※カカイル短編3※

□イルカが彼女を紹介しない理由(わけ)
1ページ/1ページ



俺の飲み仲間の一人、うみのイルカに彼女が出来たらしい。
イルカと言えば同期の中でも一番奥手で、仲間内では結婚も一番遅いだろうと言われてる奴だった。
アイツは見た目まあまあ、背も高い方だし性格も良い。
しかし女に関しては真面目すぎるのか「いい人」で終わってしまうらしく
優しいのはいいが恋人としては物足りない… と、ふられる事が多かった。
俺が女なら、イルカという男は性格も良いし誠実だし結婚するなら打って付けの相手だと思うのだが。
で、彼女が出来たって事は、きっと俺の様にイルカが如何に良い奴かってのが分かる女が居たって事だ。
今度こそは「いい人」で終わらずに結婚まで漕ぎ着ければ良いのだが。


人が退けて受付けに二人きりになった時、俺は横に座るイルカに徐ろに話しかけた。

「イルカァ、いい加減お前の彼女紹介しろよ。いつまで勿体ぶってるんだ。」

そう、彼女が出来たらしいと言うのはバレバレなのだが、それがどこの誰なのか教えてくれないのだ。
もしかしたら凄い美人か…ま、その真逆かって事で皆に紹介したくないのかもしれないが。

「俺達はさぁ、彼女が出来たら一度は皆に紹介するじゃねーかよ。どんな容姿でも誰も何も突っ込まねーからさ。あはは。」
「う… うん…。でも、その… は、恥ずかしがりやだからっ!」
「何言ってんだよ!彼氏が自分の友達に紹介したいってのに付いて来ない子いるか?」
「いや、でも無理強いしたくないし…。」
「冷てぇなぁイルカ!そんなに俺等に紹介したくねーのかよ!」

ちょっとムキになった俺は声が大きくなっていたようだ。
そしてそんな俺をイルカが「おいおい…」と宥めて来るのだが
その態度に余計に腹がたった俺はガタンッと椅子を鳴らして立ち上がり
イルカの胸ぐらを軽く掴んで問い詰めた。いや、半分おふざけも混みだが。

「何勿体ぶってんだよ!俺達に紹介出来ないって言うのか!?」

しかしハッと気が付くと、イルカの胸ぐらを(軽くだが)掴んでいる俺の手首を横から掴んでいる別の手が有った。

「どーしたの?穏やかじゃないねぇ。」
「!!はたけ上忍!」
「カカシさん。」

「あ、えーと」と、笑って誤魔化す俺と「何でもないんです。友達同士のちょっとした諍いと言うか…」とハハハと笑うイルカ。
すると はたけ上忍も「そう?」てなもんでスッと掴んでいた手を離してくれた。

「何やら大きい声が聞こえてきたからさ… どうしたのかと思って。」

相変わらず飄々としているが佇まいがカッコよい。そうだ!この人こそイルカと懇意にしてくださってる方!
俺の不満を言えば、この人から何か聞き出せるかもしれない。

「はたけ上忍、聞いてくださいよ。イルカの奴、彼女が出来たらしいのに仲間に紹介もしてくれないんですよ。」
「彼女?イルカ先生に彼女が出来たの!?」

あれ?はたけ上忍もキョトンとしてイルカを見ている。なんだ、この人にも知らせてなかったのか。

「こいつ、はたけ上忍にも知らせてなかったのですか!ますますけしからんぞ!イルカ!」
「いや、あのなぁ…。」

なんだその困った様な迷惑そうな顔は?

「イルカ先生に彼女。気になるねぇ。」
「でしょう!ですよね!ほらな!」

どうだとばかりにイルカを見れば… ふふふ、困惑した顔で上忍の顔を…

「お、おいっ、イルカ。睨むことないだろっ。」
「いいんだよ、イルカ先生は。ね?」

はたけ上忍が優しく言ってくれたからいいものの、イルカの奴 この人に甘え過ぎじゃないのか?
よく飲みに連れて行ってくれるとは言え、この人スゲえ上忍様だぞ?次期火影とも噂される人なんだぞ?

「そうだ、今週末に飲み会やるから連れて来いよ。ちゃんと俺達に紹介しないと許さんからな!」
「わあ、大変ですねイルカ先生。」
「ぐっ… もしかしたら急な任務で来れなくなるかもだし…。」
「大丈夫じゃない?今は何処も急な任務が入る様な状況でもないし。先生から綱手様に“彼女”を来週まで里外に出さないよう懇願すれば?」
「な… !」

ほほお。さすが頭の回る上忍様!はたけ上忍ありがとうございます、だ。
ふふふ… イルカの悔しそうな顔ったら…。

「よし!決まり!早速今夜には皆に式を送るからな!土曜日だ、土曜日夜六時に酒酒屋に集合だ!」
「だーね。ふふふ。」
「…く…」

はたけ上忍もニコニコだ。 あ、そうだ。

「はたけ上忍もいらっしゃいますか?」

これは俺達も この凄い人と酒を飲める良い機会となりそうだ。

「俺?んー… 行けたら行く… かな?」

そうだった。この方こそお忙しい方なのだった。

「ですね!来れたらで良いので…。」
「はーい。うふふ、みんな楽しみだーね?イルカ先生が彼女を紹介してくれるなんて。」
「はい!やっとコイツにも春が来たのかと皆喜んでいたのです!」
「そう、そんなに?なのに紹介もしてなかったんだ?」
「カ、カカシさんには関係の無い事です。」

何はともあれ、イルカの彼女を拝める事が決まった。
これもそれも、はたけ上忍のおかげってものだ。


そしていよいよイルカが彼女を連れて来るという夜
集合場所の居酒屋では個室を取って待機していた飲み仲間の俺達四人。
皆ワクワクしてイルカと彼女の登場を待っていた。

「どんな子だと思う?」
「あいつ、ああ見えて面食いだからな。可愛い事は間違いない。」
「いや、可愛いどころかスゲぇ美人だったりして?だから紹介したくなかったとか?」
「その逆だからこそ会わせたくなかったーて事も!」
「お前ら顔じゃねーぞ?性格だろ性格。イルカのことだ、普通の一般家庭のお嬢さんを近所のおばちゃんとかから紹介されてだなぁ…」

あ、でも急な任務が入ったら… とか言ってたから、くノ一か?
あれ?どうだったかな?と思い出していると誰かが耳元で聞いてきた。「それほんと?」

ビクッ!近っ!と驚き横を見ると、いつの間にか はたけ上忍が!!

「はたけ上忍!」

俺も驚いたが 他の連中も驚いていた。どうやら瞬身で現れたらしい。

「ご近所のおばさんが先生に女の子紹介してたの?」
「あ!いえいえアハハ!それは俺の勝手な妄想で… って、やはりはたけ上忍もイルカの彼女が気になりましたか!」

どうぞどうぞと上忍様を上座へ座らせる。
皆には、はたけ上忍の事も話しておいたが、やはり緊張するのか ぎこちない笑顔を見せたまま押し黙ってしまった。

「今、冷えたビールを頼んだのでっ。」

仲間内でもイルカの次に気の利く奴が既に注文をしていたようだ。すると…
パァン!と勢い良く襖が開いたかと思うと、ゼェゼェと息も荒くイルカが一人立っていた。

「イルカ!待ってたぞ。」
「あれ?彼女は?」
「お前まさか連れて来なかったとか…」
「お待たせしました生ビールです。」
「あ!イルカ!それは はたけ上忍の…」

走ってきて喉が渇いたと言わんばかりに、イルカが店員からジョッキを奪い取りゴックゴックと一気に飲み干してしまった。

「プハーッ!」
「プハーッじゃねえよ!早く はたけ上忍のビール頼んでこい!」
「さすがイルカ先生〜v」

はたけ上忍が嬉しそうに微笑んで顔の前で両手を合わせてパチパチと小さく拍手をして一気飲みを讃えている。

「イルカァ、彼女は?連れて来なかったのか?」

俺が不満気に聞いているのに、イルカの奴は不機嫌極まりないという顔で部屋へ入るなり
「今日は来ないって言ったじゃないですかっ!」と真っ赤な顔で、はたけ上忍に向かって怒鳴りだしたからビックリだ。
いくら可愛がって頂いているからって、上忍を… しかもこの方に対する態度ではないだろうに。
皆も真っ青だ。

「お…おいおい…イルカ…」
「えー?だってイルカ先生の彼女とやらを見たかったんだもん。」
「だもんじゃねえでしょうがっ!見たいですか!?俺の彼女とやらを見たいんですかっ!あーそうですかっ!」
「え?あはは…イルカ先生ったら、そんなの冗談に決まっ…」
「明日から早速“彼女探し”しますよ!」
「!!駄目っ!駄目に決まってるでしょ!?」
「何が“イルカ先生の彼女”だ。」

何やら思った以上に親しげな二人のやり取りを俺達は呆然と見ていた(聞いていた)

「先生怒った?ねえ怒った?」

なんで はたけ上忍がオロオロする?

「俺の彼女が見たいんですよね?」

イルカ… お前なんでこの人に強気で喋れる?

「見たくない!見たくないですから!ね?お願い。彼女作るとか言わないで?」
「もうおしまいです。…俺は…皆に紹介したくなかったのに…」

え?なんで?何故イルカはそれほどまでに彼女を紹介したくないんだ?

「先生ひどい。何故紹介したくないんですかっ。」

はたけ上忍までイジケている

「だって…」

だって? 仲間全員がその理由を聞きたくて、ゴクリと喉を鳴らした。

「カカシさんカッコ良すぎるから!皆に妬まれるから!」
「「「「 は? 」」」」

俺達四人の声が重なった。

「イ… イルカ先生ったらっ!」
「カカシさんがカッコイイのが悪いんです!」
「もーう、お馬鹿さんですねぇ。そんな事無いですって。かーわいいんだからvイルカ先生。」

あ…… そーゆう事?
…………………うん。もういい。 もういいわ。

その後イルカが「あの…驚くと思うけど…」と隣に並んで座る はたけ上忍を改めて紹介してくれたが
先程の二人のやり取りに、もう誰もが驚きすぎて憔悴しきった顔になっていたのは言うまでもない。


ちなみに彼女ではなくて彼氏だそうだ。   どっちでもいーよ。









 



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ