∴季節物・誕生日∴

□2012年 イル誕
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受付に座っていると
時々任務報告書と共に、何故か任務先からの土産物を貰う事が有る。

お前の人徳だよ。と、言ってくれる人もいれば
お前が物欲しそうにしてるからだよ。と、笑ってからかう奴もいる。

そして今日も。

「イルカ先生、これ。依頼人から貰ったんだけど、俺甘いもの苦手で…。先生お好きでしょ?」

そう言いながら報告書よりも先に饅頭の箱を差し出したのは、はたけカカシ上忍だ

「カカシさん。報告書、先に出してくださいよ。」

と笑って言えば

「あ、すみません。」

と、ほんのり頬を染めて、もう片方の手に握られた報告書を慌てて出した。
俺は内容を見て不備がない事を確認し判を押す。

「饅頭ありがとうございます。皆で茶菓子に食べますね。いつもすみません。」
「いえ。気にしないで。」

ニッコリと笑いスッと去って行くカカシさんはカッコ良くて
周りに居た くのいちなんか、目をハートにして姿を見送っている。

「はたけ上忍、カッコいいよなぁ。俺も ああなりてぇなぁ。」

同僚までもが溜め息を吐く。

「イルカは いいよなぁ。懇意にして貰ってんだろ?」
「え?そうでもないさ。顔を合わせば挨拶する程度だよ。」
「え!?そうなの?に、しては結構な頻度で土産物とか貰ってないか?」

「え?…あ、うん。…かな?」

そうなのだ。
カカシさんは、結構 俺に物をくれる。
依頼人から貰ったと言う品も有れば

「美味しい酒だったので、先生もどうかなと思って。」

と、わざわざ買ってきてくれた事も有るのだ。
教え子が御世話になっているのだから
俺の方が酒の1つでも渡さなきゃ、なのに…。


***


受付業務も終わり、同僚達3人で飯を食って帰る事にした。

注文をし、まずは空腹を少し紛らす為に、先に出された水を飲む。

「そう言えば、イルカ来週誕生日だよなぁ。俺と3日違いだろ?」「そうそう。よく覚えてたなぁ。俺の方が3日若い!」
「何言ってんだよ。どうするんだ?いつも一緒に祝ってくれるナルトも居ねえだろ?」

そうなのだ。ナルトは今、自来也様と里外だ。

「別に どうって…。なんだよ、人を寂しん坊みたいに。」
「週末だろ?俺、彼女が煩くて。週末は一緒に過ごすって決めてるんだ。」
「俺も24日から里外任務だし。」

気を使ってくれるのは嬉しいが、自分自身はと言えば、あまり誕生日に拘りは無い。
別に1人で飯食って風呂入って寝るだけの、普通の1日で良い。
「子供じゃないんだし大丈夫だよ。ありがとな。」

そう言いながらも頭の中では

『ショートケーキでも買って食うかな。』
と、寂しい事を考えていた。

食事を済ませ、帰り際には

「早く彼女作れよ!」

なんて、からかい半分 本気半分に言われながら帰路についた。

神様。今年の誕生日プレゼントには「彼女」ください!
そう願わずには、いられないぜ!ははは!

…なんか急に寂しくなってきた。



***


5月26日 土曜日 である。

今日もアカデミー勤務後に受付に座る。
いつもと変わらない1日。

これで良いのだ。
普通で良いのだ。
俺は多くは望まないのだ。

でも神様。彼女ください。

受付所にチラホラ人が来始める。
変な話、誕生日である今日に限って誰も何もくれない。
それを期待するのも変だが、今日くらい気持ち良く貰うのに…。
昨年は、どうだったかな。

そう考えた時、ふと思い出した。
あれ?昨年は貰ってるなぁ。
誰からだっけ。

「先生。はい、報告書。」

顔を上げて、目の前に立っている人物を見て思い出した。

「あ。カカシさんだ。」
「?はい。はたけカカシです。」

え?って顔したあと、にっこり笑っている。

「 !て、カカシさん!?す、すみません!あ、報告書ですね、はいっ!」
あ〜ビックリした。
偶然にしても、タイミング良すぎだろっ。

そう。そうなんだ。
昨年カカシさんから…え〜と…なんだっけ。…!酒!酒だ!
それこそ、高い酒を「美味しかったから」と、わざわざ俺なんかに買って来てくれた、あれだ!
偶然とは言え今日は誕生日だったと、帰宅してから思い出したのを覚えている。

「はい。御苦労様でした。」

ポンッと判を押し、顔を上げると

「先生、今日は何時まで?俺このあと予定無いし…。飲みにでも行きませんか?」

と、唐突に誘われた。

「え?あ、いや、あの、え?」
「駄目ですか?飲みに行きたいな〜とは思うんだけど、知ってる奴らは里外行っちゃってるし…。」
「…はぁ…。しかし…。」

チラッと時計を見ると、終わる迄あと1時間半も有る。
せっかくの上忍様からのお誘いなのに。
しかもカカシさんからの。

て、あ。今日 俺 誕生日。

「…終わるの待ってますよ。俺 暇だから。」
「え!いえ、まだ1時間半も…。」

慌てる俺の手に触れて

「だーいじょうぶ。時間潰すのは得意だから。上忍待機室に居ますから、来てくださいね。」

そう言い、ニッコリ微笑んで

「じゃ。」

と片手を上げて部屋を出て行った。

昨年に引き続き、なんという偶然!
なんだか毎年カカシさんに御祝いして貰ってる気分になる。
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