∞シリーズもの3∞

□続・先輩の恋人
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ひゅうるりと枯葉が一枚

高い給水塔の上に立つ僕の頬を掠めて飛んで行く

「寒くなってきましたね先輩。」

少し離れた後ろに立つ、僕が敬愛している先輩に声をかける

「そ?お前は気合が入っていないからね。」

そんな憎まれ口を叩かれて、思わずムッと振り向いた。

「あ〜あ… 早く帰りたい…。」

そうぼやく彼の銀色の髪が、サラサラと風に靡くさまを見て
美しい人は何処を取っても美しいものなんだとつくづく思わされた。

「ほんとに来てんの?怪しい奴らって。」
「行商人になりすまして潜入しているとの情報が入ったそうですが、ガセネタだとの噂も…。」
「それにしても、この新しい双眼鏡スゴイね。西の森の梢の鳥まで見えるよ。」
「開発部が頑張ったようですよ。」

里内には数名の暗部や上忍達が見回りをして目を光らせているのだが
僕達は高い所から里を見渡して何か怪しい動きがないか警戒中だ。
先輩は集落の少ない西の森が迫る方向をずっと見続けている。
僕はと言うと、里の皆さんの生活が視界の端から端まで見渡せる方を任されている。
先輩曰く お前の方が目が大きいから見渡せるでしょ? との事だ。
関係ないと思うんですが…

「…いかんな。」
「 ! 何か見えましたか!」
「ほら、あの森の手前の材木置き場。」
「材木置き場!?」

慌てて言われた方向を双眼鏡で見る。

『あれは… 木の葉のくの一?』
「男と一緒にいるでしょ?」
「何か密談でも?話しをしているようですが…。」
「きっと機材管理の小屋に向かうよ。」
「 ! 本当だ!どうします先輩!?誰か向かわせますか?それとも僕達が…。」

双眼鏡から先輩へと視線を移すと
先輩は至って冷静な横顔を見せたまま一言発した。

「人のヤッてるとこなんて見たくなーいよ。」

人のヤッてるとこ? …ヤッてる? とこって?

「あの女、要注意だよ。テンゾウ、お前まだ声かけられてないの?」
「なんの事です?」
「あいつ出世しそうな上忍とか名を馳せてる上忍とかを品定めして誘惑しまくってるんだよ。」

あれ?お前声かけられてないんだ?
口布の口元あたりの微かな動きで、先輩がニヤリと唇を歪ませたのがわかった。
えーえー。声かけられてませんよ。
かけられなくても良いでしょうに。

「…取りあえず…あそこはヤッてるだけで問題なしなんですねっ?」
「うん。 あ、俺はあの女とはヤッてないからね!でも先生にこの話は内緒。」
「はいはい。わかりましたよ。」

再び僕は里を見渡す。 里内もすっかり秋だ。

『おや?』

すっかり秋だと思わせた焼き芋屋に、見慣れた顔の忍者が一人。

『あれはイルカさん…』

高性能の双眼鏡で、彼と焼き芋屋がよく見えるようにレンズを合わせる。
と、その前に 先輩に教えた方がいいかなと、チラリと後ろを振り返るが
彼は相変わらず背中を見せて西方向を見渡しているようで…

『教えると面倒臭いな。仕事放棄して焼き芋屋の前に瞬間移動しそうだし…。』

なので やめた。
先輩は風上に立っているから風下のイルカさんの匂いや声が伝わって来ないと思われる。

そうして僕は再びイルカさんのいる場所へ双眼鏡を向けた。




 
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