※カカイル短編※ 

□秋刀魚よりも茄子よりも
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昔から、何故か男女問わず どちらからも俺はモテた。

最近は歳も重ね少しは丸くなったつもりでいるが
若い頃の俺なんて自分だったら絶対惚れないだろう男だったと思う。

あまり喋らないし、愛想悪いし、優しくないし。

今でこそ大人として、少しは愛想笑いくらいするようになったけど
たまに「カカシって何考えているか分からない。」とか言われたりする。

だけど、そんな俺だが今だに不思議と女が群がってきたりする。
時には男からもアプローチされる。
忍びにしては、線の細い女顔な子とか
逆に色黒なマッチョ系とか

何だろう。大して愛想のない男なのにな、俺は。 と、思うのだが。

で、1番迷惑なのはプレゼントとか言うやつ。
やれ誕生日だ、やれクリスマスだ、バレンタインデーだ、ホワイトデー(主に男から)だ、と
欲しくもない高級なブランド品を押し付けて行くのだ。

はたけカカシくらいの人間には、下手な物は渡せない。と、世間は思っているらしかった。

そんな或る年のクリスマス。

行く先、行く先でブランド物の時計やら財布やら高級クナイやらを手渡され
正直うんざりしていたところへ

「あの……。」


と、恥じらいながら近寄る男が居た。

「 悪いけど、何も要らないよ。見てわかるでしょ?もう持ちきれないよ。」

両手にいっぱいの紙袋を見せつけ、嫌な顔をしてやった。

「そ、そうですよね!あはは。すみませんでした!」

年の頃は俺と大して変わらないような 鼻に傷のある その男は
無理に笑顔で そう言った後、見るからにシュンとして背中を見せて歩き出した。

「 …………。」

なに?この罪悪感。ちょっと大人気なかったかな。
見ると、彼の片手に小さな包みが握られている。

「ちょっとアンタ。」

彼はピクッと反応し、恐る恐る此方を振り向いた。

「 その大きさなら貰ってもいいよ。紙袋の中に入れて。」
「…え…。でも…。」
「早くしないと気が変わっちゃうかもよ。」

そう言うと、彼は申し訳無さそうに戻ってきて俺の持っている紙袋の中を覗き込み、そっと隙間にそれを入れた。

包装紙に包まれた縦7〜8cm、横9〜10cm、幅5cm程のそれには、大きさに見合わぬ ちょっとズシッとした重みがあった。

「…大きさの割に重みが有るね。何これ。」

よく見ると、木の葉商店街の包装紙だ。

「え!!今…聞いちゃうんですか?」

ちょっと照れながら焦る男に

「言いたくないなら、いい。」


と、少しイラつきながら背を向け立ち去ろうとしたら

「サ!サンマの蒲焼き!」

と、背後から呪文をかけるが如く男が大きな声で言った。

意味不明な“呪文”に思わずピタッと足を止め、振り返るなり「は?」と眉間に皺を寄せ、男を見た。

「はたけ上忍は、サンマがお好きと聞きまして…。生で差し上げても何ですし、缶詰ならば任務で家を空けていても日持ちするかな…て…。」

言いながら顔を赤くして下を向いていった。


てか サンマ。


「サンマ…て…。」
「 ! 」

ブフーッッ!!と盛大に吹いて笑い出した俺に、顔を赤くした男は戸惑っていたようだが

「あの、あの、缶詰沢山買いたかったんですけど、それ1つしか残っていなくって。」

と、聞いてもいない事を言い訳しだした。

クリスマスプレゼントに魚の缶詰貰うなんて初めてで、可笑しくてならなかった。

「いや〜。あ、そう。サンマの缶詰ね。クク…。」

男は再び赤い顔のまま下向き加減になり、そんなに笑わなくても…とでも言いそうな感じで、眉間に皺を悲しそうに寄せていた。

いけない。いけない。大人気なかったかな。

「大事に食べるよ。ありがとう。えっと…名前は?」

「 ! あ、うみのイルカです。」
「イルカ…」
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