∞シリーズもの3∞

□告白〜小鳥の恋/それから〜B
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少し離れた先に見える平和な里を眺めながら、俺とカカシさんは俺が小鳥の時の任務を思い出していた。
あれは大名屋敷での事。俺はカカシさんより遅れて屋敷へ行ったのだが…。
今でも目に焼き付いている。小鳥を待つ為なのか警備の為なのか、屋敷の屋根の上に立つ美しい忍の姿。
夕陽に輝く銀の髪が風に靡いてとても綺麗だった。彼の事を諦めようと決めていた矢先だったのに、そんな気持ちが一瞬で崩れる程だった。
「あの任務の時は夜になると森へ帰って寝ていたでしょう?」カカシさんは知っていた。小鳥の後を付けて森まで見に来た事が有ると告白し
その事に対して少し驚いた俺に「どこで寝ているのだろうと心配だったから。」と申し訳無さそうに言った。

「もしかして俺が人の姿に戻ったところも見ました?」
「あ〜… あはは… はい。」

うわー 見られてた!と更に驚きながら目を丸くしてカカシさんを見ていてたら「ごめんなさい…。ストーカーですよね…。」とシュンとしたので慌てて「そんな事ないです!」と言ったはいいが…。
ストーカー…と変わらんな。と冷たい考えも頭に浮かぶ薄情な俺だった。ははは。

「思い出した!」
「え!?何がです?」

カカシさんがハッと何かを思い出したらしく、急にこちらに向き直るとガッ!と俺の両方の二の腕を掴んだ。

「後をつけたのは謝ります。でもひとつだけ教えてください。」
「な、なんでしょう?」
「イルカ先生の荷物は誰が揃えて用意してくれましたか?巻物で口寄せした荷物です。」
「へ?…ああ…。」
「誰か女の人が用意してくれたって…。ちゃんと着替えの下着も入れておいてくれたって…。」
「やだなぁ…ふふふ。シズネさんですよ。」
「シズネさん… 別に特別な関係ではないですよね?」

眉間にシワ寄せ真剣な顔で聞いてくるカカシさんに、申し訳ないがブーッ!と吹き出す。
俺がシズネさんとぉ!?無い無い!!

「無いですよっ!あははは!」
「〜〜〜笑う事ないじゃない。しばらく気になってたんだからっ。」
「ははは…ごめんなさい。俺にとっては姉の様な存在なんで!」
「そう?だったら良いけど。」

少し拗ねた顔が可愛い…と言うか、こんな表情をさせているのがこの俺なんだと思うと嬉しい様な、くすぐったい様な… 顔がニヤついてしまって仕方がない。

「…先生面白がっているでしょう?俺がヤキモチなんて妬くから…。」
「え?面白がってなんか…。」

いけない いけない。相当ニヤけた顔をしていたようだ。
兎にも角にも それからも沢山… 今となっては笑い話にしかならない小鳥の思い出を「そろそろ帰りましょうか?風も強くなって来たし。」と、カカシさんが言うまで肩を寄せあい話し続けた。
そして帰り道 再び手を繋ぎ合って歩いた二人は山の上で沢山話しすぎたのか言葉を交わすわけでもなく静かに歩き続けるだけで
でもそれは決して気まずいとかの雰囲気ではなく、むしろ心地良いと言うか言葉は交わさなくとも心が繋がっていると言うか不思議と気持ちが穏やかになる時間で
この人とならいつまでもこうして傍に居られるし、居たいと願った。
カカシさんは俺の運命の人。心からそう願わずにいられない。

「先生?」
「はい?」
「俺、一緒に居ても口数少ないと思うけど嫌いにならないでね?」
「嫌いになんてなりませんよ。」

会話が途切れていた事を気にしたのか、繋いでいる手にキュッと力を込めて言ってきた。俺が貴方を嫌いになんてなるはず無いのに。
意外と可愛い人なんだよなこの人。

「カカシさんと こうして黙って一緒に歩いていても、俺ひとつも退屈だとか嫌だとか思いませんよ。むしろ心地良いです。」
「ほんと?」
「はいっ!凄くないですか?会話が無くても隣りにいるだけで心地良いなんて!」

カカシさんの不安を払拭するようにニカッ!と明るい笑顔を見せると、彼は一瞬キョトンと驚いたような顔を見せ、次には満面の笑みで「そうですね。…嬉しい。」と言ってくれた。

「今日はこのあと…俺の家に来ませんか?」
「え?カカシさんの家に?いいんですか?」

仲の良い友達から「遊びに来いよ」と誘われた様な、そんな軽い感覚で聞いていた俺は彼の顔を見た時にハッと気づいた。
その伏し目がちの横顔を見ただけで、今日これから… 多分彼の家で夕飯食べたりお喋りしたりした後どうなるか…が分かったから。
遅ればせながらドキドキと心拍数が上がり顔が赤くなるのが分かった。
そして馬鹿な俺は変な心配までし始める。今朝シャワーの後に履いたパンツは確か…

『ぎゃーーー!!何も考えずに、里から支給された白ブリーフ履いて来ちまったぁ!』

お洒落な下着だって持ってるのに!でもだってまさか初デートでこんな展開!!いやでも病室ではずっと会ってたよな?ほぼ毎日会っていたよな?病室デート…だったよな…。
初めての夜に、もっさい白ブリーフって… しかも里支給の… ウエストゴム部分右に小さな木の葉マーク…
あ!でもあれかな?イルカ先生って真面目なんですね、ちゃんと支給された下着を身に付けてるなんて。とか思われないだろうか。
いやいやいや、大抵の若い奴は普段オサレな下着を身に付けてるぞ?俺だって二枚で幾らの安いやつだが、なるべくセンス良さそうなのを選んで買うし。
きっと…きっと… カカシさんはカッコいいパンツ履いてるんだ。
間違っても支給の白ブリーフなんて身に付けない。

「……イルカ先生?」
「!!は、はいっ!」

一人で悶々としていた時間が長かったようでカカシさんが心配そうに俺を見て声をかけてきた。

「夕飯一緒に作りましょうよ。買い物して帰ろう。」
「あ… はい。」

どうしよう。一度家に帰ってから…なんて出来無いよな。そうだ!あれだ!明かりを消してしまえば見えないか!
なんて考えているとカカシさんの溜息が聞こえてきたのでハッと我に返る。
いけない いけない。また考え事していた。

「ごめんなさい… なんか唐突ですよね。まだまだ一緒に居たくて つい…。」
「いえっ!勿論!是非っ!」

下着の心配なんてしてる場合じゃない!俺はカカシさんと夕飯を作る!そして食べる!

「何食べましょうかね!?」
「ふふふ…肉がいいよね?イルカ先生は肉の方が好きでしょ?」
「はいっ!」

俺が明るく楽しくしているとカカシさんも楽しそうでいい。
「一緒に買い物っていうのも嬉しいな…。」ポツリと本当に嬉しそうに呟くカカシさんが愛しくてたまらなかった。









 



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