∴季節物・誕生日∴

□2014年 イル誕
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案外 人の誕生日なんて 覚えちゃいないものだよな。

例えば星座占いなんてものの話をした時
「お前何月生まれ?何日?」なんて聞かれてもさ
その場限りの事だから、また違う日に生まれ月の話になっても
「あれ?お前何月生まれだったかな?」なんて、全然覚えちゃいないものなんだ。

だけど恋人同士なら話は違うだろうし、親兄弟で有れば決して忘れるはずの無い日ではあるよな。

誕生日には御祝いのケーキを買ったりして、いつもよりテーブルの上が豪華だったりするものだ。

「ふふふ…」

思わず昨年の誕生日を思い出した。

こんな俺にも、祝ってくれる“家族”のような奴が居たのだ。

ナルトだ。

ナルトだけは俺の誕生日を覚えていてくれた。

なけなしの下忍の報酬から、ショートケーキを1個買ってくれて
それに小さなロウソクを1本立て(しかも普通の白いロウソク・笑)

「せんせぇ、おめでとうだってばよ!!」

なんて いつものナルト口調で言ってくれたのだ。

俺はと言うと
自分の誕生日なのに、ナルトの為に自費で寿司なんて取ったりして。

「やった!!寿司だってばよ!!すげぇ!!」

大喜びするナルトに心の中で『おいおい、いったい今日は誰の誕生日だ?』なんてツッコミを入れたんだっけな。

「 ハハ… 」

そんなナルトも 今は修行の旅に出ている。
あの“伝説の三忍”の御一人、自来也様と一緒にだ。

『我が教え子ながら、たいしたものだ。』

今頃あいつは修行に夢中で、今日が俺の誕生日だったなんて覚えちゃいまい

まあ それもいいさ。
1人は慣れている。

「にしても、やっぱ夜風が身にしみるぜ。」

誕生日にと、買った缶ビールを袋の中でガサガサ言わせながら歩を進めると

「 ん? 」

途中 知った顔が前方に見えた。

「あれは…え?カカシさん?」

向こうも此方を見てニコッと笑いながら近づいて来る。

「カカシさん、ご苦労様です!任務帰りですか?」

彼は背嚢を背負っていた。

「はい。…報告書を出しに行ったら、イルカ先生は帰られたと…。」
「え?俺に用でしたか!?」

よく見ると、カカシさんの手には白い手提げの紙袋。

「あ、これ…さっき商店街のケーキ屋で買ってきました。」

そう言ってニコニコしながら、彼は紙袋を目線まで持ち上げた。

「イルカ先生、今日誕生日でしょ?」

 え?

トクン と胸が小さく跳ね上がる。

今日が俺の誕生日だと知っている人が居た。

しかも それは憧れの上忍師

「え‥と。あの…なんで…。俺 教えましたっけ?」

戸惑う俺に、カカシさんは笑みを和らげ
「ナルトがね…」と話し出した。

「ナルトが旅に出る前に話していたんです。今年はイルカ先生の誕生日祝えないなぁって。」
「ナルトが…」

あいつ…

「だから、先生の誕生日っていつなんだ?って聞き出しました。」
「はあ…。」

カカシさんが更に近寄る

「これ、ケーキと寿司です。食べてください。」
「あ、でも…だからと言ってカカシさんがわざわざ俺に…」
「ナルトの代わりに持って来たんじゃないですよ。俺がプレゼントしたくて買ってきたの。」

カカシさんが? 俺に?

ああ そうか。 彼は優しいから。
ナルトに祝って貰えなくて寂しいだろうと思ってくれたのだ、きっと。

「優しいですね、カカシさん。ありがとうございます。」

ふふふと笑って紙袋を受け取ろうとすると

「寿司…俺の分も入っているんです。腹減ったんでついでに買いました。」
「あ、え?」
「折りを二つにって言ったのに、間違って二人分の大きい折りに入れられて…」

ちょっと分けて頂けるとありがたいです、とカカシさんが恐縮していた。

「そうですか!では、もしこのあと御用事が無ければ…宜しかったら俺んちで一緒に食べませんか?」

なんて、我ながら大胆な提案をしてみる。

するとカカシさんは「え?」って顔をして、次に照れくさそうに伏し目がちになり
「いいんですか?」と、小さく呟いた。

「ぜひ!!誕生日に誰かと一緒って嬉しいです!!しかもカカシさんだったら大歓迎ですよ!?」

ちょっと大袈裟かな?って程に喜びを露わにして言い、ワハハと笑うと

「じゃあ、遠慮なく。お邪魔させて頂きます。」

カカシさんは目を細めて喜んでくれた。
喜ばしいのは、こちらの方なのに。

「俺んち こっちです。行きましょう!」

いや、本当に嬉しいんだ。
誰かに祝って貰えるなんて思ってもいなかったから

『これじゃビール足りねぇな。』

祝ってくれる相手は上忍だ。
大事に取っておいた、頂き物の高い酒を箱から出そう!!封を切ろう!!

「カカシさん、ありがとうございます。俺、本当に嬉しいです。」

徐々に込み上げてきた喜びや楽しさが、ダダ漏れになった顔だったのか

「俺も嬉しいです。…そんなに喜んでくれるなら、また来年も御祝いにやってきても良い?」

カカシさんが嬉しそうに頬を染めて言ってくれた。
来年にはカカシさんだって忘れてるかもしれないが
俺は「うわぁ!本当ですか!?」なんて喜んでみせた。

「…先生には適わないな。」

そう言いながら、へにゃりと目を細めて
優しい眼差しで俺を見つめてくるカカシさんにドキドキしながら

『ぐおー!!緊張するぞー!』

と、顔が熱くもなったのだが

『あ、やべっ。部屋綺麗だったかな?』

なんて 違う意味でもドキドキしてきた俺だった。



まさか三年後には、カカシさんが恋人になっているなんて
これっぽっちも思わずに… だ。



そして甘く優しい声で俺は囁かれるのだ



 HAPPY BARTHDAY イルカ先生









 

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