※カカイル短編3※

□好きという気持ちB
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もうなんて言うか俺のカカシさんへの憧れの気持ちは高まるばかりで!
『やったー!今日の受付でカカシさんに会える!顔見れるぞ!』
とうとうカカシさんの隊のスケジュールまで把握する始末。そして彼が里へ戻り受付へ報告書を持ってくるのをわくわくしながら待つのだ。そろそろ戻ってきそうな時間にはトイレへ行き自分の身だしなみチェックまでする。きちんとした男だと思われたい!うん!
しかし…だ。必ずしも彼が俺の前へ報告書を出しに来るって訳では無いのが恨めしい。三度に一度くらいは来てくれるが列を成している時は当然空いてる方へ行くし同じくらいの長さでもわざわざ俺の所を選んで来てくれる…なんて事も当然ながら無い。
『別にさ、ラーメン奢ったからって顔見知りになった訳では無いだろうけどさ。』
カカシさんが部屋に入ってきた時の俺の熱視線に気づいてくれたっていいのになって思うよ上忍なんだから。こっちへ来いこっちへ来いって見るんだけど、ひとつも視線合わないんだよね。笑っちゃうよ。はは…。
それでもさ、カカシさんは俺の憧れの人だから。一度はラーメンご馳走になった仲だから。彼は特別な存在なんだよ。俺の中では。
そして今日も残念ながら俺の前には並ばなかったカカシさん。上手くいかないもんだなーなんて心の中で寂しく笑った。

その日の帰り、日も暮れた土手の草むらで一匹の犬が何かを探しているのかスンスン地面の匂いを嗅ぐようにウロウロしているのを見かけた。ちょっと気になり声をかけてみる。
「どうした?何か探しているのか?」
声をかけた途端、犬はピタッと動きを止めてこちらを見た。首輪もしていないし野良犬だろうか?
「腹でも減ってるのか?」
ちょうどカバンの中に昼に貰ったコッペパンがある。同僚が嫁さんと喧嘩して昼に持たされた何も挟まってない「ただのパン」だ。奥さんの腹いせなのかそれを五個も持たされたようだ。
「食うか?」
そっと草むらの上に置いてやるが犬は黙って俺を見続けている。警戒しているのかもしれない。
「ま、気が向いたら食え。俺は行くよ。」
にっこり笑ってそう伝え、今夜は何を食べようかと自分の夕飯を考えながら帰宅した。

*****

イルカにパンを貰った犬はそれを咥えて急いで主の元へ走って帰った。
「おや、シバ遅いじゃない。今日は自由にしていいよとは言ったけど珍しいね。」
シバという名のその犬は主の足元に咥えてきたパンをそっと置いた。
「カカシ、これ食べていい?大丈夫だよね?毒の匂いはしない。」
「パン?どこから持ってきたの。貰ったの?」
シバの主は、はたけカカシでシバは彼の忍犬だった。
「今日は土手で日向ぼっこしたりして過ごしてたんだけど綺麗な石を見つけたからカカシに見せようと思ったんだけどさ。」
「パンが落ちてたの?」
「違うよ。その石を咥えて移動してたらポロッと落としちゃって。探していたら忍者の服きた男に声かけられて。」
「声?なんて?」
「何探してんだとか、腹減ってるのかとか。そしてパン出してきて俺の前に置いて帰って行った。」
「どんな男?木ノ葉の忍?」
「うん。カカシと同じ服でカバン下げてた。」
「そ…誰だろね。よく食べなかったねシバ。偉いね。」
「当たり前だろ!俺様は仮にも忍犬だぞ!食うもんか!」
「でも食べたくて持ってきたんだ?」
クスクス笑うカカシにシバは言い返せずにいた。そんなシバに優しい眼差しを向けながら足元のパンを拾い上げて匂いを嗅ぎ少し契って口に入れる。
「うん。大丈夫だよ。悪い人じゃなかったみたいだね。食べていいよ。」
「やった!」
「他の子達には内緒だよ?」
「わかった!」
「ほらほら、お前の休日は終わり。俺の忍犬のベストと額当てを付けて。」
「ん!わかった!」
しっぽを振りながらカカシにベストを着せてもらい再びパンを咥えるとカカシが出した印でどこぞへと消えた。
「犬にパンをやるなんて呑気な忍者もいたもんだ。」
なんだか可笑しくなってカカシはクスッと笑いシバの消えた所を見つめた。

*****

今日も今日とて俺はカカシさんが受付に現れるのを待っている。ここのところ俺の方へ報告書を出してくれないのが寂しすぎるので今日こそはと念を飛ばす。
『カカシさんが戻られたら俺の前へ来ますように〜うむむ。』
「イルカァ腹でも痛いのか?眉間にシワ寄ってんぞ。」
「腹は大丈夫。ちょっと考え事。」
暫くするといくつかの足音と共に任務を終えた上忍中忍達がやって来た。
『!カカシさん!!』
姿が見えただけでドキドキする。神様!今日は俺の前に並んでくれますように!
本当に俺の彼への憧れの気持ちは日に日に強くなってきていると思うぞ?




続く


 


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