指に指輪。人妻と思われる。)随分と美人だなぁ…。
気のせいかイルカさんも先ほどのおばさんの時よりは顔キメテないか?

「カレーコロッケ二つください。」

キリッとした顔でキリッと言った。
ふーん イルカさんて面食いなんだなぁ…。
あれ?この事は報告しない方がいいかな。
面倒臭い事になりそうだし、先輩気が気じゃなくて執務室から飛び出して行きそうだし。

「今日はいつも一緒の方は?」
「え?あ… 彼も忙しくて…。」
「そうなの?彼みたいにカッコいいと彼女も沢山居るんでしょうね?」
「…さあ。居るんじゃないかな。」

イルカさん「ちぇっ」て顔に出ていますよ。
て言うか、この辺の人達は二人が付き合っている仲だなんて思ってもいないようですね。

鰺とコロッケ。 二つの袋を手に
イルカさんは夕日のなかを一人とぼとぼと帰ってゆく。
そしてその後を気配を消して付いてゆく僕。

それより何より 先輩
里の皆さんは六代目火影が誰なのか、まだよく把握していないように思われますが…。



そうしてイルカさんがアパートに戻った。





Bへ続く

 



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