∞シリーズもの3∞

□小鳥の恋2
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【10】



女達は用心深く辺りの様子を伺い、何者かの気配を感じ取ろうとしていた。
「ピィピピ⋯(大丈夫よね?)」
「ピピッ、ピィヨ。(彼なら大丈夫)」
ハッキリ言ってあの程度のくノ一なら写輪眼のカカシにかかっちゃあ瞬殺だ。
月明かりだけの薄暗い部屋の中、部屋の中央までジリジリと進んできた女達の背後⋯部屋の隅に黒い人影が浮かんだ。
『カカシさんだ!』
それに気づいたであろうモモも黙ってそちらを見ている。多分⋯小鳥の姿ではあるが固唾を呑んで見ていると思われる。
『こんなヤツら背後から手刀で簡単に気を失わせる事くらい出来るよな。』
イルカ的にはその無駄の無い一連の流れを見てみたくてワクワクだった。
『来た!』
女達のすぐ背後にカカシが瞬身で現れた。しかし気配を絶っていないことにイルカも気づく。あれでは直ぐに気付かれてしまうではないか!
「!!!」
案の定、女二人はほぼ同時に振り向いた⋯ が
「 ピ!? 」
モモが驚いたように小さく声を出したのはカカシの左目が紅く燃えているように見えたからだ。
『カカシさん、写輪眼使って気を失わせたか⋯。』
「ピィピ⋯ピヨピ(あれが⋯写輪眼の力⋯)」
モモが溜息をつくように呟く。
床に倒れた女二人を一瞥すると、カカシは余裕で鳥籠に近づいて来た。
「先生 帰るよ。」
心持ち無愛想な声でそう言うと籠の正面をまじまじと見て先ずは「結婚おめでとう」のカードを外すと手の中でクシャりと握りつぶしポイッとその辺に捨てた。
「錠を外したままだったので気付かれてしまう前に寝かせました。今頃鳥を盗みに入った賊と戦っている事でしょう。」
写輪眼で何を見せたのか説明しながら籠の扉をそっと開け「さあ、出て。」と中に手を入れイルカに指を差し出し、乗るように促した。
「ピィヨ(すみません⋯カカシさん)」
ぴょいと指に乗り、イルカは晴れて籠の外へ。そしてカカシの肩に乗ったのだが⋯ カシャンと背後で音がしたので振り返ると、モモが中に残されたまま扉が閉まっているではないか。
「ピ!?ピィヨ!ピピピィ!(え!待ってください!モモさんが!)」
「先生静かにしてくださいよ。なに?もしかして籠に残した女が気になるの?」
「ピ⋯ ピィピピ⋯(そんな言い方⋯)」
「他里の忍を助けたって仕方ないでしょうよ。行きますよ。」
ムカッときた。イルカは初めてカカシに対して酷く憤慨した。
「ヂッ(怒っ)!!!」
「!!イッ痛いですよっ!せんせっ!」
ピョンピョン飛び上がりカカシの耳たぶを嘴で摘んで攻撃したのだった。
「ビィビ!ビビィッ!(モモさんも出せっ!)」
「ちょっ、わかりましたよ出せって言うんでしょ?」
仕方ないなぁとブツブツ言いながらカカシは再び籠の扉を開いた。
「ほら、さっさと出なさいよ。そしてイルカ先生に感謝する事だね。」
モモは躊躇っていたが、イルカが「ピィ!」と声をかけるとおずおずと出てきて籠の上に飛び乗り、目の前にいる写輪眼のカカシを見上げた。
『兄さん⋯ この人が写輪眼のカカシ⋯。』
「ピィピヨピィ(良かったですね、お会いできて)」
「ピィヨピヨ(これで里に帰ることが出来るわ。ありがとうイルカさん)」
「ピィピヨピィヨピヨ(お兄さんの墓前にカカシさんの髪の毛一本くらい差しあげたい所なのですが⋯)」
「ピィピピヨピピィピヨ⋯(ええ、お気持ちありがとう。忍の情報となる物をたとえ髪の毛一本と言えど持ち帰らせるわけにはいかないものね。)」
別れの挨拶でもしているのだろうかとカカシはムッとする気持ちを抑えて黙っていた。
「じゃあ行きますよ。ベランダのガラス戸は賊が侵入したように開け放しておきますから。モモとやらも好きに飛んでいって。」
「ピィヨ!(ありがとうございます!)」
カカシが戸を開け室外へ出ると久しぶりの外の空気の気持ち良さに身震いしているイルカの横をモモが羽ばたきながら「ピィピヨピィー!(さようなら!)」と通り過ぎ、夜空高くへと飛び立って行った。
「なんで他里のくの一まで捕まってたんですか⋯。何か聞き出しているんでしょう先生?」
「ピ⋯(貴方の事は聞きましたけど)」
考えてみたら他里の忍が侵入していたのに本当に逃がしてしまって良かったのだろうかと急に焦りだした。
肩の上で何やらジタジタしている小鳥を見て「先生の事だから逃がした事が良かったのかどうか今頃になって後悔してるんじゃないの?」とカカシが笑う。
そうして瞬身で塀の外へ出ると「あの程度のくノ一なら大丈夫ですよ。」と鼻で笑うと「ピィ⋯」と安堵した小鳥に『やれやれ⋯』と溜息をつく。
『あのくノ一⋯ 絶対先生のタイプだったよね。丸顔で愛嬌のあるくりくりした目で⋯。』
移動しながらチラと肩の小鳥を見ると、心配そうにこちらを見上げていたのでニコッと笑ってやった。
『どんな女だったかなんて絶対教えてやんないよ。』

大きな月が昇る空を一羽の小鳥が飛んで行くのが見えた。



 
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