※カカイル短編3※

□好きという気持ちC
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ガヤガヤと室内に入ってきた数人の上忍、特上の皆さん。受付に何度も座っているとほぼ全員の顔が分かって来ている。
「お、イルカ先生じゃねぇか!」
俺を見ると必ず俺の所へ報告書を提出する人も少なくはない。自分で言うのもなんだが俺って愛想がいいからな。疲れて帰ってきた人達を難しい顔で迎えたくないからさ。
「お疲れ様です。」
にっこり笑って声をかけてきた人に労いの言葉をかけ顔を上げたたその時、俺の視界にこちらを見たカカシさんの姿が目に入った。でも知らぬふりしてそのまま目の前の人の対応をする。
『あれ?今こっちを見てたよな?まさか…こっち来るかな?』
内心ドキドキしながらもしっかりと目の前の報告書に目を通して無事に受理する。
「はい!不備無しです。本当にお疲れ様でした!」
「よおイルカ先生、今夜空いてるか?」
「え?」
「酒でも飲みに行かねぇか?なーに俺の奢りよ。」
「あ、えー…」
たまに居るんだ飯や酒に誘ってくる奴。本当に知ってる方ならまあいいかなと思うのだけど今目の前にいる人は顔は知っててもここでしか会ったことのない人。正直そういう方のお誘いは困るので断る事にしている。何を話していいか分かんねぇし気を使って飲むのも面倒くさいじゃないか。と、その時別の声がした。
「ちょっと、早くしてくれない?こんなとこでナンパ?」
「ああ!?俺はただ酒を…」
男が振り向くとそこにカカシさんが立っていた。て、え!カカシさん!?
俺への誘いを妨げられたその上忍は怒りに任せて怖い顔で振り向いたまでは良かったが如何せんそこには里一番のエリート忍者、写輪眼のカカシさんが冷たい目をして男を見下ろしていたのだ。
「何?」
「あ!いえすみません!どうぞ!」
男はカカシさんに場所を譲るとそそくさと退場して行った。
「あの!お疲れ様です!」
思わず喜びいっぱいの気持ちが顔に出たのではと言う感じの弾んだ声が出てしまい「アハハ…」と照れ笑いで誤魔化した。いやしかし今困っているところを助けて貰ったしな!
「…お願い。」
それでもカカシさんは何事も無かったのように俺の目の前にスッと報告書を出す。
「あ、はいっ!」
そうか、そうだよな。今のは俺を助けたんじゃなくて、ただ自分の目の前に居る邪魔な男を避けただけだものな…。
「はい、不備な…」
「ねえ、ちょっと。」
「!はいっ。」
顔を上げるとカカシさんが俺の事をまじまじと見ていた。それになにやら鼻をすんすんさせているようだ。え!?俺何か臭う!?
「手、出して。」
「?手?ですか?」
言われた通りに右手を彼の前まで差し出すと、その俺の手を取り鼻を近づけてまたすんすん臭いを嗅いでいた。
『え!何この状況!///』
周りの者もチラチラとこちらを見ているがカカシさんのやる事だから誰も何も突っ込まずに見て見ぬふりをしているようだ。
「あの…。」困った様に(実際困惑しているが)声をかけると「…ふぅん?」と軽く眉をしかめて手を離してくれた。
「あんたか、俺の犬にパンを与えたの。」
「え?」
一瞬なんの事か分からず呆けてしまう。
「…勘弁してよ…。」
それだけ言い残すと不機嫌そうな顔のままスッと俺から離れて部屋を出て行ってしまった。
「俺の犬?パン?は?」
気がつくと報告書を出す人も三人程となっていたので「ちょっとあと頼む。」と振り向きもせずに同僚に言い残すと立ち上がった俺はカカシさんの後を追った。
『もしかして昨日の土手の?』
あの犬、カカシさんの忍犬だったのか?にしてもあんな嫌そうな顔で言うなんて。
『迷惑かけたのだろうか。』
急いで僅かに残る彼の気配を追って行った。階段を下がり左に折れると「居た!」彼の猫背と揺れる銀髪が見えた。
「あの!はたけ上忍!」
ちらりと振り返った彼の少し手前で俺も止まった。
「あの、もしかして犬って頭の毛だけ黒っぽい中型犬の事でしょうか?」
「…白々しい」
「え?」
「あんた俺の忍犬だって知ってて餌与えたんじゃないの?」
「…は?」
「あんたみたいに俺に近づこうって奴、ガキの頃から腐るほど見てるからさ。分かるんだよ。なに?お前俺の事好きなの?そーゆう目で見てるわけ?」
この人何言って…
「やめてくれる?俺は…」
「うるせえっ!!」
「!!」
「近づくってなんだ!分かるってなんだ!なんで己の考えだけで先走ってものを言うんだ!勝手に決めつけるな!」
「は?」
「は?じゃない!相手に何も聞かずに自分の想像した事だけを押し付けるなって事だ!あんたがそんな高慢な方だとは知らなかったよ!」
ヤバいと自分でも思った。頭にきたら相手が上忍でも構わず叱りつける俺の悪い癖。それを今この写輪眼のカカシ相手にやらかしている。


 
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