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□我も恋う〜ワレモコウ〜
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早く子を作れ、血を絶やすな。

二十歳になった頃 御意見番に、そう言われた。

今だに顔を会わせると「良い娘は居ないのか」「そろそろ所帯を持て」と急き立てられる。

カカシは、まだ二十代前半だと言うのに。

遊ぶ暇より任務に追われる日々の方が多いと言うのに。

『血を絶やすな…か。』

父は「白い牙」と言われ、他国にまで名を馳せた忍びだった。
その息子…自分は、今は亡き友から譲り受けた左目の力から
「写輪眼のカカシ」もしくは、千の術をコピーした「コピー忍者の はたけカカシ」と言われ、随分と里に貢献している。

『子どもか…』

そこでカカシは、今 隣に寝ている女の寝顔を見る。

彼女とは長く付き合うつもりも無く、愛が有るかと言われてもピンと来ない。

性格も あっさりとした女なので付き合いやすく、身体の具合も良いから関係が続いているだけだった。

しかし彼女は上忍で有り、忍術体術にも長けていた。容姿も申し分ないだろう。

御意見番に従うわけではないが、子どもの1人でも作っておけば今後煩わしい小言を耳にしなくても良いかも。

『あ〜…でもなぁ…』

家庭を持つのは、どうだろう?
彼女の事は好きではあるが、愛しているわけではない気がしていた。


そんな事で一緒になっても、上手くやっていけるかが心配だった。

しかし『一緒になっちゃえば、なんとかなるかも。』と、思いが辿り着き
朝起きて任務に出る前に「プロポーズ」なるものをしてみようかと考えた。

どうせ自分は誰の事も愛せない気がしてならなかった。
今まで誰と付き合っても、誰と寝ても、心を動かされる相手はいなかった。
自分は、どこか冷めているのかもしれない。

だったら いつ誰と一緒になっても同じ事。

自分なりに一大決心をすると、目を閉じ眠りについた。


***


「え?長期任務?」

朝 彼女からコーヒーの入ったマグカップを貰いながら、カカシは目を大きく見開いた。

「そうよ。1年。でも必ず生きて帰るから、待っててよカカシ。」
「え?…あ、うん…。」
「あら!本当に待っててくれるの!?1年の間に、また女をとっかえひっかえなんじゃない!?」

そう言われたうえに軽快に笑われた。

「…ふぅん。俺って信用無いんだ?」

言われても仕方無いとは思いつつ、仮にも求婚しようかと思っていたのに面目丸つぶれだ。

「待ってて欲しいけど…貴方は無理ね。いいのよ、べつに。また誘うから。」

離れるつもりは無いらしい。それならば…

「待つって言ったら?」

「…本気?待っててくれるの?」
「うん。…待って…みるよ。」
「みるよ、かぁ!!」

綺麗な顔でアハハと、また笑われた。

「…そうね…賭けてみようかしら?貴方が待てるかどうか。」

どうやら「一緒になろう」と伝えるのは、彼女が里に無事戻って来てからでも良い気がしてきた。
そう考えを改めると、不思議と肩の力が抜けた。

「1年後、里に戻るのが楽しみだわ。その間に浮気は許せても本気の相手は作らないで欲しいわね。」

その点は大丈夫だとカカシ自身も思った。
本気になる相手など、この先も出来る気がしないから。

「監視役でも置いていこうかしら?」
「 え? 」

女はクスッと意味ありげにカカシを見たが「冗談よ。」とテーブルから離れ、帰る支度を始めた。

「 里を出るのは、いつ?」
「えへへ。実は2時間後!だから昨日カカシに“おねだり”に来たってわけ。」

カカシは少し驚きつつも、彼女の無事を祈り

「待っているから。」

と言葉をかけ 玄関先で、その後ろ姿を見送った。

「……1年後には祝言って奴か…。」

さて、それまでに何人の相手が出来るかな。と、不埒な事を考えながらドアを閉めた。
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