※カカイル短編3※

□熱き訪問者(後編)
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「修行……ねえ…。」

取りあえず、カカシはリーを連れ立ち火影岩の上までやって来た。
ちらりとリーに視線をやると、期待に胸を膨らませワクワクした顔とキラキラした大きな丸い目でこちらを見ていた。

『―ったくガイの奴、何考えてんだか…。』

「えー… その… なんて言うか… 君はいつもどんな修行をしているの?」
「ありとあらゆるです!」
「え?あぁ…そ。」

ありとあらゆるって… 「ははははは。凄いね。」だからその内容は?と聞くのも面倒になった。
せっかく今日は二人揃っての休日だったのに。
家事をするイルカの近くでゴロゴロしながら読書をして、時には彼の腰にしがみついて叱られたりしながら
平凡だが幸せな一日を過ごすはずだったのだが。

『そうだ。』

きらりとカカシは閃いた。
何も自分まで一緒に修行しなくても良いではないか。

「あー、リー君?先ずは瞑想でもしようか?」
「瞑想…ですか。」

瞑想なら今朝カカシの部屋の前で充分した。
しかしあれはあれ、これはこれ。

「わかりました!カカシ先生と御一緒できるとは光栄です!」
「んー…それがね、悪いんだけど俺は用があってね。一人でやっててくれる?」
「わかりました。」
「ま、終わったら帰ってきていーよ。」

ちょっと待ってて?と、小さなメモ用紙に何やら書いてリーに渡した。

「取りあえずこのメニューでやっててくれる?」

ぺらりとメモを一枚渡すと「じゃ、頑張って!」と火影岩の下へスッと落ちる様に消えていった。

「なるほど、カカシ先生も忙しい方なのですね。御一緒出来ないのは残念ですが…」

手にしたメモをまじまじと見る。
瞑想、筋トレ(内容はお任せ)、手裏剣術等々
よくある内容のものばかりで、ちょっと拍子抜けしてしまった。

『……ガイ先生の厳しい修行が如何に僕を高めているのか解った気がします。』

さすがは我が師。 リーの胸に熱いものが込み上げて来る。
しかし今はそんな感慨に浸っている場合ではなく、カカシの言うとおりに修行をせねばならない。
「よしっ!頑張ります!全てクリアしてみます!」俄然張り切るリーであった。


「うふふ。ただーいまv」
「あれ?どうしたんてすか?修行は?」

本の整理をしていたらしいイルカが、寝室の本棚の前で本に囲まれ座り込んでいた。

「修行のメニューは彼に渡したよ。考えてもみてよ、久しぶりの休暇なんだよ。俺だってノンビリしていたいよ。」
「う… それもそうですね…。」

カカシはここ最近 朝も早くから、そして帰りも遅くなる任務が多かった。
リーもアカデミー生ではないのだから、一人で充分鍛錬出来るだろう。
早速部屋着に着替えて本を片手に寝転ぶカカシを見て仕方無いかと小さく溜め息をついた。



「ゴールです!」

初代火影の顔岩の下からヒョイッと身を乗り出し、上へ登ってきたリーは
カカシの書いたメニューの通りに岩の下から片手で登って来たのである。しかもこれで三度目。

「どうしましょう…。もう終わってしまいました。」

ガイとの修行は半日を費やす。
ガイが居なくとも自分はいつも朝から晩まで殆ど修行三昧だ。
ガイが どの様にカカシに託したのか知らないが、勝手に一人で修行を続けているよりは
これだけのメニューをこの速さで終わらせたと言う事を報告した方が良いのかもしれない。

「ですよね!如何にガイ先生の僕への鍛え方が素晴らしいか、その成果をお見せする機会でもありますよね!」

よしっ!と、片手に拳を握り締め、リーは今登ってきた顔岩の下へと姿を消した。



「ちょっとカカシさん、やめてくださいよ。」
「やーだ。洗濯物なんてあとからでもたためるでしょ?」
「カマッテちゃんか!あんたは!」
「そうですよー。」

座って洗濯物をたたむイルカの腰に、ゴロゴロ寝ていたカカシが寝転びながら しがみついていた。

「!!ちょっ!どこに手を入れてんだ!」
「うーん。ちょっとだけ、ちょっとだけお尻触らせてー。」
「馬鹿かっ!」

これだよこれ。 カカシは叱られながらもウフフと幸せを噛み締めていた。
イルカに怒鳴られようが煙たがられようが、こうしてイチャイチャしていられるのが休日の楽しみと言うもの。
その時ガチャリと玄関ドアの開く音が

「ただいま戻りました!!」
「わあぁぁぁぁ!!」

リーが玄関ドアを開けて入って来たと同時くらいにイルカは驚きの声を上げ、カカシの頭を畳に減り込んだ。

「あの… 何か…?」

イルカの声に驚いたリーは土間に立ち尽くしたままボー然としている。

「早いなリー君!はははは!」
「カカシ先生はどうしたんですか?」
「また顔にデカい蝿が停まっていたからビックリしちゃって!アハハ!」

カカシがムクリと顔を上げた。

「……リーくん… もう終わったの…?」

悲しそうな顔で恨めしそうにリーを見て呟くカカシの鼻の頭が痛ましくも赤く擦れていた。

「はい。えーと…大丈夫ですか?」
「まあね。 …強いて言えば心が折れそう。」
「え?」
「いやいや、ははは。ま、そういう事で今日の修行はこれにて終わ…」
「次は何をしましょうか!ガイ先生はカカシ先生に全てお任せしていると…。」

言っていたような いなかったような…
とにかくリーは瞳をキラキラ輝かせ両の手に拳を作って催促した。

「偉いなぁリー君。カカシさん、昼まで付き合ってあげてくださいよ。」
「はーい…。」




 
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