※カカイル短編※ 

□桜の丘で〜カカシver.〜
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暖かな ある春の朝。
カカシは慰霊碑の前に立っていた。

今日は任務も無し。
七班の子供達は、何をして過ごすのか。

ねえオビト、最近の俺は だいぶ落ち着いた生活をするようになったんだよ?信じられる?

あの頃の俺って、ほんと可愛くなかったよね。今の七班の子供達を見ていると、つくづくそう思うよ。
1人…俺に似た奴が居るけどね…。お前と同じ「うちは一族」なんだけどさ。

ま、いいか。その話は。

オビトが生きていたら、彼もあの日に命を奪われていたのだろうか。
サスケの父の、あのフガクさんでさえ殺されてしまったんだ…。

「やだねぇ。こんな良い天気の春の日に…。」

そんな事を考えなくてもいいじゃないかと、カカシは誰にともなく呟く。

「そうだ。あのねオビト…。」

俺、好きな人が出来た。この俺が、だよ?
今なら お前の気持ちがよくわかる。りんを見るお前の気持ち。

…俺の好きな人は…同じ男なんだけどさ…。とても可愛い人なんだ。
とても…暖かで、春のひだまりの様な人。そして夏の太陽の様に明るく周りを照らす人。
俺には勿体無いような人…。て、まだ告白すらしてないけどね。
このまま片思いで終わるかもしれないし。
「…こんな日こそ、一緒に過ごせたら幸せだろうに。」

「じゃ、また来るよ。俺の恋も応援よろしく。」

ハハ…と笑い慰霊碑を後にした。

さて陽気もいいし、どこかで二度寝でもするか。
向かったのは桜が咲く丘。

桜の大木を見上げ、枝振りも良いし寝るには調度良い木の股も有るのを確認して、タンッと地を蹴り木の上へ消えた。


しばらく寝ていたカカシは太陽が随分高く上がっている事に気づいた。

『 ! 誰か来る。』

サクサクと芝を踏みしめ誰かが丘に上がってきた。
カカシは気配を消した。が、間の悪い事に目の前に式が飛んできた。

『チッ。』

すぐさま式を取り見てみると、どうやら三代目が自分を探しているらしい。
かと言って至極急ぎの様でも無さそうだが…瞬身でこの場を去ろうと印をくみかけた その時。

『 !え!?マジで!?』

丘にやって来たのは、カカシの想い人「うみのイルカ」だった。

そうっと息を殺し下を伺う。どうやら弁当を食べるらしい。
足を芝の上に投げ出し弁当包みを膝の上に乗せ、包みの結び目を解いていた。

これは話しかけるチャンス。
最近避けられてる気がしてならなかったが、思い切って声をかけてみる事にした。
彼が弁当の蓋をパカッと開ける。
自分で作ったのだろうか、彩りよく野菜も多めに入っている。
まさか誰かに作って貰った物ではないだろうな…。
不安な気持ちが俺を焦らせたのか

「1人で お花見ですか?」

つい上から声をかけてしまった。

しかし彼は気づいたようだが、こちらを見てはくれなかった。
弁当を見ながら「驚かさないでくださいよ」と笑っていた。

顔が見たいのに…。

わざと音が出るよう地面に降り立つと、彼に近づき肩越しから顔を覗き込ませるよう弁当を見た。近い距離なので彼自身の微かな匂いも鼻や脳を刺激する。

このまま抱きしめる事が出来たなら…。

自分にしては、やけに奥手だな、と可笑しくも有る。でもイルカ先生の前では いつもそうなってしまう。

大きめの弁当箱の中は本当に美味しそうで「先生が作ったの?」と聞けば「…はい。」と答えてくれた。
彩りも綺麗だと誉めると、それに気を良くしてくれたのか「カカシさんも少し食べますか?」と言ってくれた。
予想もしなかった事なので「え!?いいの!?」なんて驚いてしまったが「こんなので良ければ」と照れ臭そうに言う彼を見て、嬉しくてたまらなくなった。
先生の手作り弁当を食べれるなんて…。
彼の気が変わらぬうちに、素早く口布を下ろし「先生」と呼び、彼がこちらを振り向いた時に「嬉しい」と正直に伝えた。
お腹がすいて来たせいか肉団子が気になって、それを頂こうと思っていたら、イルカ先生が何やらわたわたしているのに気づいた。
どうしたのか聞くと、顔を見ても大丈夫なのか聞いてきた。イルカ先生だから勿論いいに決まっている。
肉団子を貰っていいか聞けば「どうぞ」と勧められ箸を貸して貰っていいか聞き、ついでに先生が食べさせてくれるのかと冗談半分、本気半分で聞けば彼の表情が硬くなった。
慌てて「冗談ですよ」と謝れば彼も安心したのか「あははっ」と笑い箸を渡してくれた。
ちょっと悲しい気分。でも当たり前か。こんな俺に「あ〜ん」と食べさせてやるなんて考えもしないだろう。

少し大きめの肉団子は本当に美味く、思わず「美味しい!!」と口に出して感激した。
すると「そうですか!」と嬉しそうに可愛い顔で言ってくるものだから「イルカ先生も、あーん。」と誘ってみた。
「え!?」と驚く彼に「自分で作ったものでしょ?」と、たたみ掛ければ、おずおずと口を開けた。

「美味しい物は分かち合わないとね。」なんて誤魔化してみたが、本音は こうして恋人同士っぽい真似事をしてみたかっただけ。
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