*過去拍手文2*

□秋深し隣は何をする人ぞD
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「お待ちなさい。」


惣菜コーナーでカカシの腕を掴み
焼きサンマを取ろうとしたのを止めたのは
声からして明らかにカカシの隣人「イルカ」だった。

イルカの言ったとおり店員は
値引きシールを商品に貼りながら徐々に此方へ近付いてくる。

「あれ?」

カカシはイルカの持つカゴの中を見て驚いた。
値引きシールが貼られた生のサンマ三匹パックが入っている。

「あなたもサンマですか。」
「ええ。」
「生って事は御自分で焼くんですね?」
「はい。焼いて売られている物より安上がりですからね。…と、失礼しました。」

イルカは焼きサンマにシールが貼られるのを待っているカカシにエヘヘと笑って誤魔化した。

「俺は内勤なものですから、買い置きしておけるんで…。」

そして隣のカカシの体付きをちらりと見やると
「あなたは戦忍でしょう?」とにっこり笑った。

「しかも上忍。」
「よくお分かりで…。」
「中忍に貴方の顔を見た記憶がないですし。どう見ても上忍と言う雰囲気です。」
「はあ。」

するとイルカは「クスッ」と笑い

「あなたもサンマが食べたかったのですね?もし良ければ俺んちで焼き立てサンマ、食べませんか?」

突然の誘いに、えっ?と驚きの顔を隠せなかったカカシだったが
「いいんですか?」と、行く気満々の返事をしていた。

「俺だって誰でも気軽に誘うわけではありませんよ?…何だか貴方は良い人だと分かるから。」
「…良い人…。」

良い人だなんて初めて言われた気がする。
生まれてこの方 忍術の腕前や容姿を褒められた事は数えきれない程あるが
ただ単純に「良い人」だなんて
初めて有った人間に言われるとはビックリだ。

「安い酒なら有るので、明日に差し支えない程度に飲みましょうか?」
「あ、俺が何か買います!買わせてください!ぜひ!」
「そう…ですか?じゃあお言葉に甘えて。」

イルカがフフフと笑えば、カカシの胸の中もポワッと熱くなる。

『こーゆーの、一目惚れって言うのかな。』

しかし姿を見る前に、彼の声で気持ちは惹かれていた。

「酒は近くの酒屋で買っていいですか?え…と」

名前はイルカ。絶対イルカ。
分かっていながら知らないふりをし聞いてみる。

「あ!これは失礼!名乗っておりませんでしたね、お互い。」

「お互い」と言うところで、イルカは悪戯っぽくカカシを見てニヤリと笑ってみせた。




「俺は うみのイルカと言います。アカデミーで教師をしております。」

お互いの紹介は酒屋へ向かう道すがら行われた。

「え?学校の先生でしたか!」

思わず驚きの声を上げてしまったが
すぐに「先生…って感じですものね。」と笑ってみせる。

しかしその時のカカシの脳裏に浮かぶは金髪ツインテールの存在。
教師といえどもただの男… それは理解できるが心中穏やかではない。

「俺は… まあお察しの通り上忍で戦忍です。」
「やはりそうでしたか。」

隣を歩き、少しこちらを見上げるように話すイルカは
カカシより数センチ背が低いくらいだ。
だからなのか、上目使いに話す彼を『可愛い』とも思えてくる。

『うーん… 実は隣に住んでますって、言うべきか?』

悩みつつ、かつ言い出せぬまま肩を並べて歩いて行くカカシだった。








 



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