※カカイル短編3※

□離さないで
1ページ/1ページ



今日はクタクタだった。正直疲れた。
近々行なわれるアカデミーの運動会準備や受付業務や何やかやと。
昼飯食ったの二時半だし。クラスのガキ大将は隣のクラスのガキ大将と大喧嘩するし。
忍者アカデミー生の本気の喧嘩は手が付けられない。
禁止!って言ってるのに術が出てしまう。
もうそろそろ下忍になれる年頃だと、それが簡単に出来ちゃう奴が居るから困るのだ。
うちのクラスのガキ大将は水遁使いの家系の子で、隣のクラスのガキ大将は火遁だ。
幸い決闘?の場所として校舎裏という屋外を選んだのは偉いとして
二人の術で、あわや大惨事となりかねなかった。
まだナルト達の方が可愛かったよ…と嘆く毎日だ。


「ただいま帰りました。」

フウッと溜息を吐きながら、靴を脱いで洗面所へ向かい手を洗う。
風邪も流行りつつあるので、うがいもしておく。
そして口元をタオルで拭おうとした時、顔がタオルと反対側を向いた。と言うか向かされた。

「…ん…む…」

不意に体と顔を引き寄せられ、深いくちづけをされる

「〜〜〜ぷはぁ!て、カカシさん!」

ムッとした顔で目の前の恋人を見れば、彼は眉尻を下げて、へにょりと笑い
「お帰りなさい。寂しかった。お腹空いた。」と腰を抱き寄せたまま甘えた声で言ってくる。
俺はあんたの母ちゃんじゃないんですけど。
一人でお留守番していた小さな子供の様に、ベタベタと擦り寄って纏わり付く。

「今日は俺も疲れてるんで、弁当買ってきました。これ食べましょ?」
「うん、食べる。」

カカシさんと付き合い始めて半年以上。
最初は誘われるまま一緒に飲みに行くようになって。
その内、彼の俺へ対する気持ちが友人以上だと気付き
俺も自分の気持の変化に気付いて…て、とこから恋が始まったのだと思う。

もちろん最初の頃は随分と悩んだ。
俺は男だから彼の遺伝子は残せないし…とか、ましてや彼は「里の誉」と呼ばれる程の人物だし…とか。
でも付き合って行くうちに、そんな事どうでもよくなってきた。
付き合い始めて、直ぐに彼が俺の部屋に入り浸りになり
今まで知らなかった彼の素顔を見るようになってから彼への気持ちが増すばかりで。

夕飯の弁当を食べ終わり、お茶を飲んでテレビを見る時
デカい男が狭いってのに卓袱台に二人並んで座る。

「カカシさん狭いですよ。」
「いいじゃない。今日は家で大人しくしてたんだし…先生の顔見に行くのも我慢したんだし。」

そう、学校にまで顔を見に来るのは禁止!って言ってある。
たまの休みなんだから、家でゆっくりしていなさいと今朝も言ったんだ。

すり… と、俺の肩に頭をすり寄せながら「先生大好き。離れないでね。離さないでね。」と甘える。
それを言いたいのは俺の方なのに。

テレビに顔を向けながら、彼の手をキュッと握る。

「離しませんよ。あんたが嫌だって言ったって。」
「 …… 」

滅多に口に出さないような事を言ってみたものだからチラリと彼の顔を見ると
やはり顔はテレビに向けながらも静かに笑みを浮かべていた。
その笑顔は、ともすれば泣きそうにも見えて。
強く握り返す彼の手も微かに震えていたように思える。

「カカシさんは甘えたさんだなぁ。こんなとこ他の誰にも見せられないし教えられませんね。」
「ふふ。」

俺達は大切な人や物を沢山失くしてきた。
そしてまた 失くしたくないモノを手に入れた。


離さないで この手を離さないで


いつか死が二人を分かつまで


離しませんからね。










 



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ