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□我も恋う〜ワレモコウ〜A
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ある日 イルカのもとへ式が飛んできた。
それは早朝に任務から帰還したばかりで、ぐっすりと布団の中に沈み込んでいるときだった。
コンコンッと小さく窓ガラスを叩く音に起こされ
『…これは式鳥の音…』
もそもそと布団から這い出て、ぼんやりとした頭と寝ぼけ眼で窓を開けると
白い小鳥が部屋に入り、イルカの目の前で紙に変わった。
それは幼なじみの朝風と言う くのいちからだった。
『あさかぜ…?』
どうしたのかと内容を確認する。
それには、イルカに任務依頼を出して置いたと言う事が書かれてあった。
朝風は今日、長期任務の為に1年ほど里を離れるらしく
その間に、恋人の「世話係」と称して悪い虫が付かないよう見ていて欲しいと言うものだった。
『なんだこりゃ…。』
ベッドに半身を起こしたままでいたイルカは、フンッと鼻から溜め息を出し再びシーツの上に倒れ込む。
朝風は2つ年上で、綺麗で頭も良く今では特別上忍として里の為に働いている。
小さい頃から家が近所だったので、イルカには姉貴的存在の友人だった。
「イルカは顔も性格も悪くないのに、どうして彼女が出来ないのかしらねぇ?」
と、最近では会う度に心配されている。
『長期任務か…。初めてだよなぁ朝風。…そっか、恋人いたんだ。』
しかも 余程モテる男で、あの朝風が監視を付けたくなる程の輩らしい。
『誰だ?上忍かな。』
まずは昼には出勤して、任務受付に確認に行く事にした。
それまで もう少し時間が有る。
再び瞼を閉じ、イルカは眠りについた。
***
「うみのイルカ?…あ〜あ、これだ。はいよ、任務依頼書。」
「あ、はいっ。」
依頼書を手に取り、戻ろうとしたら
「あ、ちょっと待て!これもだ。依頼人からの手紙付きだ。」
「…手紙…」
白い封筒からは、僅かに朝風のチャクラを感じる。
『俺しか開けれないようになっている…』
外に出たイルカは、依頼書と封筒を手にしたまま近くの遊歩道のベンチに腰掛けた。
依頼書を胸の巻物ポーチに大事に仕舞い、封筒を開ける。
手紙の最初には元気?とかなんとか挨拶文が綴られていた。
そして肝心の依頼した任務について、今朝の式への補足が書かれていた。
『なになに…彼の周りには女が絶えない…か。てか、お前“彼女”じゃないのか?』
ん?と思いつつ次を読む。
『そんな彼が長期任務の私を待つと行ってくれたから、少しは期待してみたいと思う…って…大丈夫か?』
そして手紙を読み進めていく先に、思わず「え?」と固まってしまった箇所が有った。
「え〜!?女体変化!?」
女好きの彼の所に男が世話(監視)しに行っても心底嫌がるに決まっているから、との事。
「そりゃ、俺だって嫌だよな。」
可愛い女性がいいに決まっている。
手紙には、もし女体化したイルカに手を出そうとしたら、その時は本来の姿に戻っても良いと書いてあった。
「…女体化か…。」
あまり自信は無かった。今の面影のままで変化するのだから、大して美人にはなれないって事だから。
『 あ。 だから“俺”なのか!?』
納得しながらも反面少し腑に落ちず、ふてくされつつも先を読む。
その“彼”の住所と名前が記されてた。
「なんだ、俺んちから近いじゃん。…俺と違って高級マンションだし…。はたけカカシか。へえ。」
イルカの動きが止まった。
「はた‥はたけカカシって…写輪眼の…っ」
其の名はイルカでも耳にした事が有った。しかも憧れの人なのだ。
「すげっ朝風、はたけ上忍と付き合ってんだ!?」
ゴクリと喉を鳴らし、いつか見たカカシの姿を思い出していた。
遠くから見ただけで有ったが、背もスラリと高く
「オーラが違うっ!」と、思ったものだ。