∴季節物・誕生日∴

□2013年 イル誕
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「え!?今 欲しいものですか?」

ある日
俺は いつも飲みに誘ってくれるカカシさんと
いつもの居酒屋、いつもの席で
いつもの如く他愛ない話をしていた。

「もし願いが叶うなら、先生は今 何が一番欲しいですか?」

唐突に そう聞かれ、うーん…と考えた。

「 あ!米が無くなりそうなんで、米が欲し…」
「 却下!!」
「 へ!? 」

何故かカカシさんは不貞腐れたような顔でクイッとお猪口を口にし、反対した。

「夢がないなぁ、イルカ先生は。何かこう…他にも有るでしょ?」

夢が無くて悪うございました。

他に…て言われても…
またまた うーん…と考える。

常日頃、同僚達から「お前って物欲無いよなぁ。」と笑われている俺だ
こんな質問はホント困る。

「今一番欲しいもの…“時間”かなぁ。最近アカデミー以外の仕事も増えてきて…」

今日こうしてカカシさんと飲むのも久しぶりで…

「違う 違う。」
「 へ!? 」

またまた却下されたようで、カカシさんは溜め息を吐きながら
下を向いて頭を横に振った。

「それは俺も分かりますが‥なんて言うかその…」

指先で空の猪口を弄びながらカカシさんは

「て、あ!すみません!気が付かなくて!!」

慌てて彼の猪口に酒を注いだ


「…何かこう…人からプ‥プレゼントされたら嬉しいな〜とか思うもの‥ですよ。」

注がれた猪口の酒を見ながら、カカシさんが少し遠い目で言った。

人から貰うものか…

「 ! おれ、この前 生徒から四つ葉のクローバーを貰って嬉しかったです!」

カカシさんはキョトンとした顔をしていたようだが、お構い無しに話した

「“先生が任務に出ても怪我しませんように”って言って…」

カカシさんは“仕方ない人だな”って感じで少し困ったような微笑みを浮かべていた。

「あ…すみません。え‥と。欲しいものですよね。」
「生徒の話になると、キラキラした顔になるよね先生は。」

うふふ と楽しそうに笑われ、ちょっと恥ずかしくなる。

「えーと‥そうだなぁ…」

テーブルの上の焼き鳥を見つめるが、それが答えを導いてくれる訳もなく。

「カカシさんは?」
「 なに? 」
「カカシさんが今一番欲しいものってなんですか?」

そう質問を返すと

「 …… 」

目を丸くして俺を見ていたかと思ったら、急にカァ〜ッと顔を赤くして

「 …秘密です… 」

と俯いた。

何だろう!?人に言えない何かかな?
今読んでいる十八禁な本より 更に凄い本とか!?

まあ、いいだろう。彼の答えは保留にしておこう


と、そこで 俺達のテーブル横を 数人の男女が帰り支度をしながら
ワイワイと通り過ぎて行った

「奥の座敷で合コンしていたんですねぇ。どおりで賑やかだった。」

ハハハと笑った俺とは裏腹に
カカシさんは毛の先ほども興味が無さそうな顔で、小鉢の鹿尾菜(ヒジキ)を突いてた。

「 あ。カカシさん、俺今一番欲しいもの分かりました。」
「 え!?なに?」
「 彼女…欲しいな。忙しい俺の事を理解してくれる彼女。」

すると今度は呆気にとられたような顔をしたあと

「 却下!! 却下 却下!!」

と、真っ赤な顔して立ち上がり 何故だか怒りを露わにしていた

なんなんだ、この人は いったい

その後 考えに考え、“一番欲しい”訳では無いにしろ
今話題の「切れ味抜群、超軽量クナイ」の話になり
所持しているだけで格好いいですよねぇって話に落ち着いた。

カカシさんは満足そうな顔で帰って行ったが、俺的には今日の飲み会は少し疲れた。



それから一週間後の 5月26日

赤いリボン付きの桐の箱に入った“軽量クナイ”数本と
火の国一番の米「火乃國光」十キロが

職員室の俺の机の上に置かれていた








 

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