※カカイル短編3※

□甘噛み
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イルカがカカシと肉体関係を持つようになってから まだほどない頃
イルカはカカシとの行為の最中で気になる事がひとつ有った。

「痛っ。」
「あ… ごめん。 つい…」
「 … 」

段々と気分も体も高揚して来ると
額から汗を滴らせながら、イルカの首や肩や腕などにカカシが「ガリッ」と噛み付くのだ。

どうやら本人は無意識のうちに噛んでしまうらしいので
それだけ自分との行為に夢中になってくれているのだと、イルカは半ば諦めていた。

しかし


『夕べは喉を噛みきられるかと思ったよ…。』

イルカがカカシより一足先に絶頂に達した時
カカシが喉をひと舐めしてきたかと思ったら ガブリッ と、いつもより強い力で噛んできたのだ。

「や…やだっ!やめ…!」
「 …… 」

直ぐに顔を離してはくれたが、汗が滴り息遣いも荒いままのカカシは
快感のせいか、ぼうっとしていて
数秒後に「…あ…ごめんなさい。また…噛んじゃった…。」と
火照らせた顔の上で眉をハの字にさせ、ゆるゆると腰の動きも止めぬまま謝ってきた。

噛み癖も、放っておくと危ないな…と
大袈裟ではあるが身の危険さえ覚えた。

『アノ時に噛む人が居るって聞いたことは有るけど、夕べの噛み方は尋常では無かったぞ?』

他に誰も居ないトイレの洗面所で鏡に向かって首筋の噛み跡を手で擦りながら溜め息を吐いた。

彼は場数を踏みすぎている戦忍だから。
幼い頃から見たくもない物を沢山見すぎて来たから。

『だからって精神的にどうのって訳じゃないとは思うけど…。』

変な話 今まで関係を持った女達は何とも思わなかったのか。
カカシに愛されるのならば、皮膚の一枚や二枚 食い破られても構わないと
そう思って我慢していたのか。

「俺は痛いのはごめん!」

忍服のハイネックで、サッと首元を隠してトイレから出た。

今日は これから受付に座る。
少し早いが急ぎ足で向かっていると

「あら、イルカ先生。」

前から紅が歩いてきた。

「こんにちは!紅さん。」
「これから交代?ご苦労様。」
「お帰りですか?」
「ええ、アスマと食事でもして帰ろうかと思ってるの。」
「いいですねぇ、待ち合わせですか?」
「まあね。カカシは終わるまで待っててくれるのかしら?」

カカシの名が出ると、少し照れながら

「先に帰るよう言っては有るのですが…。」

そう言い「ははは…」と照れ笑いをした。

「アイツの事だから何処かで本でも読んで待っているんじゃなぁい?」
「困ったものです。」
「ふふ… お熱いことでvじゃあね!」

そうして軽い挨拶程度の会話も終わり、すれ違ってお互いに反対方向へと歩き始めたとき

「…ねえ、イルカ先生。ちょっと待って?」

紅が立ち止まり、此方を振り向いた。

「なんでしょうか?」

するとツカツカと紅が近付き、自分の首筋に指をさしながら

「見えてるわよ。赤いの。」
「 …え… あ!」

夕べの噛み跡だ。

「ちょっと待ってて。そのままじゃ他の誰かにも見られちゃうかも。」

そう一言残すと煙と共に消え、一分もしないうちに再び煙と共に戻ってきた。

「ファンデーションよ。」

そうしてイルカの首の“夕べの跡”に紅がファンデーションを塗っていく。

「本当に噛むのねぇ。これ、噛んだ跡でしょう?」
「 え? 」
「この前カカシが言ってたわよ。“アノ時どうしても噛みたくなっちゃうんだよねぇ”って。」
「そっ!そんな話してるんですか?」
「イルカ先生痛がるし、どうしたら止められるかなぁって…」

私とアスマに相談するのよ? 困った子ね、と言う感じでクスクスと紅が笑う

彼との付き合いは、まだ近しい人にしか話していないとはいえ…
夜の話までしているとは思わなかった。

「あらら、ちょっと先生ったら首まで真っ赤になっちゃったわよ。うふふ。」
「だってそんな話までしてるなんて…」
「愛されてるのねぇ。」
「そ、そうですか?」

これで目立たないわ 紅が綺麗な笑顔を見せながら襟を戻してくれた。

「カカシがこんな事するのって、イルカ先生が初めてらしいわよ。」
「 え… 」
「“食べちゃいたいくらい”って言う気持ちが分かった気がするって。そんな衝動に駆られたのはイルカ先生が初めてなんだよね〜なんてノロケてたわよ?」

きゃはは!やーねーもう!ご馳走さま!
イルカの肩をパシッと軽快に叩いて、「アツいアツい!」と紅が行ってしまった。

「…そんな事…相談してるんだ…」

耳まで熱くなって、ブルブルと顔を左右に振った




その日の夜は何故か機嫌の悪いイルカに

『俺… 何かやったかな?』

カカシは いろいろいろいろ考えてみたが
さっぱり思い付かないので、思い切って聞いてみることにした。体に。

「せんせ?」

布団の中 優しく声をかけて、そーっと手を伸ばす

「やめてください。今日は寝ます。」

背中を向けたまま冷たくあしらわれた。

「 ! 先生〜何怒ってんですか?」

クスンと泣きそうな声でカカシが折れた。

「カカシさん、アスマさんと紅先生に俺達の夜の事…相談しましたよね?」
「 ……あ、あーあ。あの事か。先生を噛んでしまうからどうしようって?何?なんか言われたの?あの二人に。」

カカシから微量ながら殺気が漏れる。
大方「イルカを虐める奴は許さない」と言ったところだろう。

「今日 紅さんが俺の首に…赤い跡を見つけて…」

事の成り行きを話した。

「あの二人にそんな事相談しないでください。」
「だって…」

クスンと鼻を鳴らしながらカカシが言い訳をする

「興奮してくるとイルカ先生見ていたら大好きすぎて噛みたくなる衝動が抑えきれなくて。」

でも他にどうしたらいいか分かんなくて…

背中を向けているイルカのパジャマをキュッと付かみながら背に頭を付けて項垂れた。

 ― 愛されてるのねぇ ―

紅の言葉がイルカの頭に浮かぶ

「えーと…ですね。夕べの様な噛み方は抑えて頂き…せめて甘噛み程度にするよう心がけてくだされば…」
「甘噛み?」
「 …はい。」

て、結局噛むことを許しちゃってるよ俺…

イルカは諦めと反省の溜め息をそっと吐く

「甘噛みってどのくらい?」
「?そうですねぇ…このくらい?」

振り向いてカカシの腕を取りカプッと軽く噛みついてみる

「ふふふ くすぐったーい。」
「え?じゃ、じゃあこのくらい。」

カプリと噛みつくと更にカカシが笑い出す

「先生も腕貸して。 …ねえ、このくらいは?」

カカシがイルカの腕をカプリッと噛むと

「う〜ん… 我慢できないならもう少し強くても大丈夫かなぁ?」
「じゃあこのくらい?」
「えーと 多分このくらい。」
「クスクス…」



結局 二人の長い夜は
この甘噛みから再び始まったのは言うまでもない。


幸せな 幸せな 二人の話













 



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