※カカイル短編3※

□サービスデー
1ページ/1ページ



受付の交代でイルカが入った時の事


イルカの右隣に座ったユキセと言う二つ年下の中忍が
「俺、閃いたんですよね。」と、急に身を乗りだして話し出した。

「なんだよユキセ、なに閃いたんだ?」

イルカが午後の帰還者が来る前にと、引き継いだ任務報告書を揃えながら聞き返していると
左隣のゴウと言う同僚がイルカの腕をポンと叩いた。

「ユキセの考えることに碌(ロク)なこたねぇぞ。」

それでもイルカはユキセに向き直り「教えろよ。」と笑って聞いた。

「イルカさん、ゴウさん。此処へ来る疲れきった戦忍の方々の顔を見て思い付いたのですが…。」

話し出したユキセに、ゴウも溜め息を吐きつつ耳を傾けた。

「やっぱ受付でも“癒し”を与えては如何なモノかと。」
「癒し?」
「おいおい、おまえ知らねぇのか?此処に受付の“癒し”と言われている男が居るだろうが。うみのイルカがよぉ。」

やめてくれっ! と、イルカがゴウに赤く染めた顰(シカ)めっ面を向ける

「このあと夕方から各方面の国境偵察へ行っていた方達が、どっと帰ってくるじゃないですか。」

それを労う意味と癒しを与えるためにも受付には“くノ一”を置くべきだと思うのです!

ユキセが真剣な眼差しでイルカ達に言った。

「受付は基本男だぞ?女じゃ色んな意味で襲われるかもしれないからな。」
「そーそー。任務帰りの荒ぶれた上忍様にさ。」
「大丈夫でしょー?今時そんな荒ぶれた方なんて居ますか?それに深夜に一人で座るわけではなく、これからです。」

誰に頼むんだ?とゴウが眉をしかめると

「此処に三人居るじゃないですか!お色気の術ですよ!女人変化です!」

ユキセがパアッと明るく提案した途端にゴウが呆れて首を横に振りながら書類整理に手を戻した。

「バッカらしい。俺達の変化で癒されるかっての、なあ!イルカ。」
「…いいかも。」
「 へ? 」
「でしょー?イルカ先輩!」
「おいおい、イルカ…」

イルカはユキセの手を取り「いいかもしれない!」と感激していた。

「みんな疲れて帰ってくるんだ。里に戻って先ずは報告書提出だ。その時ムサイ俺達の顔見るよりは…」
「可愛い女の子の顔を拝んだ方が絶対ホッとしますよね!」
「だけど毎日はやらんぞ?」
「週に一度のサービスデーでしょうかね?」
「今日は金曜日…金曜限定“くのいちデー”」
「いいっすね、それ!さすがイルカさんだ!」

ゴウは盛り上がる二人を冷めた目で見ていた。

「俺はやんねーぞ。」



さて 陽も陰り始めた頃に
任務を終えた者達が、一組また一組
と里へ帰還してきた。

「国境偵察で日帰りは移動だけでも疲れるな。」
「遠距離の奴等は泊まりで帰るから、その方がいいよな〜。」

皆ぞろぞろと任務報告書を出すべく受付へと向かう。

「「お疲れ様です!」」
「   !!!   」

受付所へ足を踏み入れた男が、一瞬足を止め入口の上を見た。
しかし間違いなく此処は受付で…

報告書を受けとるのが“くノ一”になっていた。

しかも三人共くノ一

こちらから見て左の栗色の髪の子が一番綺麗で、真ん中の黒髪の子は平凡ながらも愛嬌の有る顔をしていたが
右端の黒髪は… 女にしてはガッシリとした体つきでお世辞にも可愛いとは言えなかった。

「お疲れ様です。報告書お預かりいたします!」

栗色の髪の子が一番愛想が良く、皆ぞろぞろとそちらへ並びだした。 

「お急ぎの方は、こちらへもどうぞ〜。」

真ん中の黒髪の子が自分とその隣へも来るように促す

「受付って、いつから女の子も置くようになったんだい?」

ユキセの案は正解だったらしく、皆の表情がいつもよりは柔らかく見える。
やはり女性の姿は癒されるらしい。

「本日は“くのいちデー”でございます。皆さんお疲れ様でこざいます。」

説明しながらイルカが「ほほほ…」と笑って判を捺す

そこへ後から戻ってきたカカシ率いる班も入ってきた。

「 え? 」

カカシは、一目見るなり真ん中の黒髪のくノ一がイルカだと分かる。

「な…何やってんの?先生?」

二人は里も公認の仲

「あー バレちゃいました?さすがカカシさん。」
「いや、さすがとかじゃなくて。何で女人変化?」
「はいはいカカシさんも、ちゃんと後ろに並んでくださいね。」
「いやです!やめて!もともと可愛いのに女の子になったら他の奴等の目の毒です!」
「大丈夫ですよ、隣のユキセが美人ですからね。それに俺、そんなに可愛くないっすよ。ハハハ…。」

二人のやり取りで周りの者もハタと気がつく

よくよく見れば 両端は何度か受付で見たユキセとゴウではないか

「なんだ いつもの奴等じゃないか。」
「ゴウ!お前まで!」

ワハハ!と笑いが起きるなか
カカシだけが必死になって「先生元に戻って!」と喚き
「うるせー、邪魔です。はいっ次の方!」と胸の有るイルカに足蹴にされていた。


しかしこの“くのいちデー”と言う名のサービスデーは
五代目のお叱りと里の誉れの抗議により
一日で終わった。

提案したユキセは誰かに襲われ
パンツ一丁で里の広場の大木に吊るされていたそうだ。







 



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ