※カカイル短編3※

□好きという気持ちB
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鼻っ面にラーメンの湯気がほんわりあたって心地良い。
「貴方は?仕事帰り?」
そう聞かれて少し夢心地。だって会話が成り立っている。憧れのカカシさんと会話のキャッチボールが出来ている。
「受付交代したんで。あとは飯食って帰るだけです。」
「そう。お疲れ様。」
お疲れ様!お疲れ様!!カカシさんがお疲れ様って言った!この俺に!
「い、頂きます!」
顔の前でパンッと手を合わせてからウキウキ気分で俺もラーメンに取りかかる。カカシさんから声をかけてもらっただけでこの浮かれよう。我ながら可笑しいったらありゃしない。そりゃあ憧れの上忍だから仕方がないか。ドキドキするしウキウキするし…
『なんだろ、ドキドキし過ぎていつもより麺が喉を通らないや。』
「???」
離れているとは言え並んでラーメンを食べている。お疲れ様、なんて労いの言葉までかけてもらって。
いろいろ考えているとなんだか胸がドキドキと言うより…ぎゅうっとなる感じに変わってきた。
『なんだ?この気持ち…。』
「ご馳走様。勘定ここに置いとくね。」
て、え?早っ!!
「じゃあごゆっくり。」
何か返事を返したくても口に麺を入れたばかりで直ぐに返す事が出来なかった。カカシさんは右目しか見えないけど「ごゆっくり」と言った後には笑ってるように見えた。目をニコッと細めていたから。俺は急いで麺をすすりあげ、返事が間に合うよう立ち上がって外に身を乗り出した。
暖簾をめくり左右を見ると右方向に背中を向けて歩き出していたカカシさんの姿を発見。
「あのっ!お疲れ様でした!」
声をかけるも彼は振り向くこともせずに片手を何かの合図のように上げただけで歩みも止めずにいたのだが、俺もそんな後ろ姿に彼には見えもしないだろうが深々とお辞儀をした。
再び席についてラーメンをすする俺は半分気が抜けたようにぼんやりとしていたに違いない。あれ…俺って大盛り頼んだっけ…急に食欲減退したのかな…。カカシさんが帰ってしまって寂しくなったな。まだ一緒に居たかったのに。
何とか食べ終えて「テウチさん帰るわ。これここに置いとくね」と小銭をカウンターより一段高い所に置く。
「ああ、要らねえよ。さっきあの人が先生の分も置いてったからな。」
「え!?」
「目で先生の方をチラリと見てから俺にニコッと笑ってな。二人分の料金置いてってくれたよ。良かったなぁ!ははは!」
「そんな…。」
「上忍の奢りだ。有難く頂いときな。」
なんて言うかカッコ良すぎる。知らぬ間に会計済ませてくれてるなんて俺も一度は後輩なんかにやってみたい!
その晩は風呂入って歯を磨いて布団に入って眠りにつくまで、ずっとずっとカカシさんの事が頭から離れなかった。

「おはようございます。」
「おはようイルカ先生。今日の授業で使うプリントだけど…って、寝不足ですか?」
朝の挨拶直後に大欠伸をした俺に隣のクラスの担任が半笑いで聞いてきた。
「ええ…まあちょっと。いろいろと考え事していたら直ぐには眠れなくて。」
「何か難しい事でもあったの?私で良ければお話聞きますけど…。」
「あ、あはは!大丈夫大丈夫!大したことでは無いから!」
言えないよ。カカシさんの事を考えていて眠れなくなったなんて。
『とにかくラーメン!ラーメン代のお礼を言わなきゃだ!』
後で上忍待機所へ行こう。居るか分からんけど。とりあえず行ってみよう。
うん。と、ひとりで頷き俺はようやく自分の席に着いた。

お礼を言う。そう決めたからには休み時間に急いで足を向けた。居なかったら居なかったで何度でも出向くさ!
階段を上がり皆が待機している部屋へと向かう。話し声や笑い声が僅かに聞こえてきたがどれもカカシさんのものではなさそうだ。そうして開け放された引き戸の陰からそーっと室内を伺うように先に顔だけを出す。今日は思ったより上忍、特上の皆さんが揃っている。
「なんだイルカ、どうした?」
名前を呼ばれハッと部屋の右側を見ると
『居た!』
ソファーの上、声をかけてくれたアスマさんの横にカカシさんも座っている!
「あ、あのっ。カッ…あ、いえ、はたけ上忍にお伝えしたい事が。」
その言葉にカカシさんも持っていた本から目を離してこちらを見た。
「何?」
「え…あの。」
すると本を閉じて立ち上がるとわざわざこちらへ来てくれたではないか。
「すみませんっ。あの、夕べの御礼を言わなきゃと思って。ラーメンご馳走様でした!俺気が付かなくて…。」
「ああ、そんな事。別に気にしないで。じゃ。」
「え?あのっ。」
「まだ何か?」
にっこり笑って聞かれても別に何も無いので「いえ…。」としか応えられなかった。
「そ、じゃあね。頑張ってね。」
にっこり笑ったまま踵を返すと、また元にいた場所へと戻っていった。
『かっけー…。』
そのクールさにドキドキした俺だった。



 
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