*過去拍手文2*

□秋深し隣は何をする人ぞC
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お隣さんが金髪ツインテールのナイスバディを連れ込んできた夜は
期待はしなかったが、もしかして結界を貼り忘れることだって有るかもと
それまで意識して聴力を弱めていたものを寝る直前になって忍犬並に戻してみた。

『男の性だよね…。』

女のイイ声が聞こえてくるかも… とドキドキしていたが
聞こえてきたのはスゥスゥという寝息と、カリカリとペンを走らせるような音がするだけだった。

『?コトは済んだのかな。一人が寝ていて一人が書き物をしている?』

途中ムニャムニャと寝言のような声が聞こえた。

「うーん…もう食えねえってばよ…。」

どうやら眠っているのは女の方。
イルカは一人で何やら書いているらしい。

『時すでに遅しだったのか…それとも今夜はヤラずに眠ったのか。』

いや待てよ?もしかしたら妹とか。

『それは無いか、あの甘え方は。』

そこでカカシは漸く自分の行動の可笑しさに気づき
隣の音に集中する事も止め、布団に入ることとした。
壁が薄いからと言っても、そこは忍者
結局みんな上手くやっているのだと知る事が出来た。




翌朝
カカシにしては珍しく いつもよりは遅めに目を覚ます。
アパートの住人達も出勤したようで気配がしない。

『お隣さんも居ないな…』

何故か ほんの少しの寂しさを感じた。
あのツインテールも一緒に出たのだろうか?

『同伴出勤?』

女も忍者なのだろうか。
そんな事を考えつ自宅から持参したインスタントコーヒーの瓶を手に取ると
残りが少ない事に気が付く。

「ふぅ… 買い物でも行くかな。」

購入するのはコーヒーと、簡単な食料品。
今日は読書や調べ物や買い物で一日を潰そうと考えた。



そんなカカシが買い物に出たのは空が赤く染まる頃。
あれからすっかり調べ物に夢中になり、部屋の中には幾つもの巻物が広げられたままにしてある。

『この時間帯は、あれでしょ?タイムサービスとか言うのをやってるんじゃないの?』

話には聞いていたが、こんな時間に買い物へ行くのは初めての経験なので
カカシはウキウキしながら財布を握りしめて出掛けた。

夕暮れの木の葉商店街には一般の主婦などに混じって
仕事帰りのくノ一の姿もチラホラ見える。
声をかけられるのも面倒なので、知った顔があれば気配を消した。

『魚屋に八百屋…か。』

商店街の中程には小さなスーパーマーケットも有った。

『十六時からタイムセールか。』

入口の貼り紙を見て中へ入るが時刻は既に十八時になろうとしている。
タイムセールなんて終わっているだろうし目当てのコーヒーが安くなっているかなんてわかりゃしない。

「あ、サンマが安くなってる。」

惣菜コーナーで値下げシールが貼られた調理済みの焼きサンマを見つけ
ラッキー!とばかりに手を伸ばした その時

「お待ちなさい。」
「 !! 」

伸ばしたカカシの腕を掴んで止める男が一人。

「?何故止めるのです?」

そう言いながら無礼にも腕を掴む男をの顔を見た。

「あれをご覧なさい。あの店員、こちらへ向かってどんどん商品に値下げシールを貼って来ている。」
「 …… 」

カカシは黙って見つめていた。
値下げシールを貼っている若い店員を…ではなくて
隣でカカシの腕を掴んで離さないでいる男をだ。

「もう少し待ちましょう。このサンマも更にお値下げするはずです。」

男は黒い髪を頭の天辺で結わえ、肌は健康的に浅黒く、一文字の傷が鼻の上を横切っていた。

「あ!こいつは失礼致しました!」

いつまでも腕を掴んでいた事に今更気づいて照れ笑いをしているこの男…
この清々しい声のこの男…

『もしかして…もしかしなくても…』


カカシの胸は高鳴っていた。
声も耳に心地よかったが
それ以上に初めて見るアパートの隣人の姿に
一目で心を奪われてしまったからである。








 



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