≡ 連載もの・2 ≡

□雨は静かに降る2
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「先生は結構年寄り臭いですねぇ、湯治が趣味なんて!」

いつだったか、そう言って
クク…と腹を抱えて楽しそうに笑うカカシさんを思い出した

「今度一緒に温泉行きましょう。いい場所が有ります。」

笑われて膨れ面の俺に、笑顔で そう言ってくれた。


俺のバカ。なんで今頃思い出すんだ。


いろいろ。 いろいろと里での事を思い出すと、涙がポロポロ零れてきて
柔らかな月明かりの中
霞む視界のまま、また自宅へと歩き始めた。





ほどなく 紅さんから、いつもの上忍メンバーでの送別会は難しくなってきた‥と伝えられる。

「それぞれ都合の良い日が合わなくて…。里外任務が多くなってきてねぇ‥。」

なかなか日にちが噛み合わない、と 本当に残念そうに話してくれた。

「紅さん、ありがとうございます。そのお気持ちだけでも充分に嬉しいです。」
「イルカ…。」
「今夜はね、ナルトが泊まりに来るのです。俺も何だか忙しいですよ。」

ハハハ‥と笑って返すと

「イルカ、幸せになるのよ?ならなきゃ私が許さないからね!」

と、片目を瞑り 綺麗な人差し指をピンと伸ばして俺の胸を指した。

里中の人が、俺の結婚を祝ってくれている気がして正直申し訳ない。


商店街でも毎日のように「先生おめでとう!!」と声をかけられる。
昨日は「これ、持ってきな!あっちに行ったら、うちのコロッケ食えなくなるだろ!?」とコロッケを頂いた。

皆に優しくされればされる程
祝福されればされる程
里への思いが強くなるようで、複雑な気持ちになる。

『マリッジブルーって言うのかな…。』

婿入り やめたくなってきた。


その夜のナルトの訪問は、少しは俺の気持ちを癒やした。

「先生が結婚とか、嘘だろー!?とか信じられなかったけどよ。」
「なんだと!?」
「でも、先生を見初めてくれた水の国の大名のおっちゃんも、見る目有るなぁって思ったぜ!」

エヘヘ と笑い

「先生は未来の火影の恩師だからな!!どこに出しても恥ずかしくねえってばよ!」

と、笑いながら涙目になる彼を 思わず抱き寄せ
不覚にも俺まで泣いてしまった。



幸せになる事

それが俺の里への恩返しなのだと思わされた。





***


挙式の為 水の国へと向かう日も決まり
俺の知らない所で どんどん支度が始まり
ある日 火影室に呼ばれ、五代目に こう言われた

「イルカ、婿入り道具は里で用意してある。お前は“身ひとつ”で婿に行け。」

それは遠回しに「木の葉の物は何一つ 水の国へは持ち込むな」と言う事だ。


当然 木の葉のアカデミー用教科書や資料は置いていかねばならない。
クナイや手裏剣を始めとする武具は没収される。
所持している巻物類も全てだ。

「…五代目、額当ても‥でしょうか?」

ポツリと聞くと

「…だな。 と、言いたい所だが…。一応調べさせて貰い問題が無ければ返そう。」
「 ! 本当ですか!?」
「ただし、だ。その額当ての木の葉マークには横傷を入れさせて貰う。」
「 ! 」
「悪く思うな。お前は他国の住人となる。国籍も変わるのだ。火の国‥木の葉の忍びではなくなる。」
「…は‥い。」

あちらに持ち込む額当てを、あちらで額に締める事はないだろうが
抜け忍と同じ扱いをされているようで、気持ち的には良くはない。

少し沈んだ俺に構わず、五代目は話し続ける

「さて、挙式まで二週間。里を出発まで数日となった今、お前に身辺警護を付ける。」
「俺にですか!?」
「水の国の姫さんにやる大事な婿だからな。頼むぞ、カカシ。」
「はい。」
「 !!! 」

いつの間に居たのか、声がした背後を見ると
少し離れてカカシさんが立っていた。

「カカ…」
「イルカ、カカシは挙式が済むまで お前の側に置く。」
「 …… 」

呆然とカカシさんを見る俺に
カカシさんは優しく微笑んだ。







 
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