∴季節物・誕生日∴

□2022年 イル誕
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そうしてナルトとの時間もあっという間に過ぎる。
「先生いつも忙しいのにありがとうだってばよ。じゃあ俺はこれで…」
「待て待てナルト。今日はケーキを買ってあるんだ。食べていかないか?今お茶を…」
「ごめん先生、俺…これからヒナタと会う約束が有って…。」
ああ、そうだった。こいつも今やひとりじゃないんだった。可愛い奥さんだっているんだった。
「そうか。それは仕方ない。あ、なんなら持ってけ。ケーキ二つあるし家族と食べなさい。ほら。」
「え!いいの!?じゃあ貰ってく!」
「あははは!持ってけ持ってけ!ヒナタを待たせるなよ!」
「大丈夫!先生ありがとうな!」
「おう!」
嬉しそうにケーキ二個入りの小さな箱を持って部屋を後にする彼の姿に、こちらまで温かな気持ちになる。間違いなく今のナルトは幸せだ。そう思うとまた涙が零れそうになってきた。俺も歳だなぁなんて思ったが、もう少しでやってくる誕生日でまたひとつ歳を重ねるのだ。
『ナルトが大人になるはずだよな。』
溜息をつきつつナルトに渡し損ねた焼菓子を出し、ひとり寂しいお茶の時間を過ごした。


さて。そんな俺の誕生日もいよいよ明日となった平日の二十五日。はたしてカカシさんは休暇が取れたのかと少し心配になっていた。
『会いに行っても良いが明日の楽しみが無くなるしなぁ。』
その時、校長室のドアがコンコンッと音を立てる。
「どうぞ。」
ドアを開け顔を見せたのはナルトだ。
「先生、今時間ある?入ってもいい?」
「どうした?入っていいぞ。」
するとナルトの後ろからヒナタも続けて入ってきた。
「イルカ先生お久しぶりです。」
「ヒナタ!元気そうだな!」
「はい。あの…これ…ナルト君と一緒に選んだんです。」
「ん?」
スッと目の前に手付きの紙袋を出される。
「先生明日誕生日だろ?この間ヒナタと一緒に先生へのプレゼント選んできたんだ。」
「え!それは嬉しいなぁ!」
「俺とヒナタからだってばよ。へへっ。」
「開けていいか?」
「ダメだってば!明日開けてくれよ。お楽しみにしなきゃ!」
「そうかぁ。それもそうだな。」
「じゃっ!俺は今から任務だから!明後日には帰るからまた勉強よろしくな先生!」
「え?今から?気をつけて行けよ?」
「ああ、砂の国に巻物届けに行くだけだからさ!シカマルと一緒だし大丈夫!それにヒナタも日向の爺ちゃんとこに子供迎えに行かなきゃだし!」
ニカッと笑って「じゃあまたな先生!」と、さっさと戸を閉めて出ていくなんて少し寂しすぎるぞ?でもまあ嬉しい。いいか。
「明日までのお楽しみか。」
持ち忘れないように机の端に紙袋を置いたおいた。

今日の仕事も終わり帰り支度を始めてナルト達からのプレゼントを手にした時、窓辺に白い鳥の姿が有るのに気づいた。直ぐに分かった。カカシさんからだ。嫌な予感。それは多分…
「やはりな。」
大きく溜息をついた。式には休暇が取れなかった事が書かれていたのだ。ギリギリになって早急に処理せねばならない書類が山のように出てきたとの事。それもこれも五代目があちらこちらに置きっぱなしにしている物が結構あるからだ。シズネさんも苦労された事だろう。思わずクスッと笑ってしまったが、その皺寄せがカカシさんと俺に今こうして来てるんだよなぁ。
「…プレゼントも買いに行けなくてごめん…か。そんなもの要らないのに。」
まあ想定内の事ではあったので、その式の紙を小さく畳んで胸ポケットにそっと入れて帰った。
家に帰っても明日はカカシさんも来ないと知ると気が抜けて掃除もしたくなくなった。夕飯も適当に済ませ風呂に入ってテレビを見て…早くに布団に入り仰向けに寝て暗闇のなか天井を見つめる。
「誕生日か…。」
今までだって彼が里外の任務だったりして一緒に祝えなかった日も沢山あった。だから慣れている。
「…そうだ、そう言えば。」
ナルト達からの贈り物を忘れてた。まだ開けていない。ガバッと起き上がると照明をつけ、タンスの前に立てかけておいた紙袋を手に取りベッドに戻って腰掛けた。中は何が入っているのだろう。薄く四角い大きめの箱。
『本当は明日って言われたけど。』
ふふふ…と笑いを堪えてガサゴソとリボンや包み紙を綺麗に取り外し箱の蓋を開ける。出てきたのは丁寧に畳まれた服だ。
「服?」
広げてみるとズボンもついている。それは濃紺の作務衣だった。
「へえ〜。俺もこんなの着せられる歳になったか!て感じだな!」
手紙も入っていた。広げて読む。
ー イルカ先生誕生日おめでとう!!またひとつオジサンになったな!わはは!いつまでも元気で長生きしてくれってばよ! ー
ナルトの文章がアカデミー低学年並なのが、ある意味ガッカリして泣ける。が、可愛いもんだ。(て言うかオジサンてハッキリ言うなよ…)



 
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