∞シリーズもの3∞

□ときめく上忍
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「え?俺の荷物?あ〜⋯そうだね、お前手ぶらだからあとで俺の部屋に届けといて?」
某任務にて、とある町に来ているのだが、急遽俺だけが里へ戻る事となった。
急いで届ける密書も有るし、担いできた背嚢は後輩に任せる事にした。
「明日の夜には戻れるでしょ?待ってるから。無事に届けてくれたら今度ご馳走するよ。」
そう後輩に言い残し俺は急いで里へと走り出した。
そして急いで急いで馬鹿みたいに走り続けて、ヘトヘトになりながら大門を潜ると更に民家や店の屋根の上に上がり、火影の元へと向かった。
「よし、ご苦労だったカカシ。明日からしばらく休むがいい。と言っても三日だけな。」
「ありがたきお言葉⋯。」
「まあ急に呼び出すかもだから自宅待機⋯が正しいかな。」
「どうせ他に用事などありませんから。」
「ふん、そうかい?下がっていいぞ。」
「はっ。」
言われて踵を返し執務室から俺は静かに退室する。 ⋯パタン⋯
やった!!!三日も休みっ!!しかも今日は金曜日!!そして月曜は祝日!!
俺は世間一般と同じ「三連休」を手にしたのだ!!自宅待機だけど!!
『⋯土、日、月と中忍先生も多分家に居るよね。仕方ないけどさ⋯。』
最近の俺は毎日あの亀中忍のイルカ先生の家にいる(だって美味しいご飯が出てくるし風呂も沸かしてくれる)
それに一応俺が「ゴロゴロしていい場所」ってのも決めてくれたし(卓袱台の先生が座る右横のスペース。台所とかへの動線にかからない場所。要するに邪魔にならない場所。)
俺の愛読書を数冊置くスペースも作ってくれたし(小さな本棚を与えられた。いつも適当に積んでいたから。)
歯ブラシだって下着だって替えの忍服だって置かせてもらってるんだ(タンスの上から二番目の引き出しだよ!)
「あら、カカシ帰ってたの?」
「やあ、紅。」
廊下で紅に声をかけられた。
「なーに?やけにニヤニヤしちゃって。あ、そうかぁ、これからご帰宅?イルカ先生に会えるもんねぇ。」
「は?お前何言ってんの?イルカ先生に会えたからって何が面白いのさ。」
「はいはい。美味しいご飯が食べられるから居着いてるんでしょ?」
「!!何故それを!」
「前に言ってたじゃないのよ自分で。イルカが好きだから居るんでしょ?って聞いたらムキになって"違う!飯が美味いからだ!”って⋯」
ギャー!確かに言いました!思い出しました!くそっ!
「そう?そんな事言ってたかなぁ⋯。ま、そういう事にしといて。じゃあね。」
まだ何か言いたげな紅に、バイバイと手を振りながら去った俺は数日ぶりにイルカ先生のアパートへ足を向けた。

一応玄関先でブザーを押す。前に窓から「こんにちは」したら凄く怒られたからだ。「何処から入ってくるんですかっ!ちゃんと玄関からブザー鳴らして訪ねてきてください!」って。
「はーい!」
扉の向こうから声が聞こえた。ドキドキ⋯ ん?なんだ俺の心臓。止まりなさいよ。あ、止まったら死ぬか。鎮まりなさいよ。
先生の声を聞いた途端に何故か鼓動を早めた自分の胸元を見ていると、ガチャリと扉が開く音がした。
「やっぱりカカシさんだ。」
「!!た⋯ただい⋯ま。」
なによその笑顔!満面の笑み!!なんか知らないけど俺の顔に熱が籠る。そんなに俺の帰宅が嬉しいの!?
「外寒かったですか?早く入ってください。耳まで真っ赤ですよ?」
「よ⋯余計なお世話っ。」
「ははは、さあ入ってください!」
玄関に一歩入っただけでイルカ先生の「匂い」がする。ああ⋯帰ってきたんだなぁ⋯って感じだ。
部屋に入るなり早速自分の居場所へ立ち、ベストを脱いで手甲、額当ても外した。
「今から風呂沸かしますんで、お茶でも飲んでいてください。夕飯の支度には早いけど腹減ってますか?」
「え?うん⋯ちょっと。」
「カップ麺でも食います?」
「いいの?」
「良いですよー!安売りしてたんで五個も買っちゃいました!ははは!」
「 ⋯⋯ 」
これ、これなんだよねぇ⋯。一人で家に帰っても部屋は冷たいし(寒いと言うより冷たい)小腹減ったくらいなら何も食べないで寝ちゃおってなるけど
先生と居るとお風呂も沸かしてくれるし食べる物も出してくれるしお茶だって⋯
「はい、どうぞ。煎茶で良かったでしょうか?」
「うん。ありがとう。」
「お風呂沸いたらお先にどうぞー。」
なんて言うのかな。二人で暮らすって楽しいな〜とか思うんだーよ。今まで思ってもみなかった事なんだけどさ。
女は何考えているか分からない生き物だし、多分一緒に暮らしても面倒臭そうだから一緒に暮らすなんて考えた事も無かったけど
イルカ先生は違うんだよね。あの人って全部顔に出るから分かりやすいし、笑えば愛嬌のある顔してるからこっちまで笑いたくなるし。傍に居れば温かいし⋯。この部屋も凄く過ごしやすい。凄く落ち着く。里で⋯いや、この世界の何処よりも一番心安らげる場所だと思うんだ。飯もそこそこ美味いしさ。
「カカシさーん!風呂沸いたようだから入っちゃってくださいねー。」
「はーい。」
ね?こんな普通のやり取りが、凄く楽しく感じる。⋯本人には絶対言わないけどね。調子に乗られても嫌だからっ!
その晩は風呂入って先生と晩酌して、いつもの如く先生のベッドから少し離れたところに布団を敷いて寝た。
先生んちの煎餅布団が何故か心地良い⋯
「 あっ!! 」
「びっびっくりした!どうしたんですかカカシさん!?」
「あ⋯えっと⋯いや、なんでもない。失礼。」
「?おやすみなさい。」
俺は布団の中で目をカッと見開いていた。忘れてた!俺、背嚢の中に先生へのお土産入れてたんだった!!!
町人のふりして歩いていた時に骨董品店で見かけた手のひらサイズの亀の置物。亀中忍にピッタリ!とか思ってさ、面白くて買ったんだよ。
なんとか焼きって焼物で、ペーパーウェイトにも良いですよーとか言われてさ。
『明日の⋯早くて午後⋯遅くても夜にはアイツら戻って来るはず。俺のとこに届けろって言ってあるし。』
まあそう焦ることも無いかと俺は静かに目を閉じた。



「来ないっ!!」
「どうしたんですかカカシさん?」
翌日の夕飯時、届かぬ荷物に苛立った俺はつい大声を出してしまった。
「あ、いえ、なんでもないです。」
「はあ⋯」
なによ。なんかちょっと訝しげな顔で俺を見ていない?あんたへのお土産が戻ってきていないから大声出しちゃったんだからねっ!!
結局その日は荷物が届かぬままでイライラしながら寝る羽目となった。まさか何かあったわけではあるまいな?
明日ちょっと様子を伺いに暗部待機所にでも行こうと決めた。

翌朝 俺が待機所へ行こうと支度をしているとイルカ先生まで出かける支度をしだした。
「あれ?休みなんじゃないの?」
「今日は休日出勤でして⋯。カカシさんがもう出るなら俺もついでに家を出ちゃおうかなと。」
「あ、そ。」
なに?二人並んで仲良く出勤したかったって事?図々しいんじゃないのー!亀のくせにっ!一緒に歩きたいとか図々しいんじゃないのー!きゃー!
「?ふふふ、なんかカカシさん楽しそうですね。いい事でもありましたか?」
「///!!なっ!たっ楽しくなんかっ!!」
「さ、鍵かけちゃいますね。忘れ物ありませんか?」
「あるわけないでしょ。この俺が。」
「アハハすみません!さ、行きますか!」
アパートの階段降りて、先生と肩を並べて歩いてやった。ちらりと隣を見る。一緒に歩いてやって喜んでるかな⋯。
「て、何やってんの?先生。」
先生は手鏡片手に鼻の穴を広げて見ていた。
「あーアハハすみません。今日若いくノ一の先生も出てくるんで⋯その⋯鼻毛チェックを。」
はあ???
「身だしなみを整えないと恥ずかしいじゃないですかー。それにちょっと可愛いんですよねぇその先生⋯。」
はああぁぁぁ!!!!??
「あんた⋯ 何しにアカデミー行ってん⋯」
と、その時 後方から大きな呼び声がした。
「あ!!!先輩!!!」
振り向くと俺の背嚢を抱いた後輩が。
「おまっ!遅いっっ!!なに手間取ってんのよ!!」
慌てて駆け寄ってきた後輩が「え?」って顔をする。
「だって先輩家に居なかったじゃないですかー!僕はちゃんと昨夜伺いましたよ?でも留守でしたし⋯今日はこれから待機所の方へ行ってみようかと⋯。」
「何言ってんのよ!俺はちゃんと家に⋯」
家⋯ ハッ!!俺の⋯家⋯ 俺の家?
「なんですか先輩、別宅でも有るんですか?」
うっ!なんだこいつ⋯ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべやがって!!
「まあこれで無事に先輩へ荷物を渡し終えて僕の任務は終了ですね!ではっ!」
「あ!待っ⋯!!」
くそぉーーー!アイツ変な誤解したまま行ったな?
「⋯えっと⋯じゃあ俺もここで⋯。」
あ!亀中忍までっ!!鼻毛チェック終わってるし!!
「今日は休日出勤無し。」
「え?」
「今から俺と修行です。」
「は?でも俺⋯」
「アカデミーには式を送っておきます。さ、行くよ。」
若いくノ一が来るくらいで鼻毛チェックまでして出勤なんて弛んでる!なぁーにが「可愛いんですよねぇ」だっ!
「はい、俺の背嚢を背負って。」
「いや、でも⋯」
「いいから行く!ほら!」
亀に亀(土産の)を背負わせて演習場へと歩き出す。
それにしても俺としたことが自分の家も分からなくなっているとは⋯
もしかしたらこの亀中忍、幻術か何かで俺を惑わせているのでは⋯
なんて思ってみたりもしたが、それは無いと思うので先ずは亀のくせに色気なんて出した罰として今日は厳しく修行をつけるとする。

御褒美は⋯ やっぱり亀(土産)だーよ。


その頃 火影室では⋯
「自宅待機と言ったのに何故昨日から家に居ないんだいっ!カカシはっ!」
綱手の怒号が鳴り響いていた。












 



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