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□告白 4
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どうやら国境の戦地に、木の葉も上忍と暗部数名を増援させる事にしたらしい。
アスマさんやガイさん…そしてカカシさんが行くとなったら勝敗は決まったようなもの。
「よお、イルカ。」
混みあう前の受付に座っていると、アスマさんがやって来た。
「御苦労様です。」
「ん、俺も明日出発だ。一応 里に残る紅に、十班の奴らの様子も偶に見といてくれとは頼んだが…お前も見かけたら声くらいかけてやってくれ。」
「もちろんです。」
アスマさんは報告書を出すでもなく、ただ俺にそれを言いに来ただけのようだった。
「…実はな、カカシにイルカの様子を見て来て欲しいって頼まれてよ。」
「え…。」
「アイツも忙しくてな。俺がこっちに用が有ると言ったら、ついでにイルカが元気でいるか見て来てくれって。お前ら仲良かったよな?一緒に飲みに行ったりしてんだろ?」
「あ、はい。まあ…。」
顔を見せる事も出来ないくらいに忙しいのか?
ただ単に俺の顔を見たくないとか…。
アスマさんは「じゃあな。」と片手を上げて受付所から出て行った。
**
翌日。
部隊が戦地に赴く今日。
今の俺がカカシさんに出来る事は武運を祈る事くらい。
出来れば「御無事で」と面と向かって伝えたいくらいだ。
早朝 ひたひたと雨上がりの道を慰霊碑に向かって歩く。
父や母に知人の無事を頼むのも可笑しいものだが、1番効き目が有りそうで。
「…あ。」 先客が。
「イルカ先生。」
少し驚き、カカシさんが振り返る。
「…おはようございます。カカシさん。」
「おはよう。イルカ先生。」
ドキンと小さく胸が鳴る。
俺を見つめる目は、相変わらず優しく細められるから…。
「誰か近づいて来てるとは感じてたけど、イルカ先生なので驚きました。…俺的にはラッキーだったかな。」
ふふっと笑う彼から視線を外した。
なんで俺 赤くなってるんだ?
「あの…いよいよですね。」
「うん。出発前に先生の顔見れて良かった。絶対勝てそうな気がする。」
「気がする、なんて!木の葉が勝つに決まっています!!」
「イルカ先生…。」
カカシさんが居るんだから勝つに決まっている。
「!」
気が付けば、カカシさんが随分と近くへ寄って来ていた。
「イルカ先生。1つ御願い聞いてくれませんか?」
「なん…でしょうか?」
「…あの…ちょっとだけ…抱き締めさせてくれませんか?」
「え…。」
「無事に帰って来る自信は有りますが、もしもって事が有るかもしれないし。」
「そんな事 言わないでください!カカシさん達なら大丈夫です。俺信じてますっ。」
悲しくなりそうな気持ちを抑えたくて。
不安になる気持ちを鎮めたくて。
「!…イルカ先生…。」
俺からカカシさんを抱きしめた。
「先生…。」
彼の甘い声が、すぐ傍で聞こえ
彼の引き締まった腕が、決して華奢ではない男の…俺の背中に回されギュッと抱き締められた。
「…夢みたい。俺、先生を抱き締めてる…。」
俺の左肩に顎を乗せ、静かにカカシさんが言った。
俺より少し背が高い事を改めて実感する。
「イルカ先生…。もし無事に」
「“もし”なんて有りません。大丈夫ですからっ。」
すると、クスッとカカシさんが笑い、話し続ける。
「わかりました。…戦から帰ったら、また一緒に飲みに行ってくれますか?どこか賑やかな居酒屋でいいですから。」
「もちろんですっ。…祝杯あげましょうね。」
「…嬉しい…。」
俺を抱きしめる彼の腕に、今一度 力が加わったかと思ったら、ふわっと体を離し
「行って来ます。」
とニッコリ目を細めて カカシさんは その場から消えた。
「………。」
俺は馬鹿だ。
あの人の顔を見て、姿が消えた後になってから、ようやく自分の気持ちに気づかされた。
俺も…カカシさんが…
続