※カカイル短編※ 

□恋文
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アカデミー教師 うみのイルカには、教え子を介して知り合いとなった上忍が居る。

こんな偶然でもなければ、一生まともな会話などする事もなく終わったかもしれない人。

その人は「はたけカカシ」と言う 里一番の凄腕上忍。エリート。天才忍者。


「あと木の葉一の業師とか、一番有名なのは写輪眼のカカシとか…。」
「お待たせしました。写輪眼が何か?」
「うわぁっ!!びっくりしたっ!」

イルカの絵に描いたような驚きように、カカシはクスクス笑い

「イルカ先生は、いつも面白い方だ。」

と 綺麗な片目を更に美しく細めた。

「あ、いえ、その…カカシさんを称える言葉や通り名を並べていたんで…はははっ。」

照れくさそうに頬を染め、鼻の傷を無意識にポリポリ掻いていると

「すみません先生、これから大事な会議が有るんだけど‥用事ってなんですか?」

カカシが申し訳無さそうに聞いてきた。

「あ!すみません!いえ、あの これ。」

イルカが愛用の肩掛けカバンから封筒を取り出した。

「これ‥すみません。また預かっちゃって‥。良かったら読んでやってください。」
「…いえ、こちらこそ。何でしょうねぇ?みんな。言いたい事が有るなら直接来ればいいのにね。」


知り合いだからって、先生使うなんて…と カカシも申し訳無さそうに頭を掻いた。

いわゆる恋文と言うやつなのだ。

「あ、俺は別に構わんのですっ!あははっ。彼女達にしてみても、カカシさんは恐れ多くて話しかけられないのでは!?」
「恐れ多い…ねぇ…。」

声をかける事も出来ない相手と“付き合いたい”と思うのも不思議なものだと カカシは首を傾げたが

「一応お預かりしますが、返事は無いものだと思ってください。手紙の主にも そう伝えてください。では。」
「 あ。 」

ドロンと煙を残し、カカシは姿を消した。

「またか…。会う気にもならないのかな。」

こんな生業だから、特定の人は作らない。とは言っていたが。

『結婚して家庭持って子供授かる忍者だって沢山いるのに…。』

イルカの両親も そうだ。

カカシほどの忍びとなると、考え方も違ってくるのか…。

カカシが消えた場所を暫く見つめていたが
手紙の主に断りの返事を言い渡さなければならない事を思い出し 大きく溜め息を吐いた。





それからも何度かカカシを捕まえては、その都度 頼まれ物や伝言を渡していたイルカだったが

ある日

「 手紙…ですか。」

「すみません‥。てか、俺だって渡しにくくなって来てるんですが。」

カカシは一つ大きく息を吐いて

「断りゃいいでしょうが。‥先生 優しすぎますよ。」

と 呆れて言うと

「…優しくなんて…。」

と、イルカが叱られた子供の様に下を向き、唇を尖らせたので

「先生、お腹すいてない?せっかくだから、夕飯一緒にどうですか。」

と、誘ってみた。

だいぶ前に 一度お近づきのしるしに、と飲みに行ったきりだった。

「 え。 ご飯ですか?いいですね。」
「ご飯って言うか、酒ですね。やっぱり。ははは。」
「酒!飲みましょう!」

前にイルカと飲んだ時も楽しかった。
多忙が重なり、再び誘う事もままならなくなってはいたが。

『先生の事は諦めていたけど‥またお近づきになれるかな‥。』

カカシは前からイルカに惹かれていたのだ。


その晩 二人は居酒屋の片隅で酒を酌み交わし
イルカが「何故カカシさんはモテるのか?」を懇々と説き 当の本人を困らせたり
カカシが「人が良すぎるイルカ先生」の当たり障りの無い欠点を言い 本人を軽く凹ませたりしていた。

そのうち 話は結局 「恋文等の受け渡し」について…と、なったのだが


「俺は やっぱり、一生懸命カカシさんへの気持ちを綴った彼女達の恋文を、これからも頼まれれば届けます。」
「面倒くさいでしょうが…返事は決まっているのに…。」
「いえっ!渡しますからねぇ〜!逃げるなよ〜っ。」
「はいはい。‥てか、先生大丈夫?飲みすぎた?送りますよ。」
「大丈夫ですっ!!」


その夜は

「カカシさんはズルいっ!!モテるし、いい男だし!!でも恋人作らないし!!」

と大声で責められ続け、カカシ本人は楽しそうに「はいはい。」と返事をしながら
酔っ払いイルカを右肩で抱え、家まで送った。


それからと言うものの、イルカが手紙や贈り物を届ける度に

「先生、今夜あいてる?」
「今度の週末飲みに行きませんか?」

とカカシから誘われるようになった。

ところが益々二人の仲が良くなったと言う事が知れ渡り
イルカは前にも増してカカシを恋い慕う女性から、仲を取り持ってくれだの手紙を渡して欲しいだの
頻繁に声をかけられるようになる。

「カカシさん…まじ恋人の1人くらい作ってくんないかなぁ…。」

いい加減 さすがのイルカもウンザリしていたし
最近では、手紙を受け取るカカシの表情も険しくなってきていた。

 
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