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□我も恋う〜ワレモコウ〜D
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自分の部屋から見た花の部屋は、位置的に此処だ。このドアだ。

呼び鈴を押してみるが、返事もなければ気配もしない。
どうやら留守のようだ。

カカシは、やや暫くドアの前に佇み考えていた。

今日 火影室から出て来た「うみのイルカ」

吸い寄せられるように彼から視線が離せなかった。

あれは何かの術によるものか?とも思ったが、そうでもないようで…

「…………。」

自分は何をしに来たのか。
同じ鼻傷を持つ花に、何を聞くつもりなのか。

もしかして、花は…




カカシは自分のマンションへ戻ってきた。
今夜 花は顔を出すだろうか。

「おかえり カカシ。」

「ただいま。ウーヘイ。」

忍犬の頭をひと撫でし、ため息を吐いてベッドに腰を落とす。

「カカシ 今日は女の所へ行くのではなかったのか?」
「ウーヘイ…」

苦笑いをしながら忍犬を引き寄せ、軽く抱きしめる。

「今日は そんな気分じゃなくなった。…ああ…そうか。今朝 花にも宣言したから、今日は もう来ないね。彼女。」
「彼女ではない。彼だろ。」
「……え?」

体を離しウーヘイを見つめて、カカシは二度三度瞬きをした。

「花はオスだろ?カカシ。オスの匂いがするぞ。」
「オスって…。」




***


イルカは結局その晩は、花のマンションへは戻らなかった。

どうせカカシは遊郭だ。
丁度良い。すぐに顔を合わせなくても良かったから。

明日はカカシが留守であろう昼間に掃除でもしてこようか。
それとも部屋には暫く行かないで、花の部屋から様子を見ていようか。

『…でも急に顔を出さなくなるのも変だよな…。』

カカシが帰宅して掃除をした様子も無ければ…そしてそれが続いたら…

何か聞かれても、しらを切り通してみようか?

『あの人相手に、それは無理かな。』

いざとなったら正体ばらしても良い事になってはいるが…。

男と分かって殺される訳でも無し(…多分)
はたけ上忍の御希望とあらば、花の姿のままで居ても良いのだ。

あれやこれや考えた末、そう開き直ると

「腹へった〜。」

急に空腹感を覚え

「よし!一楽に行こうっ!」

ガバッと起き上がり、自分の部屋を後にした。



***



翌朝 カカシは自分の部屋から花の部屋の窓を、両目を開けて見ていた。
部屋には誰も居ないようだった。

忍犬の話では昼前には この部屋へ来て
軽く拭き掃除やベッドメイクをして行くようだ。

『聞きたい事も有るし…。あのイルカって中忍にも…』


また会いたいのだ。

「 ………。」

ため息を吐き、窓から離れた。





イルカは自宅から、花の姿でカカシの部屋へ向かった。
昼近くには部屋にカカシは居ないので、いつも今くらいの時間に部屋へと向かうのだ。

サッサと掃除でもして部屋をあとにしよう。

そう考えながら、合い鍵でドアを開けて部屋へと入る。

しん‥とした部屋には、今日は忍犬も居なかった。 少し寂しい

ふと見ると、テーブルの上にマグカップが下げもせずに残されていた。

『珍しいな。いつもシンクには下げてあるのに。』

見ると半分ほどコーヒーも残っている。
よほど時間が無かったのか、下げるのを忘れたのか…

マグカップの前に立ち、暫し考えてカップを手に取ろうとした  その時。


「まだ飲んでるから。」

「 !!! 」

背後にカカシが立っていた。しかもヒタッと体が触れそうな距離で。

驚きはしたが声は出さずに堪えた。しかし緊張のあまり、体が動かない。
部屋には誰も居なかったはずなのに。

「どうしたの? 花。 挨拶も出来なくなった?」

スッと横からカカシの締まった腕が伸びてきてマグカップの位置をずらした。

「……あ‥おは‥よ‥ご、ございます…。」

後ろを振り向くのが怖かった
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