※カカイル短編※
□匂い
1ページ/2ページ
黄昏時の木の葉の里は、西に傾く陽の光で深いオレンジ色に染められていた。
あちらこちらの家からは夕餉の仕度の煙りが棚引き、そろそろ家に戻らねば叱られるからと急いで駆け行く子供達の笑い声が通り過ぎる。
ここラーメン屋「一楽」でも、店主のテウチが準備万端で客が来るのを待っていた。
チャーシューを煮る良い香りが暖簾をくぐり抜け店の外まで漂って行く。
「あ〜駄目だぁ!!おっちゃん!!味噌チャーシュー大盛!!」
暖簾から黄色い頭を ぬっと出し、ナルトが胃のあたりを押さえながら入ってきた。
「せっかく今日は節約して家で御飯食べようと思ってたのにさぁ。おっちゃんがいい匂い漂わせるから…。」
「おいおい、俺のせいか?節約するんならチャーシューやめるか?」
ニヤリと横目で見れば
「う〜ん。どうしよう…。俺ってばマジ今月お財布ちゃんの中身が危ねぇし…。」
と、悩める少年が頭を抱えていた。
チャーシューやめろなんて、冗談で言ったのに。チャーシューくらい、この子にはオマケで3枚くらい付けてやってもいい。
そう告げようとした時、暖簾から客が顔を出す。
「ん〜いい匂い。腹へったぁ。」
「あ!!イルカ先生!!」
「お。拙かったかなぁ…出直すかっ。」
「先生〜!!ラーメン奢ってくれってばよぉ〜。俺 今月ピンチ。」
帰る振りして暖簾の外へ足を向けるイルカの腰に、ナルトが両手を回し抱きついてきた。
「なんだぁ?ナルト。お前 忍者になって少しは大人になったかと思ったが、まだまだだなっ!!」
「俺ってば、これからどんどん活躍して報酬も山ほど貰うようになるから、それまでラーメンは先生が奢ってくれよ。」
ニカッと歯を見せ笑うナルトに、ハァ〜っと深い溜め息を吐いたイルカは
「あと何年奢り続けなきゃいけないんだ?」
と苦笑いしながら黄色の頭に手を添えて
「味噌チャーシュー2つください。」
とテウチに指2本を立ててみせた。
「イルカ先生ってばよ〜、俺が火影になったら先生には毎日大盛食わせてやっからさぁ〜。」
ナルトの甘えた声に
「…テウチさん、ナルトのは大盛ね。」
「やったぁ!!さすがイルカ先生!!太っ腹だってばよっ!!」
はしゃぐ元教え子に、やれやれと言った顔をするイルカだったが、その後には満更でもない笑顔を浮かべるのであった。
カウンターに仲良く並んで座り、2人はラーメンが出来るまで親子のような会話をしていた。
イルカがナルトの脇腹を横から突っつき
「お前ちゃんと鍛えてるか?1人前の忍者になったからには、日々鍛錬は怠るなよ。いざという時に体が動かなければ命取りになるからな。」
と、忠告と心配とを織り交ぜて言えば
「大丈夫だってば!俺さぁ、サスケにだけは、ぜってー負けたくねえからよ。結構 頑張ってんだぜ!?」
と、拳をイルカの腕に押し当ててくる。
「へい!お待ち!!味噌チャーシューと味噌チャーシュー大盛だ。」
「うひょ〜!!うっまそう〜!!いっただっきまぁ〜っす!!」
「“美味そう”じゃなくて、うちのラーメンは美味いんだ!ナルト!!残さず食えよっ。」
「言われなくても食べるってば、おっちゃん!!俺ってば、おかわりするかもなっ!」
横で割り箸を割りながら「おかわりの代金は知らんぞ。」と言い放ちイルカがラーメンを食べ始めた。
ラーメンの良い匂いが店先に流れ出る。
「いい匂いがする。」
そう言って入って来たのは
「あ!カカシ先生!!」
「おや、ナルト。まぁたラーメン食ってんの?野菜も食えって言ったでしょ!?ラーメンばっか食べてると腹がプヨプヨになっちゃうよ。」
「じゃあ、イルカ先生もプヨプヨなのか?」
「ナッナルト!!俺は鍛えてるぞっ!それにラーメンばっか食ってねぇ!!」
「…イルカ先生。こんにちは。」