※カカイル短編※ 

□俺だけの貴方だから
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最初は  そう

貴方から

「好きなんです。ずっと前から。だから…。」

俺と付き合って貰えませんか?イルカ先生。

そう告げてきた。

断られるのを覚悟の上だったのか
その瞳には縋るような、どこか淋しささえ感じられた。

不思議だった。可笑しかった。解らなかった。

貴方になら 世の中の美しい女性誰もが、喜んで自ら身を捧げるだろうに。

だから俺は返事を渋った。
もしかしたら、からかわれているのかも。
もしかしたら、何かの罰ゲームで…?

だけど彼の気持ちは本物で
自分の気持ちも彼に惹かれているのに気づかされ 後日

「本当に俺なんかでいいんですか?後悔しませんか?」

と、少々自虐的なOKの返事を渡した。

その時の彼の喜びようが忘れられない。
目を大きく見開き、顔を赤くして「ホントに!?ホントに!?」と興奮し

「やったぁ!」

と両手を上にしたあと

嬉しい嬉しいと、今度は俺の手を両手で握り

「先生。ありがとう。本当にありがとう。」

と、綺麗な顔を紅潮させたまま言ってくれた。
そんな彼を見て可愛い人だと思ったし、嬉しくもあった。

そうして付き合い始め
躊躇いの有った肉体関係も思ったより早くに持て

半年経った今では同棲状態で
彼の里外任務が無い限り、毎日のように お互いの顔を見ている。

彼の 愛に包まれ

彼の 優しさに包まれ

彼の 甘い声に胸ときめかせ

そして
彼の 腕(かいな)に抱かれる

そんな 幸せな日々



ある日 夜遅く
暗部としての任務で里外へ行っていた彼が
音も立てずに帰って来た。

僅かな気配を感じた俺が玄関の方を見ると
靴も脱がず下向き加減に無表情な顔で佇む彼が居たのだ。

一瞬ギョッとしたが、すぐに彼に駆け寄り

「大丈夫ですか?」

と、少し離れた所から彼に声をかけてみた。

そう 少し離れた所から。

情けない事に、何故か近寄る事が出来なかった。
彼は此処に居るのに、彼の心は此処に無いようだったから。

玄関の廊下の照明を点け、よく見ると
珍しく暗部ベストに返り血を少量付けている。
だらりと下げた手には自分の暗部面。

「カカシ…さん?」

刺激しないよう近寄る。
面を持っていない方の手の指先がピクッと動いた。

更に近寄り、そっと顔を覗く。

「……カカシさん?」

彼は何処を見ているのか。心は何処を彷徨っているのか。

すると光の無かった瞳がスウッと動き俺の顔を捉えた。

「イルカ…先生?」


彼の固まっていた表情が、見る見るうちに和らぐ。

「カカシさん。大丈夫?」
「…イルカ先生……イルカ先生だ。」
「はい。イルカです。あの…大丈‥」
「イルカ先生」

彼が急に抱き締めてきたので俺の言葉は其処で終わった。

そして彼から伝わる安堵感に応えるように
俺も彼の冷えきった体を抱きしめてあげた。

暫く体を抱き締めあったあと
彼に風呂を勧め、軽い食事も作ってあげた。

少し心配で、浴室に向かって声をかけてみたりもした。

「湯加減いかがですか?」
「うん。気持ちいい。生き返ってきました。」

いつもの調子の会話にホッとした。
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