捧げもの
□静かな約束
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「イルカ先生、久しぶりです。相変わらず忙しそうですねぇ?」
カカシさんが声をかけてくれた。わざわざ仲間との話を中断し、残ってまで。
申し訳なさと急な事に、少し顔が赤くなる
「あの、」
墓参りの礼を言わなきゃ
「あの…いつぞやは、俺の両親の墓に花をありがとうございました!」
ペコッと深く御辞儀をすると
「あ、いやいやハハハ…」と、カカシさんも照れくさそうに頭を掻いた
「でも何故…俺の両親を御存知でしたか?」
「小さい頃に何度かお会いしてるんですよ。俺の親父と仲が良かったようで…」
初耳だった。
「実は毎日のように仲間の墓参りにも行くんですけど、その…あの日はイルカ先生の御両親にも頼み事をしに行ってました。」
「頼み事?」
俺の父ちゃんと母ちゃんに!?里の誉れが!?
「ええまあ…ちょっとした頼み事ですよ。」
「はあ…」
何だろう?と、首を傾げていたら
「なかなか先生と飲みに行けませんからね。お話する機会を与えてくださいって御願いしました。」
ふふふ‥と笑うカカシさんに、俺は何故かポウッとしつつ
「確かに…なかなか御一緒出来ずに申し訳有りませんでした。」
あ そうだ
「あの…カカシさんは今夜予定は…」
「 ! シィッ!先生!!」
「 ??? 」
カカシさんが慌てて俺の言葉を遮った。
て……綺麗な白い指が、俺の唇を塞ぐように当てられている。
ちょっと困ってドギマギしていると
「 手を出して 」
と小声で言って、俺の右手を掴んで掌を上に向けさせ
何やら目で合図してから、自分の指で俺の掌に文字を書いてきた。
今夜は空いてます。飲みに行けそうですか?
俺がコクンと頷くと、更に
受付終わるまで上忍待機室で待っています。
掌の上をなぞる白い指の感触に、妙な気分になりながら
多分 俺は赤い顔をしていたと思う。
下から手の甲を軽く握られ、掌を愛撫するように指を滑らせる。
でも何故声に出して話さないのか?
「イルカ先生、そんな不安気な顔しないでくださいよ。」
クスクスと笑われ、ハッと我に返った。
「え…だって…」
「あのね、なんだか声に出して約束するとダメになってしまいそうで。」
「 え? 」
「声に出すと、見えない何かに邪魔されそうで。静かな約束です。またイルカ先生に用事が出来たら嫌ですからね。」
自分の言葉にウンウンと頷いているカカシさんを見て、プッと吹いたら
「笑い事じゃないですよ。三度目の…もとい、四度目の正直にさせてください。」
プンッと怒ったような顔をして、真剣にそう言うカカシさんが
凄腕上忍なのに可愛い人だなぁとクスクス笑っていると
カカシさんもクスッと笑って言った。
「イルカ先生の御両親に御願いしただけの事は有りました。」
それじゃあ後で。待っています。
目を細めて待機室へと向かうカカシさんを見て
これから始まるカカシさんとの関係が楽しいものとなりそうな
何故か そんな擽ったさを感じて仕方がなかった。
終