捧げもの

□静かな約束
2ページ/2ページ


「イルカ先生、久しぶりです。相変わらず忙しそうですねぇ?」

カカシさんが声をかけてくれた。わざわざ仲間との話を中断し、残ってまで。

申し訳なさと急な事に、少し顔が赤くなる

「あの、」

墓参りの礼を言わなきゃ

「あの…いつぞやは、俺の両親の墓に花をありがとうございました!」

ペコッと深く御辞儀をすると

「あ、いやいやハハハ…」と、カカシさんも照れくさそうに頭を掻いた

「でも何故…俺の両親を御存知でしたか?」
「小さい頃に何度かお会いしてるんですよ。俺の親父と仲が良かったようで…」

初耳だった。

「実は毎日のように仲間の墓参りにも行くんですけど、その…あの日はイルカ先生の御両親にも頼み事をしに行ってました。」
「頼み事?」

俺の父ちゃんと母ちゃんに!?里の誉れが!?

「ええまあ…ちょっとした頼み事ですよ。」
「はあ…」

何だろう?と、首を傾げていたら

「なかなか先生と飲みに行けませんからね。お話する機会を与えてくださいって御願いしました。」

ふふふ‥と笑うカカシさんに、俺は何故かポウッとしつつ

「確かに…なかなか御一緒出来ずに申し訳有りませんでした。」

あ そうだ

「あの…カカシさんは今夜予定は…」
「 ! シィッ!先生!!」
「 ??? 」


カカシさんが慌てて俺の言葉を遮った。

て……綺麗な白い指が、俺の唇を塞ぐように当てられている。
ちょっと困ってドギマギしていると

「 手を出して 」

と小声で言って、俺の右手を掴んで掌を上に向けさせ
何やら目で合図してから、自分の指で俺の掌に文字を書いてきた。


今夜は空いてます。飲みに行けそうですか?


俺がコクンと頷くと、更に


受付終わるまで上忍待機室で待っています。


掌の上をなぞる白い指の感触に、妙な気分になりながら
多分 俺は赤い顔をしていたと思う。

下から手の甲を軽く握られ、掌を愛撫するように指を滑らせる。

でも何故声に出して話さないのか?

「イルカ先生、そんな不安気な顔しないでくださいよ。」

クスクスと笑われ、ハッと我に返った。

「え…だって…」
「あのね、なんだか声に出して約束するとダメになってしまいそうで。」
「 え? 」
「声に出すと、見えない何かに邪魔されそうで。静かな約束です。またイルカ先生に用事が出来たら嫌ですからね。」

自分の言葉にウンウンと頷いているカカシさんを見て、プッと吹いたら

「笑い事じゃないですよ。三度目の…もとい、四度目の正直にさせてください。」


プンッと怒ったような顔をして、真剣にそう言うカカシさんが
凄腕上忍なのに可愛い人だなぁとクスクス笑っていると

カカシさんもクスッと笑って言った。

「イルカ先生の御両親に御願いしただけの事は有りました。」

それじゃあ後で。待っています。

目を細めて待機室へと向かうカカシさんを見て
これから始まるカカシさんとの関係が楽しいものとなりそうな

何故か そんな擽ったさを感じて仕方がなかった。







 


前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ