≡ 連載もの・3≡

□ORGEL 4
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イルカがカカシと飲んだ夜
二人の女に言い寄られていて、どうしようか悩んでいると言っていたカカシだったが
ほどなく ある噂が耳に入ってきた。
あの はたけカカシが漸く腰を落ち着けそうだと。

「聞いたかイルカ?はたけ上忍の噂。」

日付も変わる頃、受付の片付けをしながら同僚が話しかけてきたので
イルカはテキパキと机の上の書類やら判子やらを箱に整理しながらしまい込み「ああ、聞いた。」と穏やかな声で返した。

「ここ数年ぶりの彼女らしいぞ。いよいよ結婚か!?とも噂されてるらしい。しかも黒髪の美女だとさ!」

いや… 結婚は無いな。 多分。
胸の内でそう思い、イルカはクスッと笑うと「さあ、帰るぞ。消灯するから早く廊下に出ろよ。」と指を照明のスイッチへと伸ばした。

「ちょっと待って!まだいい!?」
「!!カカシさん!」

噂をすれば何とやらだ。カカシが報告書片手に駆けつけて来たのだ。

「え…と、はい。いいですよ、机の方へいらしてください。」

イルカは立ったまま机の上で箱を開け、判子を取り出した。

「すみません。片付け終わってたんですよね?」
「いえ大丈夫です。それよりこんな遅くまでの任務だったのですか?」
「あー… いえ。彼女が離してくれなくて。」
「……ああ… なるほど。」

カカシは書き忘れはないか確認する為、報告書に視線を落としながら何気なく言ったようだが
一拍置いてからハッと気付いて顔を上げイルカを見た。

「!そうだ!イルカ先生に報告しようと思って延び延びになってましたけど、俺 先生のアドバイスで例の二人のうち一人と付き合ってみる事にしたんです。」

知ってます。 と言いたい所だったが 「それはそれは!良かったですね!」と満面の笑みを見せてあげた。
これでこの人も少しは落ち着けば良いのにと願いながら。
そこでイルカの同僚が後ろから声をかけてきた。

「はたけ上忍、噂では御結婚も近いのではとの事ですが…。」
「え?俺が?何で?」
「え?何でって…えっと、彼女さんが出来たからでは…。」
「付き合ったら必ず結婚しなきゃいけないって事は無いでしょ?やめてよね。」

あらら… ちょっと不機嫌そうな顔になったなと感じて、イルカは同僚に助け船を出してカカシに話しかけた。

「カカシさんだからこそですよ。あなたほどの方が付き合おうと決めた方ですからね。皆“すわ!結婚か!?”って思ってるのではないでしょうか。」

ね?と笑顔でカカシに向かって小首を傾げると、気を良くしたのか「そうなの?」と笑顔で返して来た。

「ねえ、イルカ先生。こんな時間でも開いてる居酒屋が有るんです。付き合ってくれますか?」
「でも彼女さんがお待ちでは?」
「いいよもう。満足して寝てるでしょ今頃。」
「ま…  ああ…そ、そうですか。」

満足って、やっぱ今ヤッてきたばかりか…とイルカは耳を少し赤らめる。

「さ、行きましょう。」
「え?あ、あの、これ片付けてから…」
「ちょっとアンタ、これ片付けといてね。イルカ先生借りるから。」
「あ!は!はいっ!どうぞ!」

何が気に入ってこうも俺なんかを誘ってくれるのか。なんだかおかしくて笑える。
そう思ったイルカがひっそり笑っていると、目ざとく見ていたカカシが「なぁに?」と聞いてくる。

「いえ、カカシさんも変わった方だなぁと。俺みたいな面白くも何ともない中忍を誘うなんて。」
「…なんだろね?なんかイルカ先生と居ると安心するって言うか… 楽しい気分になれる。」
「そうですか?やっぱり変わってますよカカシさん。ふふふ。」
「ふふ。」

イルカとは知り合って間もないというのに、何故か心惹かれる男だとカカシは感じていた。
傍に居ると居心地が良い、そんな不思議な存在だと思った。
数は少ないが友と呼べる人間は居る。が、その誰にも感じた事の無い感情。
まるで親兄弟の様に馴染める相手。そんな感じ。

「?カカシさん?」
「あ、えーとね、あそこの赤提灯の小さな店だよ。」
「ホントだ。こういう店があると助かりますね!」

嬉しそうに目を輝かせて店の灯りを見つめるイルカ。
そんなイルカにカカシも嬉しくなり「うふふ」と笑うと「腹が減っていればお握りや茶漬けも有りますよ。」と教えてやった。

「今の俺には酒よりお握りですよ!まずは米を腹に入れたいです!」

ニシシ… と笑うイルカを見てカカシは思う。

『俺は本当にこの人の笑顔が好きだ。』

もしかしてもしかしなくても、女と一緒に過ごす時間より、この人といる時間の方が心地良い。
そう感じたカカシだった。







 


 

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