※カカイル短編2※

□秋祭り
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しかし 手にした金魚を嬉しそうに眺めながら帰る 木の葉丸の横顔を見ると
そんな憎まれ口も可愛いものだと思え

『お前等が一人前の忍者になるまで、先生も結婚なんてしていられんしな。』

と、イルカも嬉しそうに表情(かお)を崩した。



「いいなぁ木の葉丸くん。イルカ先生から金魚貰って。」

モエギが「良かったね。」と言って前を見た時
一人の忍者が目の前に立っていた。

「その金魚、イルカ先生から貰ったの?」

口布に額当てを斜めにかけて片目を出した忍者は、木の葉丸の金魚をジイッと見た。

「 そうだぞこれっ!イルカ先生が甲斐性ないから俺が飼ってやるんだぞこれ。」

ズイッと忍者の目の前に金魚を突き出す。

「イルカ先生が金魚すくいしたの?どこで?」

何故か質問責めの大人忍者に モエギが教えてあげた。

「イルカ先生は金魚すくいの売り子をしてるんです。」
「ぼ‥僕達は自分ですくいました。」

ウドンの一言に木の葉丸がキレて「俺だって本気出せば‥!!」と騒ぎ出した時には
すでに大人忍者の姿は無かった。



その頃 金魚の水槽前で、なかなか客が集まらず イルカは大あくびをしていた。


「今どき金魚すくいもなぁ…。親も安易に動物飼わせないようにしてんのかなぁ。」

ふあーぁと、再びあくびを噛み締めつつ前を見ると

「 ! カカシさん!!こんばんは。」
「 うん。こんばんは。」

最近よく顔を合わせる上忍、はたけカカシが水槽の前で膝を抱えてしゃがんでいた。

『 え?まさか この人が金魚すくいでもするのかな‥?』

そう思っていると

「すくっていいの?」

と聞いてきた。

あまり会話はしたことないが、どちらかと言えば無口なイメージを持っていたので

『カカシさんが金魚すくいなんて…可愛いとこ有るんだなぁ。』

と、うふふと笑い

「どうぞ。このポイで好きなだけ。」

もしかしたら華麗な技が見れるかもしれない!
ちょっとワクワクしてポイを渡した。


「すくったら飼うんだよね?」

カカシが小首を傾け静かに言った。

「はい。ちゃんと責任持って飼ってくださいよ?大事に大事に愛してやってください。」

ニッコリ微笑み そう言うと

「わかりました。」

と、何故か赤い顔で立ち上がった。

「 ? カカシさん? 」

するとカカシが何故か店の中に入ってきてイルカの横で、こちらを向いてしゃがみ込んだ。


「え!?カカシさん違いますよ。あちら側で すくってくださ‥い‥て、え?何?」

カカシはポイをスッとイルカの足下に入れた。

『え?入った!?足の下にポイが入った!?』

そんな馬鹿な。 て 言うか、何故そんな所にポイを!?

「 うわあっ!! 」

イルカの声に、他の教員も振り向いた。

「 !! イルカっ!?」
「は、はたけ上忍!何を…。」

カカシが片手で持っているポイの上にイルカが居た

『え!?え!?どうなってんの俺!?』

あわあわと慌てたいところだが、怖くて出来ない

なんか知らんがカカシが自分をポイで すくっているようだ。

「はたけ上忍、あの…」

カカシの不可解な行動に、イルカの同僚が声をかけてきた。
するとカカシはポッと頬を染め

「大丈夫。大事にします。餌も愛も沢山与えます。…すくったから飼っていいよね?持って帰っていいよね?」

照れくさそうに且つ真剣に そう言った。

「ち、違います!!カカシさん!!すくって飼っていいのは金魚だけで…」
「あ、これ。財布置いてくね。足りなかったら後で請求してね。」

イルカの声など聞こえていないかのように、自分の財布をイルカの同僚に渡し

「じゃ。頑張ってね。」

ポイに乗せたイルカを持ったまま立ち上がり、片手を上げてニッコリ微笑んだ

『ぎゃー!!!俺どうやって浮いてんの!?ポイには乗り切れていないだろー!?』

だがしかし、不思議と足の裏は何かに固定されているかの様にビクとも動かない。

「 ! カカシさん!!あのですねぇ、子供達にも注意しているのですが、チャクラ使ったり術を使うのは禁…」
「はたけ上忍!!毎度ありがとうございます!!いいのですか!?ほんとにこんなに!!」
「うん。足りない?」
「いえ いえ 充分です〜。イルカ、幸せにな。」
「 あ?お前ら何言って…」

カカシが素早く その場を去ったのでイルカの言葉は最後まで同僚に届かず

遠くから「バカヤロー」と叫ぶ声だけが微かに聞こえ遠ざかっていった。







 
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