※カカイル短編3※

□何もしたくない病
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忍者アカデミーの冬休みが始まった。
生徒達は登校せずに家でぬくぬく、あるいは外で元気よく遊ぶのたが
教師達は休みなど関係なくアカデミーの方へ赴く事が多かったりする。
イルカ先生も冬休み始まって二日はアカデミーへと出勤した。
そして三日目の今日から四日程家で仕事だ。
仕事と言っても沢山あるわけではないようだから
教師としての休み一日目の今朝は、イルカ先生もお寝坊さんだ。
疲れているんだろうなとは思うが。

「……て、もう昼近いんですけど…。」

用意してあげた朝食も、一緒に食べようと思っていたから俺も手を付けていない。
軽くキュウ〜と腹が鳴る。

「お腹すいたよ先生。」

ポツリと独り言を呟いてから、まさか息していないとか?と、変な不安が胸を占める。
過労死とか…  いやあーーーー!先生!!
パンッ!!と大きな音をたてながら襖を開け
ベットの上のもっこりとした人型を見つめる。

『あ… 良かった。』

布団が先生の呼吸で上下しているのを確認してホッとした。
ホッとしたのは良いんだけどさ、え?何?先生らしからぬ。 こんな時間まで起きないなんて。
まさか具合でも悪いのか…
俺は そ〜っとベッドの頭の方を見に行った。
掛布団から黒髪だけが、はみ出てる。

「せんせ?具合でも悪い?」

優しく声をかけると「ちっ」と言う音が聞こえた。 あれ?今の舌打ちだよね?え?

「先生?」
「あーーーもうっ!寝溜めしようと思ったのに!」

モサモサになった髪を振り乱しながら、ガバッと上半身を起き上がらせた先生は
ガリガリと後頭部を掻きながら大あくびをした。

「そんなに眠かったの?御飯できてるよ、一緒に食べよ?」
「……ふぅ。わかりました。」

今日のイルカ先生はヤケに男らしい。て言うか、よく自分で「俺は、もさいから…」なんて卑下するんだけど
まさに今目の前に居る先生は彼の言うところの「もさい中忍教師」そのものだった。
ん?ガッカリするかって?ぜーんぜん!!
こんな先生も可愛い!って思える俺っておかしい?

先生が出たあとの布団を整えて茶の間に行くと
卓袱台の前に先生がもっさりと座っていた。
そして二人で朝昼兼用の様な食事を済ますと、また先生はゴロンと畳の上に寝転がった。

「珍しいね先生がゴロゴロしてるなんて。」
「疲れが溜まってんです。俺でも時々何もしたくないって日が有るんです。」
「ふぅん。今日は休みだからゴロゴロしてるの?」
「はい。特に今日の俺は何もしたくない病にかかっているんで。」
「え!何それ!そんな病が有るんですか!?」

そんな病名初めて聞いた!この俺とした事が!!
それは大変!早速綱手様に診てもらおう!と思っていたら。

「あーもう… 俺が何もしたくない、ぐうたらしていたいってだけですよ!」

そう言い、面倒くさそうにゴロゴロしていた。

「あ… そ。そー言うことね…。」

そうか。先生でもそんな時があるんだと初めて知った。
いつも忙しそうだし、いつも元気いっぱいで。
でもこうして疲れがドッと来て、なぁんにも遣りたくなくなって
ダラダラしていたい事だって有るってことだ。
まあいいさ。先生に合わせて数日休みを貰った俺だ。
今日は先生の為に俺が目一杯動くとするか。
そう決めた俺は、畳の上で伸びて突っ伏している先生をそのままに
食べ終わった食器を下げて洗いだした。



 
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