※カカイル短編※ 

□愛しい人
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時期外れだが、遠い昔のバレンタインデーを思い出した。


「カカシ、これ。」

りんがミナト先生とオビトにチョコを渡した後、最後に俺の所へ赤いリボンの包みを持って来たのだ。

すでに甘いものが不得手となってきていた俺は

「いらない。チョコでしょ?俺甘いもの苦手。貰っても困る。」

と素気なく断った。

「知ってる。だから甘さを抑えたのにしといたのよ?」

と、言われたが どうにもチョコなんぞ食べる気にならず

「でも食べたかぁないよ。」

と冷たく言い放った。

「じゃあ いいわよっ。誰か他の人にあげるからっ!!」

少し怒ったような顔をして、りんは漸く俺にチョコを渡すのを諦めて どこぞへ駆けて行った。

やれやれと思っていたら「カカシ」と、今度は先生が近づいてきた。

「カカシ。りんの気持ち、わかってるんだろ?貰っておやりよ。」

「貰っても、その後が困ります。」
俺は語り続けた。

「食べたくないから放っておく。すると溶けたり白っぽくなったりして余計口に入れる事が出来なくなる。結果 棄てなくてはならなくなる。最初から貰わない方がいい。」

「あのねぇ…。」

眉を八の字にして先生は笑っているような困っているような複雑な顔をしていた。


「先生。気持ちに応えてあげられないなら、最初から受け取らない方がいいと思います。」

そして俺は向こうで嬉しそうに、りんからの「義理チョコ」をニヤニヤしながら眺めているオビトを見る。

「…貰って嬉しい奴だけが、貰えばいい。」

「カカシ…。」

先生が、ふわりと笑い

「優しいね。オビトの気持ちも知ってるんだね。…うまく行かないものだねぇ?」

うふふと笑って俺の肩を2度3度、軽く叩いた。

「や、優しいとかっ、そんなんじゃないっ!!」
「うん うん。カカシは優しい子。」
「先生っ!!」
「あははは。」

幼くして階級は中忍には、なっていたが。今考えると、まだまだ子供だったんだなって思う。

オビトは自分から告白出来ぬまま逝った

先生は九尾から里を守り、生まれたばかりの我が子を残して逝った。

そして俺は、りんを守る事も出来ずに…今に至る。

「カカシさん。お待たせしました。」

俺は慰霊碑の前で愛しい人と待ち合わせをしていた。

暫くは、人を愛する事も無いかと思っていた。
オビトや、りんの叶わなかった「想い」を考えると、自分は愛する人を作っては いけない気がしていた。

でも…ごめん。
好きな人が出来た。

心から愛せる人。


もう…いいかな。俺にそんな人が出来ても。

「カカシさん?」
「あ、ごめんなさい。考え事していました。」

そう言いニッコリと微笑むと、イルカ先生も「そうですか。」と優しく微笑んでくれた。

「ねえ、俺の横に立って貰えますか。昔の仲間に先生を紹介したいんです。」

先生は一瞬「え?」て顔をしたけれど、なんだか照れ臭いな…と鼻を横切る傷をポリポリと掻きながら、赤い顔で並んでくれた。

「先生、オビト、りん。うみのイルカさんです。今…自分の命より大切な人です。」

自分の命よりって…と、横で先生が困惑していたようだが、本当の事だから仕方無い。

俺が先生の事を3人に紹介している間、先生は時おり俺の顔を見つめていた。
変な事するなぁとでも思っていたのかもしれない。

「さて、行きますか。」
「え?待ってください。カカシさん。」

動き出そうとした俺の腕を先生が掴んで止めた。

「まだ俺の…。俺の両親にもカカシさんを紹介させてください。」

キリッとした表情で、だけど赤く頬を染めて俺を見つめるイルカ先生に、胸がキュンとなった。

「先生の御両親っ!?」
なんか顔が熱くなってきたけど
今の俺、絶対顔が赤くなっている。

「やだなぁ、カカシさん。顔赤いですよ。」

あ。やっぱり。
イルカ先生たら、クスクス笑ってる。

「さあ カカシさん。」

そう言い俺の手を握り、手を繋いだままイルカ先生は御両親に俺の事を紹介した。

これって、まるで結婚報告みたいじゃない?


先生

オビト

りん

俺、もう幸せになってもいいのかなぁ

この人を守る事を誓うから。
愛しぬく事を誓うから。

これからも変わらず、皆に会いに此処へ来るから。


「行きましょうか。カカシさん。」
「うん。」


手を繋いだまま歩き出す。
いつまでも、ずっと繋いでいたいよねと囁けば


愛しい人が「はい。」と小さく頷いた。





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