※カカイル短編※
□照れ屋さん
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先日の飲み会で、隠していたはずのカカシさんと俺との関係が、俺の失態によりバレバレになってしまった。
今日は皆に知られてからの初出勤。きっと冷やかされたり茶化されたりするに違いない。
受付では、他の上忍、中忍達から好奇な目で見られるに違いない。
カカシさんは手を繋いで一緒に行こうと本気で思ってたらしく、嫌だと堅く断ったら口を尖らせて「なんで?」と少し拗ねていた。
まあ兎に角。いつも通りの俺で居ればいいんだ。変に照れてグダグダになるよりは、冷やかされても「あ、そう?」くらいの態度で平然を装おう。
「おはようございます!」
職員室のドアをガラッと開けサッサと自分の席に向かう。
机の上にカバンを置き、視線を落としたまま誰にともなく言った。
「いや〜、昨日は すみません!飲み過ぎちゃって1日死んでました!あははは!」
「はい。先生にも。」
机の上だけ見ていた俺の目の前に1つの饅頭が置かれた。
しかも聞き慣れた声。今朝まで聞いていた声。
ギギギッと恐る恐る声がした横を見ると。
「早いでしょ?俺。 マッハで饅頭買って先生より先に来ちゃった。」
エヘッとか言いそうな、弓形にしなった右目だけを見せてるカカシさんが、そこに居た。
「………。」
「先生?」
「!!」
抑えていたはずの恥ずかしさと照れくささが一気に浮上し、自分の顔がブワッと赤くなったのが解った。
「あはは。熟れたトマトみたいで可愛い。…じゃ、俺7班の任務に行ってきますんで。」
そう言い右手を顔の高さに挙げスタスタと職員室から出て行った。
「うみの先生。」
顔を赤くして唖然としていた俺に、すずめ先生が声をかけてきた。
俺は視線だけ先生の方へ向けた。
「お饅頭ありがとうございます。はたけ上忍が、昨日はイルカ先生が休んで御迷惑おかけしただろうからって。持ってきてくださったんですよ?」
ぎゃー!!なんて事を!!
「イルカァ、隅に置けないってお前の事だよなぁ。なんで隠してたんだよっ!」
「凄いです!あの、はたけ上忍とお付き合いしてるなんて!」
「どうやって口説いたんだ?」
皆が饅頭片手に近寄ってくる。
なんだよこれ。怖いぞおまえら。饅頭ゾンビか。
「あ、いや。…ホントすまん。昨日は。」
いろいろと。
俺の計画台無し。
朝からテンション上げて皆から来るであろう矢継ぎ早な質問疑問を笑って誤魔化そうとしていたのに。
カカシさんに出鼻くじかれた。
確か俺より後に部屋を出たはずなのに。瞬身でも使ったのか。
とにかく俺は皆の質問に、やはりグダグダになりながら「あ、うん。」とか「あ、いや。」とか「あはは。」としか答えれなかった。
思ったよりも皆が快くカカシさんとの交際を祝福してくれたから、なんだか泣けてきたくらいだ。
「あら。うみの先生泣いてるの!?あらら。」
そう言いながら、すずめ先生が綺麗なハンカチを差し出してくれた。
みんなは、「馬鹿だなぁ。泣く事ないじゃないか。」と肩を叩いてくれたりしたが
「お前にも春が来たかと思うと…しかも、あの写輪眼のはたけ上忍…。」
と、泣く奴もいた。
……俺って どんだけ哀れに思われてたんだろう…そう思うと違う意味で泣けてきた。あははは…
最悪だったのは、やはり受付所だった。
すっげぇ恨みの籠もったような目で、俺を睨みつけてくる女(ひと)、なんだか好奇心丸出しで俺を観察していく男(ひと)。様々だ。
みんな何か言いたげだったが、生憎と俺の横には今日に限って何故か三代目が座っている。だから誰も余計な事は何も言えない。
「イルカせんせー!!」
第七班が帰ってきた。
ナルトは相変わらずニヤニヤしながら両手を頭の後ろで組みながら入ってきた。
「はい。お願いします。」
スッと任務の内容等が書かれた書類を差し出したのはカカシさん。
「ご苦労様です。」
俺もスッと紙に手を伸ばした。
「!」
見てる。見てるんだけど。
部屋中の視線が俺に集中しているのが解る。…ナルトだけは1人「早く一楽行きてぇ〜!」とか言いながら明後日の方向を見ている。
三代目もチラチラ見てる。
サクラとサスケの様子もおかしい。
サクラなんて、ニヤケそうな顔を抑えつつって感じで自分の元担任教師と現上忍師を交互に視線だけ動かして見ている。
面白いか?俺の反応伺って面白いのか?
カカシさんは無表情に見えるが、その俺への視線の熱さは充分に伝わってきている。