※カカイル短編3※

□ラーメン狂想曲
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今日は木の葉スーパーでインスタントラーメンが安売りされる。
醤油味、味噌味、塩味。それぞれ五袋一パックをひとつずつ…合計三パック買う予定。

忙しい忍には貴重な非常食だ。うん。
カップラーメンも良いが、袋麺の方が安くてお得。
だから買っておかねばならない。

意気揚々と黒マジックペンでチラシのラーメンに丸印を大きく付ける

「 却下!! 」
「 へ? 」

俺の手からペンを奪い取り、丸を付けたラーメンにバツ印を付けたのはカカシさん。

「何するんですか!」
「ダメダメ。俺は明日から二週間の長期任務です。」
「 ? はい、存じておりますよ。」
「あなた今日の買い出しでラーメン買い置きするんでしょ?しかも三種類一パックずつ。」
「はい。よくお分かりで… って、それとカカシさんの任務となんの関係が…」

カカシさんは少し項垂れて、ハア〜…と大きく溜め息を吐くと
わざとらしく首を左右に振って言った。

「俺が居ない間、あんたラーメンばかり食べそうで嫌です。てか食べる気満々でしょ?」
「 う… ははは!まさか!馬鹿にせんで下さい!子どものナルトじゃ有るまいし!」
「 …いま 目が泳いだよね?額に嫌な汗も滲んできたでしょ?」
「勝手に観察するなぁ!カカシさんのスケベ!」

わたわた両腕で顔を覆う俺に、再び溜め息で返したカカシさんは
チラシを奪い取りクシャクシャに丸めてゴミ箱へ捨てた。

「あ!そのチラシは裏が白いからメモに使えたのに!」
「メモ用紙くらい俺が買ってあげます!さ、これから俺と買い出しに行きますよ!立って!」

カカシさんはブーブー文句を言う俺の腕を取り、木の葉商店街へと買い出しに向かった。



「ほら、白菜も買いましょう。何かと使えるよね?椎茸は?キノコは体にいいよ。」

なんだろう このお節介おばさんの様な人

八百屋の前であれもこれもと店主に袋に入れるよう頼んでいる。

え?ちょっと待てよ。カカシさん二週間もいないんだよな。

「カカシさん!心配してくれるのは良いけど買いすぎですよ!」
「このくらい野菜は食べなきゃです。放っとくと先生は不摂生しそうだしね。」
「 …… 」

えーえーそうですよ。 カカシさんと一緒に住む前の俺は不摂生の塊でしたー だ。

そんな俺でも大好きなカカシさんと暮らすようになってからは
カカシさんの健康の為にと、もともと料理好きではあったから
一生懸命料理本片手に ちゃんとした料理を作って出すようになったんだ。

まあ… 彼に手料理で喜んでもらいたい、とか
料理くらい出来るんですよ〜アピールもしたかったのかもしれないが

『何を作ってもウマイウマイって嬉しそうに食べてくれるしなぁ…。』

作りがいの有る人でもある。 うん。

「せんせ、肉は赤身のとこね。」
「え?バラ肉にしてくださいよ。それじゃあカレーも美味くない。」
「俺の居ないときはストイックな生活とかしてみては?揚げ物も食べないとかラーメンは絶対に食べないとか。」
「それは死にます。ラーメン一度二度食べさせてください。てか…」

俺は不満顔をカカシさんに向ける

「あんたいつから俺のお袋になったんですか。俺は今年の春から一人暮らしを始める社会人一年生ですか。」
「心配してるんですよ。先生ったらラーメンばかり食べそうで…」

野菜も摂らなきゃ駄目だとか
ラーメンばかりだと忍の体型としてどうか…って事になりますよ?俺は構わないけどね とか
余計な御世話的な事を俺に言ってきた。

「さすがに俺でも毎日はラーメン食べませんよ。」
「でも付き合う前は、一週間の半分は一楽で食べてたでしょ?多分家でもインスタント麺とか食べてたろうし。」

一週間の半分は一楽で… って、なんで知ってんだ この人。

「とにかく!野菜とか腐らせないように食べきって、また自分で買い足してくださいね?」
「はいはい。」
「ハイは一回でしょ?せ・ん・せ?」
「 ぐ… 」
「さ、帰りましょ。早くご飯にして速くお風呂入って… ね?」

カカシさんが艶っぽい眼差しで俺を見つめる。
だよな。明日から二週間会えないんだよな。今夜は静かに眠れそうにもない。

「インスタントラーメンとかはね、たまに食べるから美味しいんです。」

スーパー木の葉の前をスッと素通りしながらカカシさんが言う。
俺はいつ食べても美味しいですけどね。

安売りラーメンに後ろ髪を引かれながらカカシさんと肩を並べてアパートへ帰った。







「行ってきます。ゆっくり寝ててね。」

ぐったりとベッドの上で死んだように眠る俺の額にキスをして
早朝にカカシさんは任務に向かった。

なんなんだ あの上忍の体力。
つい小一時間ほど前まで、俺の上で腰を振ってたくせに
何事も無かったように晴れやかな顔で部屋を出ていったぜ。

「くそっ… 腰がっ…。休みだから良いようなものの…」

そんなこんなでトイレが我慢できなくなる頃まで布団の中で俺は死んでいた。

昼前には茶の間で御茶を飲むくらいにはなっていた俺は俄(ニワカ)に腹がへり
考えてみれば朝飯すら食べていないことに気が付く

「ラーメンでも食うか…」

そう言って片膝を立てて立ち上がりかけたその時、買い置きのラーメンが無い事に気が付く。

「しまった… 本当は昨日買い置きするはずだったのに…。」

“世話やき母さん”と化したカカシさんに阻止されたのだった

「うあー 無いと思うと余計に食べたくなるぅー!」

うおーっと畳の上でごろごろしたのはいいが「痛ててて」と腰にきた。


 ピンポーン


ん?何奴! 人が腰痛てぇって時に

「イルカァ!居るかぁ?」
「おい、それベタ過ぎっ。」
「ぷっ…くすくす…。寝てんじゃね?あいつ。」

耳をすませば 悪友とも言える同僚三人の声が聞こえた。
そうか!カカシさんが任務へ出たのを知って遊びに来やがったか!
ニシシ…と、思わず俺も笑いが出てしまい、立ち上がって玄関へと向かった。

「おはよー諸君。なんか用かね?」

ドアを開けてニヤリと皆を見渡した。




 
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