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□我も恋う〜ワレモコウ〜C
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任務1日目の花は、カカシの部屋で一緒に肉まんを食べた後
本の整理や部屋の掃除を手伝って終わった。
夕飯の支度は どうするか訊ねると、友人と居酒屋で会うからと断られた。
「ちなみに女も来るけど、ガイと猿飛アスマと夕日紅だよ。」
と、聞きもしないうちに教えてくれた。
「明日から又しばらく任務続きだからさ。気が向いた時だけでいいから昼間に掃除くらいしておいて貰うかな。」
そう言い、合い鍵を渡してくれ
「ま、当分夜は大人しく1人でいるよ。」
噂ほど女をとっかえひっかえなんて無いから。と、ため息を吐く。
「俺って、そんな風に見える?」
カカシが そう聞いてきたので、返答に困っていたら(だって どう見てもモテモテだろっ)
「…そ。やっぱそう見えるみたいだね。」
と、クスッと笑っていた。
カカシから残った肉まんを持たされ、すぐ近くの“花の部屋”へ向かう。
小綺麗な1Kだった。
少しずつ必要な物を持ち込もう。
この部屋にカカシが来るとは思えないので、カーテンを閉めている間は変化を解く事にした。
「 解っ!」
白い煙と共に、イルカ本来の姿が現れる。
「 よしっ!」
何気にズボンの前を握り確認もする。
明日からカカシも任務の日々だ。
日によっては3〜4日戻らない日も有るだろう、いや それ以上の時も有るはず。
『え〜と…しばらく部屋に戻れそうもない時は、観葉植物を預かる…と。』
向こうでメモしてきた紙を壁に貼る。
明日から自分も、カカシが任務に行ってる間は受付業務や三代目の小間使いをする事になっている。
そして時間の有る時は教職員になる為の勉強もしたい。
三代目にアカデミーで子供達を教える立場になりたいと気持ちを伝えた時
「そうか。イルカなら良い教師になりそうじゃの。」
と、賛成してくれた。
それにしても
「………1年間も写輪眼の…。」
彼に女を近づけないなんて、無理な話かもしれない。
なぜならカカシは朝風の事を“特別な人”とは見ていないようだから。
『どーすりゃいいのかなぁ…。』
やれるだけの事は、してみよう。最悪報酬無しでもいいや。
一応気前よくCランク扱いの任務だが、どうにも上手くこなせる自信が今ひとつ無い。
取りあえずカカシ専属家政婦と言ったところか…。
“花”の為に用意されたベッドに横たわり、イルカは うつらうつらと目を閉じていった。
***
夕べは、服を着たままベッドの掛け布団の上で寝てしまい
目が覚めたのは、その日が終わろうとする時間の1歩手前だった。
それでも腹が減っていたので肉まんをレンジで温め、3個も食べてしまったので今朝は胃が凭れている。
カカシは9時くらいには上忍待機室へ向かうはず。
いや、写輪眼は暗部所属と言うのは誰もが承知。暗部待機室に向かうかも…(場所は不明だが)
「 ! て、やべっ!!三代目の書類整理!!」
慌てて身仕度をし、部屋を出る。
面倒くさいが女の姿で部屋を出て、マンションを出た先の門を曲がった物陰で変化を解く。
そうしてイルカのややこしい日々が始まった。
***
カカシの部屋へは時間が空いた時に伺い、軽く掃除をしたり
“ウッキーくん”と呼ばれている観葉植物に水やりをしたり
部屋で待機しているカカシの忍犬(1匹時には2匹)の頭を撫でたりしていた。
忍犬に関しては、何も世話など必要ないようだが人語も理解し喋るので
「腹すいてないか?」 「退屈してないか?」と 動物好きなイルカは、つい話しかけ構ってしまうのだった。
カカシとは、ほとんど顔をあわす事も無く 心配していた女の影も今のところ気配も感じられなかった。
『俺に気づかれる事なく上手くやっているのかなぁ…。』
ふぅ…と、ため息を吐くイルカの傍に
ビスケと言う名の忍犬とアキノと言う名の忍犬が近寄って来た。
「花 どうした。」
「腹でも減ったか?」
イルカは犬達に視線を落とし
「大丈夫だよ。ちょっと考え事していただけ。」
と ニッコリ微笑んで見せた。
ビスケもアキノも安心したのか、カカシのベッドに上がり横になる。
カカシの忍犬達は“花”が好きだった。
たまにカカシが部屋に連れて来る女達は犬達が部屋に居ても大して気になどしてくれない。
ただ花に対して腑に落ちない点が1つ有った。
「じゃ、オ…私は帰るわね。はたけ上忍は夜には戻られるのでしょう?」
「そうみたいだ。」
「遅いようだがなっ。」
「これ。おむすび3つ作ったの。テーブルの上に置いておくから。」
カカシは1週間の任務に出ていた。
花は2匹の頭を撫で「これから受付に入らなきゃ。」と部屋を出て行った。
「頑張れよ、花。」
「頑張れ ワンッ!!」
花の姿が扉の向こうへ消えたあと、アキノがポツリと言った。
「不思議だなぁ。なんで花は女の姿で居るのだ?」
「うんうん。花はオスだよなぁ。オスの匂いなのに女の姿。」
「趣味なのかな。」
「趣味なのか?」