※カカイル短編※ 

□子供は大人に適わない
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久しぶりの暗部での任務を無事終わらせ、俺は今 愛しのイルカ先生が待つアパートへ向かっている。

先生と付き合い始めてから、10日以上も顔を合わせて無いなんて初めての事だった。

取りあえず明日は1日休みを貰ったし、前もって先生には式を送っておいたから
無理でなければ先生も明日休みを取っているはず…。

今の時刻だと、一般家庭では夕飯が済み、風呂にでも入り始める頃か。
先生は御飯の用意をしてくれているはず。きっと俺の好きな秋刀魚の塩焼きと茄子の味噌汁だ。

「………。」考えたら胃のあたりがキュウッと締まる感じがして、今更ながら腹を空かしている事に気づいた。

早くイルカ先生の美味しい料理が食べたいよ。
そして勿論、風呂の後には先生自身も美味しく頂いちゃうんだから。

そんな楽しい事を考えていたら、あっと言う間にアパートの玄関前に着いた。

明後日からまた七班の子ども達とDランクCランクの日々だ。
今日は たっぷり大人の時間を楽しむぞ!!

ムフフ…なんて、玄関前で笑い声を漏らしながらドアノブに手をかけようとした その時。
カチャ…と静かに内側からドアが開いた。

10cm程の隙間から、イルカ先生の顔が見えた。


「カカシさん。妖しい気配がダダ漏れでしたね。帰ってきたのが、すぐにわかりました。」
「あ、うん。だって早く先生食べたくて、じゃなくて夕飯食べたくてっ。」

あははっと取り繕ってみたりしたが…あれ?
なんで俺、まだ玄関に入ってないわけ?

「カカシさん。ちょっと其処でお待ちください。」
「え?あ!イルカ先生!」

先生はドアチェーンも外さずに、また俺の前で戸を閉めて部屋の中に戻ったようだ。

なに?なに?
なんで部屋に入れてくれないの!?
誰か来ているのだろうか?

「………。」
うん。どうやら誰か居る。それも…2人?

カチャ…とドアが開く。

「カカシさん。入ってください。でも、玄関までですよ?静かにね。」

先生に従い、そっと入る。玄関の三和土に先生の足には小さすぎる忍者用サンダルが二足並んで置いてあった。これは…

「今、ナルトとサスケが寝室で寝ています。2人揃って風邪ひいたんですよ。」

ふうっ、やれやれ…って感じで先生が部屋の奥、寝室の有る方を振り向く。
その片手には小さな紙袋をぶら下げていた。

「なんで先生の家に居るの?」

ちょっとムッとしてしまった。


「あの2人、あの歳で1人暮らしですよ?たまたま俺がナルトの所に野菜のお裾分けを持って行ったから良かったものの…。」

ナルトが赤い顔をして、だるそうに出て来たそうだ。
熱を計れば38度有ったそうな。

「で、パジャマ持って俺んちに来いって誘ったんです。」

すると「あいつも咳してたなぁ…。」とナルトが呟いたそうで、ナルトを背負ったままサスケのマンションに行くと、彼もまた38度の熱が有り

「俺んちに来いサスケ。」と声かけたそうな。

「サスケの奴、最初は“大丈夫だ”とかナルトと一緒は嫌だとか言って動こうとしてくれなくて…。」

ハハッと困り顔で話すイルカ先生は、何故だか楽しそうにも見えた。

「…で?俺は先生と寝ていいの?いつもの如く。」

なんか少し面白くない。それが顔にも出ていたと思うが。

「いえ、すみません。今日のところは御自宅に戻ってください。
布団も無いし子供達が同じ寝室に居るのに一緒には寝れま…!んっ!」

話も終わらぬうちにイルカ先生の腰を引き寄せ片手で背中を抱き、噛みつくようなキスをした。

「ん、やめっ…。」

腹が立つ。先生に。ナルトに。サスケに。

執拗な口づけに、抱き締める俺の腕の力に、先生は眉間にシワを寄せ苦しそうに顔を歪める


思う存分 先生の口内を味わって、少しは落ち着きを取り戻せた俺は

「ごめんなさい。」

と、先生を抱き締めた。

「先生に会いたかったの。先生の御飯が食べたかったの。先生を抱き締めたかったの。」

先生は何も言わずに俺の腕の中にいた。

「帰ったら1番にキスしたかった…。」

「カカシさん。」

そっとイルカ先生が体を少し離し、俺を見る。

「俺の方こそ、ごめんなさい。…子ども達の事が気になって…。まだ言ってなかった。」

先生は申し訳なさそうな顔をすると

「お帰りなさい、カカシさん。」

と言って、両手で俺の頬を優しく包み、顔を近づけ

「ご無事で何よりです。」

と優しいキスをしてくれた。

嬉しい。それだけなのに、凄く嬉しい。

「今日は本当にごめんなさい。明日は2人の様子を見に、昼飯でも食べに来てください。熱下がってるといいけど。」
「しばらく先生は、おあずけ?」

先生は俺の顔を見るなり声を抑えて笑った。

「情けない顔になってますよ?まったくカカシさんもナルト達と変わらないんだから。」

クスクス笑う先生に「なんですか。俺が子供だって言うの?」と、ふてくされて言えば
「大きい子供ですよ。」と、片手で俺の頬を優しく撫でて微笑んだ。
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